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<デーリー通信>(19)大人気!「トランプ大統領ツイッター図書館」

6/14(木) 13:53配信

毎日新聞

 「ソーシャルメディアを使う私は大統領らしくないというが、現代の大統領にふさわしい」(2017年7月1日のトランプ米大統領のツイート)

【写真特集】トランプ大統領ツイッター図書館の内部

 主要メディアを「フェイク(偽)ニュース」と呼び、気に入らない相手を容赦なく攻撃する。ツイッターで世界を(翻弄(ほん・ろう))するトランプ氏の投稿から厳選したツイートを集めた企画展「トランプ大統領ツイッター図書館」が6月8日、米西部カリフォルニア州ウエストハリウッドにオープンした。17日までの期間限定。昨年6月のニューヨークを皮切りにシカゴ、サンフランシスコを回り、4カ所目だ。ニューヨークでは数時間待ちの行列ができたという人気の展示を見に行ってみた。

 政治風刺で人気のコメディーテレビ番組「デーリーショー」が企画した。場所は映画の都ハリウッドと高級住宅地ビバリーヒルズの中間のおしゃれなエリアにある。入り口を入るとすぐに趣旨が書かれていた。

 「1939年にルーズベルト元大統領はすべての市民が公文書を利用できるよう大統領図書館を作った。この伝統を引き継ぎ、トランプ氏の最も重要な文書であるツイッターを展示する」

 歴代の大統領は退任後、職務関連の資料や文書を政府に寄贈し、図書館ができている。ロナルド・レーガン元大統領は州知事を務めたカリフォルニア州、ビル・クリントン元大統領は出身地の南部アーカンソー州に図書館があり、中西部イリノイ州上院議員だったバラク・オバマ前大統領は同州に開設予定だ。

 「ツイッター図書館」はいわばそのパロディー版。企画展のプロデューサー、ラミン・ハダヤディさん(37)は「読書をしないトランプ氏には保存する文書がないだろう。彼の図書館ができるならツイッター図書館に違いない。ここに展示したようにツイッターを通して彼の矛盾やバトルを繰り広げた相手を知ることができる」と語った。

 ◇矛盾や話題のツイート展示

 いくつか展示内容を紹介したい。

 まず、代表的なツイートを示した年表がある。トランプ氏が生まれた1946年から2009年の「ツイッター使用前」のカテゴリーには、トランプ氏がテレビ・映画制作会社からの手紙に「追伸 おまえは負け犬だ」と手書きした返信のコピーが紹介されている。ツイッターに手段が変わる前から率直な物言いは変わらないことがよく分かる。

 09年5月4日にツイッターデビュー。10年4月21日にはメラニア夫人と観劇し、「グレートだった」と投稿した。横に添えられた図書館の説明文には「トランプ氏はかつて妻と一緒の時間を過ごしていた」とある。大統領就任後は2人並んで登場することがめっきり減って不仲説が出ていることへの皮肉だ。

 特に話題を呼んだツイートは金の額縁で掲示されている。その一つがメキシコ料理のタコスを前に満面の笑みを見せるトランプ氏の写真とつぶやきだ。「メキシコ国境に壁を造る」などと激しくメキシコ系を攻撃していた大統領選さなかの16年5月、メキシコの祝日にタコスを食べる写真と共に「私はヒスパニックが大好きだ」とメキシコ系にすり寄るような投稿をし、ひんしゅくを買った。

 敵対する相手をあだ名で呼ぶことも多いトランプ氏。「ひねくれヒラリー(クリントン元国務長官)」「リトル・ロケットマン(金正恩氏)」などとニックネームを付けられた政治家らのイラストが並ぶコーナーでは、来場者が自分の名前を画面で入力すると意地の悪いあだ名が出てくる仕掛けもあった。

 来場したシャロン・エリアさん(46)がファーストネームを入力すると、「スタンドプレー」というあだ名が表示された。「人をばかにしたり、けなしたり。彼が大統領なんて世界に恥ずかしいわ」と嘆いた。なお、私(記者)が自分の名前を入力すると「エアーヘッド(頭が空っぽ)」と出てきて、企画展のスタッフが名札シールに英語で「エアーヘッド ヒロミ」と書いて渡してくれた。

 ホワイトハウスの執務室を再現したコーナーでは、トランプ氏のお気に入りの色である金色のトイレが置かれている。金髪のカツラやトランプ氏が頻繁に身につける赤いネクタイも用意されており、トランプ氏に「変身」し、トイレに座ってツイッターをしながら記念写真を撮ることができる。

 「トランプ」対「トランプ」の展示では、同じ話題についての矛盾する投稿を並べている。例えば北朝鮮問題で「交渉は時間の無駄」(17年10月)と「取引がうまくいけば世界にとって良い」(18年3月)という具合だ。

 データ分析のコーナーもある。最も多く言及されたのはオバマ前大統領でダントツの2344ツイート(8日現在)。ツイッターの書き込みを休んだ最長の期間は1日と21時間56分だった。長い「沈黙」は「フィデル・カストロ(キューバ元国家評議会議長)が死んだ!」という2016年11月26日の投稿で破られた。

 ◇「大統領の頭の中を歩くようだ」

 開館初日は、主催するテレビ番組で政治風刺などのリポーターを務める3人も訪れた。デシ・リディックさん(36)は「ツイッターはトランプ氏のお気に入りの手段だが、深く考える前に投稿してしまうのは大統領にふさわしくない」と指摘し、ロイ・ウッド・ジュニアさん(39)は「ここにいると誰かの頭の中を歩いているようだ。矛盾だらけで、私たちの大統領がどんな人間かを表している」と皮肉った。ロニー・チャンさん(32)は「米国ではツイッター人気は落ちていたが、トランプのおかげで注目され救われた」と語り、「私はまだトランプ氏の攻撃を受けていないが、心待ちにしているよ」と挑戦状を突きつけた。



 トランプ氏のフォロワーは、6月14日現在で5300万人近い。これまで開催した4カ所はトランプ氏に批判的な人が多い地域だ。今後も別の都市で開催することを考えているというので、プロデューサーのハダヤディさんに「トランプ支持者の多い地域で開く考えはないか」と聞くと「それも面白いアイデアだと思う」という返事だった。トランプ支持者は批判的な受け止めをするかもしれないが、トランプ氏を皮肉った企画展が盛況なのは今の世相を表しているし、政治の風刺が受け入れられる土壌は健全だとも感じた。【長野宏美】

最終更新:6/15(金) 10:46
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