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ソニー試聴室を訪問!音作りの神髄はココにあり。AVアンプ制作の舞台裏(2)

6/14(木) 17:03配信

Stereo Sound ONLINE

 ソニー試聴室に潜入し、同社の製品作りに迫る本特集。ここでは取材記の第2弾をお届けする。

【画像】内部をさらに詳しく



 前回はソニーでAVアンプの開発を担当する渡辺 忠敏氏の試聴室について、概要を紹介した。どんな部屋かは、前回の記事(下記リンク)をご覧いただきたい。今回は実際に音を聴かせてもらい、ソニーの目指すサウンドについて迫ってみたい。

 試聴機をおさらいすると、AVアンプはソニーの主力機「STR-DN1080」。7chスピーカーにB&Wの「MATRIX 801S3」を、トップスピーカーとロントハイトはB&W「MATRIX 805」を組み合わせている。

 プレーヤーはCD再生が、CDトランスポート「CDP-R10」(1993年発売)とD/Aコンバーター「DAS-R10」(同)をセット利用。SACDプレーヤー「SCD-XA5400ES」(2008年発売)、UHD BDプレーヤー「UDP-X800」(2017年発売)、BDプレーヤー「BDP-S5000ES」(2008年発売)は、ソースごとに使い分けた。

 ここに、ファイル再生用のミュージックサーバーfidataと、プロジェクター、ソニー「VPL-VW5000」(2016年発売)を使った。

 最初は2ch再生をチェックする。1曲目は『保科洋作品集』から「風紋」(CD)を聴く。各楽器の定位が正確で、音の出だしが明瞭なサウンドだ。低音楽器がユニゾンする部分は音のフォルムが整えられ、演奏と相まって格調高い音であった。次にレナード・バーンスタイン指揮ロサンゼルスフィルの『ラプソディー・イン・ブルー』(CD)を聴いてみる。冒頭のトゥッティでオーケストラがリスニングポイント前に正確に展開される。余計な付帯音がかなり少なく感じられ、楽器ごとの音色も分かりやすい。この音はハイファイオーディオの到達点のひとつと筆者は感じた。

 他にもいくつか2ch再生を聴かせてもらったが、高域の伸びもさることながら、低音が下の音域まで聴こえるのが印象的だった。渡辺氏によると「最近の音楽は音域が広がっていて、音楽によっては5弦ベースが使われていたりします。その低音がしっかり感じられないといけないので、製品作りにおいて低域再生は重要なファクターと考えています」こういったポリシーが、ソニーのサウンドの基礎となっているのだろう。

 しかし、ずっと気になっているのがこの部屋の響きの少なさ。前回の記事でお伝えしたとおりこの部屋の壁4面すべてに吸音ボードが貼り付けられている。

 筆者は試聴しながら、もう少しライブな音響のほうが、音楽を愉しむのにいいと思っていた。渡辺氏に思い切ってぶつけてみると、「確かにデッド気味な部屋だと思いますが、音圧感を失うほどにはしていません。吸音する理由は、反射音があると元の音と混ざり特異な周波数特性ができるからです。これがお客様のリスニング環境の固有音と重なってしまうとクセになります。そこであくまでニュートラルな音を設計するために必要な吸音をしています」とのこと。

 さらに続けて何曲か試聴させて頂く中で、ふと頭をよぎったことがある。月刊『HiVi』の連載記事「AVセンター開けていいですか」で渡辺氏のサウンドポリシーを伺った際の「無色透明」という言葉だ。この試聴室はそれに通じるサウンドだと思う。参考までに渡辺氏の自宅のリスニングルームについて伺うと、この部屋と同じ方向性の音作りをしているとのこと。その部屋で自身でも音楽制作も行うらしい。

 次は映像を伴ったマルチチャンネル再生に移る。1枚目はオランダの女性歌手、トレインチャ・オーステルハウスのライブBD『Best Of Burt Bacharach Live』から「The Look Of Love」を選択した。そのサウンドを一言で表すとすれば、「綿密なサウンド」と言ったところ。冒頭のフリューゲルホルンの音色がとてもしなやかで、ホールの空気感が自然であった。サラウンドのお手本のようだ。

 次にミュージカル映画『NINE』からファーギーが歌う「Be Italian」を視聴する。ファーギーの太い声はどっしりと安定感があり、これみよがしにサブウーファーが主張しない。筆者の好みのサウンドであった。

 最後はドルビーアトモスのトレーラーディスクから「Leaf」を視聴。先程のサラウンドの自然さはそのままに、空間密度が一気に上がったサウンドだ。森林に紛れ込んだかのような演出は素直に「スゴイ」と感じたほど。鳥や虫の音もシームレスに移動するし、チャンネル間の低音のセパレーションもかなりいい! もちろんトップスピーカーやオブジェクトベースサラウンドの効果もあるけれど、サウンドのすばらしさはスピーカー配置が理想的だからこそ、なのだろう。

 試聴中に少し頭を動かしただけでも音の変化が感じられるぐらいの繊細さは、製品開発にはもってこいの環境だと思った。製品の上に布等が敷かれているので、恐らく反射音対策なのだろうと思い尋ねてみると「その通りで製品の天板からの反射音が気になったので、こういった対策を行っています」地道な努力が部屋の精度を上げ、渡辺氏の求めるサウンドに貢献しているのだろう。

 ソニーのAVアンプ試聴室の印象は以上の通りだが、筆者は試聴中部屋の中でいろいろと気になる物を見つけてしまった。それについては次回、渡辺氏へのインタビューとともにご紹介したい。

Stereo Sound ONLINE / 木村雅人

最終更新:6/14(木) 17:03
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