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医師の「様子を見ましょう」の真意 経過観察は大切な医療行為

6/14(木) 11:31配信

時事通信

 「かかりつけの先生が、いつも『様子を見ましょう』と言うばかりで何もしてくれないので、心配で来ました」
 私がよく外来で患者さんから言われる言葉です。逆に私の患者さんも、別の病院でこういう不満を言っているかもしれません。
 確かに、私たち医師は患者さんに対して「様子を見ましょう」というセリフをよく使います。果たしてこれは「何もしない」と同義なのでしょうか?

「何もしない」とは異なる

 私たちは、「様子を見る」という対応のことを「経過観察」と呼んでいます。「経過観察」は、私たち医師が患者さんに対して行う大切な「医療行為」の選択肢の一つです。例えば医師国家試験では、ある症状で外来にやって来た患者さんの検査値やレントゲン画像が示され、「適切な対応はどれか?」として選択肢から答えを選ばせる問題が定番です。
  ここには、
 a.経過観察
 b.抗菌薬治療
 c.放射線治療
 d.化学療法
 e.手術
といった項目が並びます(話をシンプルにしていますが)。
 これらの選択肢が同列に並んでいることに注目してください。もちろん「経過観察」が正答である問題もあります。「どういう患者さんに無治療で『経過観察』をすべきか」という判断は非常に大切だということです。
 「経過観察」とは、「何もしない」ではなく、「全く治療介入せずに様子を見なくてはならない」という意味です。病気の中には、初期の段階では症状や検査結果に軽微な変化しか表れず、診断がつきにくいものがたくさんあります。こういう段階から、効果が期待できるわけでもない飲み薬や点滴などで中途半端な治療を加えると、症状や検査値が変化し、ますます適切な診断から遠ざかってしまいます。
 「様子を見ましょう」と医師が言うのは、「何も治療をせずに、数日あるいは数週間、数カ月の一定期間をおいてからもう一度診察や検査をする必要がある」「何も治療をせずに経過を見て、何らかの症状の変化があった段階でもう一度受診をしてもらう必要がある」と判断した時です。
 大切なことは、この経過観察期間の後、患者さんの体にどんな変化があったか、あるいは何も変化がなかったかを最も正確に判断できるのは、「経過観察」という方針を選択した初診医だということです。「何もしてくれなかった」と言って別の病院に行ってしまった人は、経過観察を始める前の状態を知らない医師に診察されることになります。
 一方、「様子を見ましょう」と患者さんに伝え、「経過観察」という医療行為の最中のつもりでいた初診医は、その行為をやむなく中断することになります。これは患者さんにとっては大きなリスクと言ってよいでしょう。もちろん私たち医師にとっても悔しいことです。

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最終更新:6/14(木) 11:31
時事通信