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肥満症は「自業自得でなく病気」=減量手術のパイオニア・笠間和典医師

6/14(木) 11:05配信

時事通信

術後は長期フォローが必要

 食べ過ぎや運動不足に加えて、遺伝的な体質も肥満を招く原因だ。「自業自得ではありません。節制できないことも含めて肥満症という病気なんです」と笠間和典氏(四谷メディカルキューブ減量・糖尿病外科センター長)は捉える。
 欧米に比べると日本人は高度肥満者が少ないが、より低い体格指数(BMI)でも糖尿病になりやすいことが分かっている。このため肥満の定義も、欧米ではBMI30以上なのだが日本ではBMI25以上と、より厳しい。
 「アジア人は欧米人に比べてインスリンの分泌量が少ないので、肥満症になると膵臓(すいぞう)の機能が早いうちから低下して、インスリンが出づらくなります。日本人は欧米人ほど太っていなくても肥満の影響を受けやすいのです」
 肥満に生活習慣病を合併したり、そのリスクが高かったりする場合、肥満症と診断され、肥満外来などで食事や運動を中心とした生活習慣の改善指導が行われている。
 「高度肥満に対しては、内科的治療を行っても9割はリバウンドしますから、もっと減量手術が広まるべきだと思います」
 四谷メディカルキューブで減量手術の検討対象となるのは、BMI30以上(保険診療はBMI35以上)で糖尿病や高血圧など肥満に関連する合併症のある場合。2日間にわたって入念な検査を行い、減量手術の適応になるかどうかを見極める。
 「がんなど早く手術しないと命の危険がある病気と違って、肥満症に対する減量手術は、肥満を解消して合併症を改善させるための手術ですから、すぐに命に関わるわけではない。手術するかどうかの適応は慎重に判断します」。もちろん、胃は切り取れば元に戻らない。簡単な手術ではなく、他の手術と同様、重篤な合併症などさまざまなリスクもある。
 入院期間は2~5日。手術を受ければ、生活習慣を改善せずに楽に痩せられるというわけではなく、術後は長期的なフォローが不可欠だ。

栄養士が食事指導、患者の交流も

 「当院では専属の管理栄養士とトレーナーを中心とするチームで患者さんをサポートしています。胃が小さくなるので、一度にたくさんは食べられなくなりますが、食事でおなかいっぱいなのに、お菓子をダラダラ食べていたら体重は落ちません。体重が増えたときは食事記録を付けてもらって栄養士が指導します」
 また、アルコールは胃の大きさとは無関係に多量摂取できるため要注意だ。「術後、元の体重に戻ってしまった人は過去に2人いましたが、いずれもアルコール依存症が原因でした」
 減量手術を受けた当事者同士が交流するサポートグループも立ち上げ、お互いの悩みを相談し合えるような環境をつくっている。グループ名の「RENASCER(ヘナセー)」はポルトガル語で「もう一度生きる」という意味だ。
 「今の社会は太った人が過ごしづらい社会だと思います。『先生はスポーツもできて、太ったことがないから分からないでしょう』と患者さんに言われてしまうんですが、やっぱり同じ立場の人同士でないと分からないことがあると思うんです」
 例えば、食事をどう工夫したらよいのか、痩せて余った皮膚をどうするか、体形が変わったことで生じた人間関係の悩みなど話題は尽きない。年に1度のクリスマスパーティーも恒例になった。
 術後は外来で、1カ月、3カ月、6カ月、1年と定期的に経過をみていく。「減量手術は将来的な合併症のリスクを減らすのが目的ですから、最低でも術後5年、僕か患者さんのどちらかが亡くなるまで、年に1度は健康チェックに来てくださいと言っています」
 手術をしたら終わり、ではなく、手術を受けた人が健康に生きていけるよう、生涯を通じたサポートが求められている。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

最終更新:6/14(木) 11:05
時事通信