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睡眠不足がんも認知症もリスク増/森田豊の健康連載

6/14(木) 10:00配信

日刊スポーツ

<ドクター森田の「健康になりなさい!」(22)>

 「睡眠負債」という言葉をご存じですか? わずかな睡眠不足が、まるで借金のようにじわじわ積み重なることをいいます。

 睡眠不足というと、通常イメージするのは1日3時間睡眠などの極端な例ではないでしょうか。もちろん、このような睡眠不足によってストレスや疲労がたまり、生活の質が低下するだけでなく、さまざまな病気のリスクが高まってしまうことは言うまでもありません。

 ところが、1日6時間程度眠り、自分では睡眠に問題はないと思っている人でも、実はわずかに睡眠が足りておらず、そのわずかな睡眠不足の影響がまるで借金(負債)のように蓄積することがわかってきました。いま睡眠を研究する専門家たちは、この「蓄積する睡眠不足」を「睡眠負債」と名づけ、対策の重要性を指摘しています。睡眠負債がたまっていると、自分では気がつかないうちに仕事や家事のパフォーマンスが落ちてしまったり、命にかかわるような病気のリスクが高まってしまったりする可能性があるというのです。

 日本人の睡眠時間に関する国の調査(国民栄養・健康調査)を見てみると、睡眠時間が6時間以下の人は2008年(平20)には全体の3割未満でした。しかし15年のデータでは4割近くに急増。逆に、7時間以上の人は大幅に減りました(34・5%→26・5%)。

 最近の研究で、睡眠負債はがんや認知症など、さまざまな病のリスクを高めていることもわかってきました。東北大学が女性およそ2万3995人を7年間追跡し、睡眠時間と乳がんの発症リスクの関係を調べた研究では、平均睡眠時間が6時間以下の人は、7時間寝ている人に対して乳がんのリスクがおよそ1・6倍になることがわかりました。

 もう1つ注目されているのが、睡眠負債と認知症のリスクとの関連。スタンフォード大学の西野精治さん(睡眠生体リズム研究所長)らは、マウスを使った実験で、睡眠中にアミロイドベータと呼ばれる脳のごみが排出されることを突き止めました。アミロイドベータは、認知症の最大の原因であるアルツハイマー病の原因物質ともいわれており、発症の20~30年前から蓄積するといわれています。つまり、働き盛りの時期に十分な睡眠をとっていないと、数十年先に認知症になるリスクを高める可能性があるのです。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。

最終更新:6/14(木) 10:05
日刊スポーツ