ここから本文です

「これで最後に」拉致被害者家族と思い共有 社会部編集委員・中村将

6/15(金) 7:55配信

産経新聞

 安倍晋三首相との面会後に記者会見した拉致被害者の家族らは「焦らずに確実に対応してほしい」との気持ちを政府側に伝えたことを明らかにした。「これで最後にしてほしい」との切実な思いがにじむ。

 米朝首脳会談を機に、拉致問題が動き出しそうな気配になった今、世論の盛り上がりが、政府を後押しすることは間違いない。被害者家族らが発してきた言葉から、その思いを改めて共有していきたい。

 「たくさんの人が次から次へと北朝鮮に連れて行かれ、何もわからないままにされている。それで本当にいいんですか、という怒りが大きな力になりました」

 「親は、だれでもそうなると思います。やりますよ。気が狂うほど。同じ立場になれば、みなさんきっとそうされるでしょう」

 横田めぐみさんの母、早紀江さん(82)の言葉だ。

 白髪になって久しい。最近は、自分のことを「どこにでもいるおばあさん」と表現する。「お母さん」ではないところに、過ぎ去った時間の長さを感じる。

 救出運動の先頭に立ち、歴代首相に何度も問題解決を訴えてきた家族会初代代表で、夫の滋さん(85)は病床にある。めぐみさんの消息に加え、滋さんの健康も気遣う早紀江さんの心労は限界にきている。

 被害者家族はそれぞれ境遇の違いはあっても、みな同じ思いでいる。日本政府が肉親を取り戻してくれる日をずっと待っている。

 平成14年9月の日朝首脳会談で「死亡」「未入境」とした被害者について、これまで家族が納得できる説明をしていない北朝鮮はこの間、被害者の偽遺骨まで提示して幕引きを図ろうとしたかと思えば、安否調査を再開するとの姿勢を示したこともあった。

 怒り、期待、落胆…。めまぐるしく変わる家族の気持ちを思うとき、拉致という国家犯罪に手を染めた北朝鮮が、いまだにその拉致をカードとしている不条理が鮮明になる。それでも、問題を決着させる交渉に着手すべきときが来た。

 拉致問題の解決なしには北朝鮮への経済支援には一切踏み切れない。だが問題を解決すれば、さまざまな支援ができ、それは北朝鮮が未来を描く上で、大きな利益になるということを理解させなければならない。

 「答えが見えるまで簡単に動いてほしくない」との家族の言葉は重い。「答え」とは、拉致被害者たちの帰国であることはいうまでもない。安易な妥協は許されない。

最終更新:6/15(金) 10:59
産経新聞