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支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 老いる団地(上)

6/14(木) 6:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

◆“谷間”に落ちた独居者 「公助」の援助員投入

 団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、国と自治体は地域包括ケアシステムの構築を急いでいる。しかし、もうすでに、激しい高齢化で「2025年問題を先取りしている」と指摘される地域も数多い。その一つ、横浜市の中部にある旭区の市営ひかりが丘住宅では、市が地域に生活援助員2人を張り付け、見守りや相談事業を行っている。行政(公助)が地域に人を投入することで、自助、互助の力を補い、地域を維持しようという試みだ。その活動を見た。

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 真夏の太陽が団地の白い壁に照りつけていた午前、高齢者用市営住宅等生活援助員派遣事業の生活援助員、岩並仰さん(39)が団地内を歩き回っていた。介護保険サービスを利用していない高齢者を対象にした見守り訪問だ。

 訪れたのは83歳の1人暮らし女性。入居して15年、今のところ要介護認定は受けず元気にしているが、高血圧など複数の病気がある。2年前に見守りの登録をして、週1回の電話のほか、適宜、訪問も受けている。

 女性は岩並さんを部屋に招き入れると、最近の体調について語ったほか、2人の共通の趣味である音楽を巡って話に花が咲いた。

 日々の生活について女性は、岩並さんの電話や訪問で「とても安心できます」という。「妹には、いい老人ホームに入っているようだと言っています。自由に暮らしながら、見守ってもらえる」と、笑顔を見せた。

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 女性が岩並さんに特に感謝しているのが、市営住宅の入居者仲間で、1歳下の友人女性のことだという。認知症を疑わせるような行動に気づき、介護が必要ではないかと心配になった。そこで岩並さんに相談した。

 「ひかりが丘地域ケアプラザの地域包括支援センター職員に立ち会ってもらって面談し、介護保険の手続きもしてもらいました」と岩並さん。友人女性は早い段階で介護保険サービスにつながったことで、現在も市営住宅で暮らし続けることができている。

 見守りの登録者は約120世帯。岩並さんと、もう1人の生活援助員、高瀬久美子さん(61)で手分けして対応している。

 身寄りがないため、家族代わりに動かなくてはならないケースもある。登録に至っていない単身高齢者もまだ多い。岩並さんは「支援が必要なのに関係機関につながらない。谷間に落ちてしまう高齢者が数多くいます」と現状を語る。

 生活援助員の事業内容は、(1)電話や訪問、相談コーナーで悩みや困り事を傾聴し課題を整理する相談業務、(2)電話と訪問で健康や生活状況を確認する見守り、(3)サロンの開催、(4)関係機関の紹介・調整だ。岩並さんは「民生委員が担っている機能の代替のほか、地域包括支援センターや区役所の窓口業務のアウトリーチの役割を担っています」と話した。

※肩書や年齢は取材当時のものです。

 ◆横浜市営ひかりが丘住宅 横浜市旭区上白根町に1968~71年に54棟、82年に2棟、92年に1棟が建設された横浜市営住宅。総戸数2325戸に約3600人が暮らす。市営住宅では野庭住宅(港南区、3294戸)、十日市場ヒルタウン(緑区、2334戸)に続き3番目に大きな大規模団地。92年の1棟を除きエレベーターのない5階建てだったが、2016年度までに54棟には、階段の踊り場にエレベーターが設置された。