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“ナチスの元秘書”は何を伝えるのか?破られた69年の沈黙『ゲッベルスと私』

6/14(木) 17:11配信

dmenu映画

オーストリアから届いたドキュメンタリー映画『ゲッベルスと私』(6月16日より公開)は、ヒトラーの側近でナチスの宣伝大臣、ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書を務めていたひとりの女性の貴重な証言が収められている。終戦から69年。沈黙を続けてきたナチスの元秘書が語ることとは?

沈黙を破った彼女の言葉に、我々は動揺するかもしれない

沈黙を破ったその女性の名は、ブルンヒルデ・ポムゼル。若きころの彼女は1942年から終戦を迎える1945年までの約3年間、ゲッベルスに秘書として仕えた。冷酷な戦争犯罪者のひとりにあげられるゲッベルスのことを間近で見てきた人物だ。

取材当時、彼女は103歳。でも、背筋がすっとのびたその姿は年齢を感じさせない。記憶もひじょうに鮮明で、彼女は静かに戦時中のことを振り返る。

彼女から出てくる言葉は、我々の頭を混乱させ、動揺させるかもしれない。なぜなら、彼女が口にする言葉は、必ずしも納得させられるものではないだからだ。

彼女が語る、ゲッベルスの知られざる素顔

まず、彼女が語るゲッベルスの印象からして少々拍子抜けするかもしれない。

彼女はゲッベルスをこう明かす。「最高級の布地で作った上等な服を着て、手も爪もよく手入れされていた。やたらと洗練されていて育ちもよく紳士的で大人しい人だった」と。そしてこうも続ける。「ただ、演説するときは別。小さな体で声を張り上げ会場を熱狂させた。彼に勝てる役者はいないわ。でも、普段はいたって尊大で自信にあふれた人で節度を失うことなんてまずなかった。1回だけ誰かを怒鳴っていたことがあった。あれは信じられなかった。でも、そんなことはその後一度もなかった」と。

そこに“ゲッベルス=恐怖、悪”といったイメージは一切ない。その上で自らの職場を「豪華な家具が揃った、エリートの世界のような雰囲気のオフィスで仕事には満足していた」と振り返る。

「あの体制から逃れることは絶対にできない」という言葉の意味

また、彼女が、仕事を得て生活するために、自らナチス党員となり、ナチスの下で働いたことを「私は自分の人生でずいぶん失敗してきたけれど、常に義務を果たそうとしてきたの」と前置きしたうえでこう語る。

「放送局で働こうと宣伝省で働こうと、与えられた場で働き、良かれと思ったことをしただけ。私はゲッベルスと一緒に働いたとは言いたくない。私にとってあの人はヒトラーの次に偉い、頂点にいたボスの一人。みんな、私たちは知っていたと思っているが違う。ホロコーストのことはなにも知らなかった」。そして、「体制に逆らうことは命がけで、最悪のことを覚悟する必要がある。あの体制から逃れることは絶対にできない」と断言する。

また、「宣伝省に入ることになったのは、前職の放送局で一番速記が得意だったことが評価されてのこと。当時の給料はとてもよかった」という発言も登場する。

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最終更新:6/14(木) 17:11
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