ここから本文です

ボコボコに打たれても、斎藤佑樹の不思議なポジティブ思考

6/14(木) 12:12配信

ITmedia ビジネスオンライン

 毎度同じパターンの繰り返しだ。北海道日本ハムファイターズ、斎藤佑樹投手のことである。

斎藤佑樹のハート形タオル(2800円、税別)

 6月12日の阪神タイガース戦で今季2度目の先発マウンドに立ったものの、4回8安打5四死球7失点と大炎上。3イニングで先頭打者を四球で出塁させ、2本塁打を被弾するなど終始めちゃくちゃな内容で試合をぶち壊した。

 どうひいき目に見ても褒めるところがない。栗山英樹監督は二軍降格を言い渡したが、それでも「苦しめば苦しむほど生まれるものもある」などと、あえて突き放すようなことはせず逆にエールを送るかのような温かい言葉を口にした。

 6月6日に30歳を迎えた。今年で、もうプロ8年目だ。ルーキーイヤーに6勝を飾ったのが自己最多で以降、泣かず飛ばずの成績が続きここまで通算15勝止まり。今季は「ラストチャンス」と力強く言い切っているシーズンとはいえ、案の定結果は出ていない。

 斎藤には大変申し訳ないが、これは誰もが予想できた流れだ。今後は打者をかわしながら“ごまかしの投球”が奇跡的にうまくハマれば、年間に1、2試合ぐらいなら勝ち星を拾えるかもしれない。しかし先発ローテーションを守り抜くことは、まずできないだろう。

 今の斎藤は下半身をうまく使えず、上体だけで投げている。いわゆる「手投げ」だ。2013年に右肩を壊してから、この弱々しい投球フォームが定番となってしまっている。棒球のような直球は球威がなく、変化球もキレがない。その上、制球力もないからカウントを悪くした末に置きにいった球をいとも簡単に痛打される。弱点が多くありすぎて対戦打者としてはオイシイ相手だろう。これでは勝てるわけがない。

 二軍では、そこそこ通用することはあっても一軍のマウンドとなれば同じようにはいかない。だからファームでそこそこの結果を残せても、いざ一軍に上げてみたら大炎上という毎度同じパターンの繰り返しとなってしまう。

●無神経というか、KYというか

 散々な状況となっている当の斎藤本人は本当に危機感を覚えているのだろうか。おそらく、そこまで窮地に立たされているとは思っていないだろう。仮にそう自覚しているのであれば、もう彼はとっくに自分から身を引いている。

 悪く言えば「厚顔無恥」。逆にいい意味で表現するとしたら、斎藤は自分を着飾るだけの「プロデュース力」がズバ抜けている。そして世間からの猛バッシングをモノともしないタフな精神力、いわば「鈍感力」も彼の持ち味と言えるかもしれない。斎藤に近い日本ハムの関係者は次のように打ち明ける。

 「一軍で投げては打たれるたびに多くの有識者から『引退するべきだ』などと酷評され続け、ネットユーザーからはもっと辛らつなトーンの批判が毎度のごとく書き込まれている。にもかかわらず、斎藤は『これは僕に対する叱咤激励です』とポジティブにとらえている。時に笑い飛ばすこともあるほどだ。

 高校球児のときに『ハンカチ王子』として注目され、どうしても気になる存在だからこそ批判される。もし批判もされなくなれば、もう自分に関心がなくなるわけだから、そのタイミングこそ終わりのときなのだ。つまり批判されているうちが華なのである。斎藤は、そうやってポジティブに考えている。だから、いくらブッ叩かれてもまったく気にならない。無神経というか、KYというか……」 

 マウンドでいくら滅多打ちを食らって大炎上しても、試合後の斎藤は「能力がない」「自分が情けない」といった類の言葉はほとんど発したことがない。自暴自棄になったり、自分を責めたりすることはせず基本的には“逃げ道”や“言い訳”を用意して再起しやすいシチュエーションをつくっておくことが彼の常套手段だ。

 KOされれば当然のように試合後の取材でメディアから詰問を受けることになり、精神的にも追い込まれているから、とても受け答えの仕方を考える余裕などないはずだが、それを斎藤は普通にこなせてしまうのである。そういう意味でもやはり図太い神経の持ち主と言えるのかもしれない。

●先輩や後輩が離れていく

 こういう風変わりな人物だから、彼のもとからは多くの新旧チームメートやライバルたちが離れていった。入団1年目の春季キャンプでキャッチボールの相手を買って出るなど目をかけようとしていた元先輩チームメートのダルビッシュ有投手(現シカゴ・カブス)は、すぐに距離を置くようになった。

 かつて高校時代に夏の甲子園でお互いが3年生エースとして決勝戦、決勝再試合を投げ合った田中将大投手(現ニューヨーク・ヤンキース)も「ライバル」と呼ばれることを嫌い、東北楽天ゴールデンイーグルスで球史を塗り替える活躍を残した後は今やメジャーリーグ名門球団のエース格にまで上り詰め、手の届かない存在になってしまった。

 2年遅れで入団してきた後輩の二刀流、大谷翔平(現ロサンゼルス・エンゼルス)にもあっさりと抜かれ、5年間チームメートとなりながらも接点はほとんどなかった。日本ハムの主砲、中田翔内野手はさすがに明言こそしないものの、斎藤絡みのコメントはまったく口にせず「どうも毛嫌いしているらしい」というウワサも方々から漏れ伝わっており、完全に距離感ができてしまっているようだ。前出の関係者はこうも続ける。

 「でも斎藤は『自分は自分、他人は他人』と平然と言い放っていることからも、徹底した個人主義を貫いている。もちろん野球はチームスポーツだが一番大切なのは自分であり、最終的には己の力だけで生き抜いていくしかない。その姿勢があるからこそ接点のあったかつてのライバルや先輩後輩たちがたとえ自分の元からどんどん離れていっても、まるで気にしないのだ。去る者は追わず。離れたければ、どうぞご勝手に――という考え方をしている」

 日本ハムは斎藤が自ら引退を申し出ない限り、しばらくは契約更新し続けていくだろう。まだまだそれなりの人気と注目度の高さを持っているので、広告塔として“カネのなる木”という側面も持ち合わせているからに他ならない。ある球界関係者は「腐っても斎藤佑樹」と言っていた。

●いつまでユニフォームを着続けるのか

 そんな斎藤に対して、なぜ栗山監督は大甘発言を繰り返すのか。やはりフロントの意向をくみいれた上での“忖度”と思われる。

 こういう裏事情もあるから、斎藤は一軍マウンドで炎上を繰り返しても安泰でいられるのだ。この流れに図々しくも乗っかって、まるでうまく利用するかのように二軍と一軍を行ったり来たりしながらプロ野球選手として延命を続けている。周囲の声やブーイングにはいちいち過敏に反応せずスルーする。そしてマイナス材料も極力プラスにとらえるようにスーパーポジティブな解釈を常に心がける。

 図太すぎるとはいえ、このように常に物事をポジティブにとらえる斎藤イズムを、私たちも取り入れてみてもいいかもしれない。ただ、あまりやり過ぎると周囲から猛反発を食らうのが関の山なので、その辺りは留意しなければいけないだろう。

 いずれにせよ、一体どこまで斎藤はこんな投球を繰り返しながらプロ野球選手としてユニホームを着続けるのだろうか。持ち前の「鈍感力」を発揮しながら、どのような延命工作、あるいは弁明を用意しながら生き長らえていくのか。注目したい。

(臼北信行)