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佐野史郎で視聴者層の“限界”に挑む フジ「限界団地」が描く老後社会

6/14(木) 16:56配信

夕刊フジ

 【トレンドウオッチャー木村和久の世間亭事情】

 最近、おじさん向けの番組が少ない…とボヤいていたら、まさに直球ストライクのタイトルを発見したので視聴してみました。それが6月2日にスタートしたドラマ「限界団地」(フジ系、土曜午後11時40分)です。

 定年を過ぎた初老の寺内誠司(佐野史郎)が孫娘と、ふたりで団地に引っ越して来ます。そこは寺内が幼い頃に過ごしたニュータウンでした。久しぶりに団地を覗いてみると、賑やかだった昔の面影はなく、独居老人ばかりの限界団地になっていたのです。

 シニア向け作品といえば、公開中の映画「終わった人」(舘ひろし、黒木瞳主演)も、定年後おやじの生活を描いています。救いのないタイトルのわりにはコメディータッチで、ほのぼのとした演出です。だいたい舘の奥さんが黒木って、その段階で何ひとつ不満はないと思いますけどね。

 一方「限界団地」ですが、これはホラー&サスペンスタッチの味付けをして、どんどん先が見たくなる展開になっています。ふたつのシニア向け作品は、どちらもリアルさを追求するとシャレにならないので、巧みな演出で目先を変えているのでしょう。

 限界団地のロケ地は東京・立川の郊外で、よくまあロケに協力してくれたこと。団地の朽ち果てぶりが半端ないです。自殺者や孤独死はもちろん、ゴミ屋敷、開かずの部屋、階段のみの5階建てなど、フィクションとはいえ居心地の悪さは満点です。

 笑えたのは、隣の家にソースを借りに行くシーンでした。そういえば、昭和の頃は、隣の家に調味料を借りたなあって、その描写は妙にツボでした。

 ドラマは、シリアスですが、佐野史郎が「冬彦さん」ばりに怪演し、超盛り上げています。今後、なぜ引っ越してきたかが解明されれば話は急展開するでしょう。

 この作品はフジにとって攻めなんじゃないですか。制作は東海テレビですけど。もともと若者のテレビ離れが激しいと言われつつ、実際誰がどれだけテレビを見ているか、よく分かりません。ただ言えるのは、好評のうちに終了した「おっさんずラブ」は、決して“おっさん向け”じゃなかったということです。つまり「限界団地」もシニア向けといいながら、実は別な層の取り込みを狙っているフシがあります。お年寄りを抱えた、30代が案外見ているんじゃないですか。だって関東・関西地区のオンエアが11時40分過ぎって、シニア層はとっくに寝ています。そういうことなんですよね。

 ■木村和久(きむら・かずひさ) コラムニスト。本連載と日刊SPA!の連載をまとめた近著「50歳からのかろやか人生」(雷鳥社)が発売中。

最終更新:6/14(木) 16:56
夕刊フジ