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福山ネウボラ1年 育児相談1万件 少ない妊婦利用が課題

6/14(木) 21:04配信

山陽新聞デジタル

 絵本やおもちゃ、前掛けなどが詰まったその名も「あのねHappy Baby Box」。広島県福山市は14日、妊娠中の母親に子育てグッズ一式をプレゼントする事業を始めた。市の子育て支援制度「福山ネウボラ」が同日で1周年を迎えたのに合わせた取り組みだ。

 福山ネウボラは昨年6月14日、妊娠期から、子どもが学童期に至るまでのあらゆる相談に応じようとスタートした。子育て世代包括支援センター「あのね」を市内12カ所に開設。保健師や助産師、保育士、看護師の資格を持つ相談員が1~3人常駐し、多岐にわたる悩みにワンストップで対応している。

ほっとする場所

 唯一商業施設の中に設置されている西町のエフピコRiMの「あのね」を訪れると、相談員と話す女性(31)の姿があった。相談は2回目という。

 3月に第1子を出産。ネウボラの存在はインターネットで知り、産後の自身の体調について相談に訪れた。「話を聞いてもらうだけでほっとする。相談で外に出ることで気分転換にもなる」と笑顔を見せた。

 市ネウボラ推進課などによると、開設から今年5月末まで、およそ1年間の相談件数は電話、来所を合わせ1万件に上る。「実家が遠く頼れる相手が近くにいない」「子どもの夜泣きがやまない」「はいはいが遅れている」などさまざまな相談があるという。12カ所のうち6カ所では母子健康手帳も交付しており、妊娠が明らかになった人たちに「あのね」に足を向けさせる役割を担っている。

利用に偏り

 課題はそこから。相談の多くは出産を終え子育てに入った母親が占め、出産前の人たちの利用は少ない。同課によると、「あのね」を訪れる実人数こそ妊婦が約半数を占めるが、ほとんどが母子健康手帳を受け取るのが目的で、相談に訪れることは少ないという。

 同課は「妊娠後期は特に、出産そのものや産後の生活環境の変化に対して不安が高まる。市が行ったアンケートでもその傾向は明らか」と相談の“潜在需要”は多いとみる。「小さな悩みでも気兼ねなく相談し、安心して出産に臨んでほしい」とする。

 「あのねHappy Baby Box」は、こうした課題を解決しようと始めた取り組み。妊娠32週以降の妊婦と、4月1日以降に生まれた生後4カ月以内の子どもを持つ家庭の申し込んだ人に子育てグッズをプレゼントし、「あのね」の存在をアピールする狙いだ。

 ネウボラは、もともとフィンランドの子育て支援制度をモデルとする。同国の子育てに詳しい市立大教育学部の正保正恵教授(家政教育)は「望まない妊娠や精神的に課題がある母親など、支援を必要としている人もいる。手厚いサポートをするにはネウボラが医療機関と連携する必要も出てくるだろう」と見通す。

 働く女性の増加、晩婚化、地域コミュニティーの希薄化、貧困など出産や子育てをめぐる環境は日々、多様化、複雑化している。さまざまな声をすくいとれるよう、ネウボラの充実と、諸機関との連携強化が求められている。