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興収10億円を突破…是枝監督「万引き家族」が提示したもの

6/15(金) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

コラム【大高宏雄の「日本映画界」最前線】

 カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した「万引き家族」が大ヒットのスタートを切っている。12日には早くも興収10億円を突破した。邦画の実写作品としては今年最高の出だしだ。社会現象の一歩手前まで来ている。

 是枝裕和監督がゲスト出演した公開前の報道番組のキャスターは、こんなことを言っていた。普段事件を扱う場合、どうしても被害者のほうを向いた報道になりがちだ。本作を見て、犯罪者側にも目を向ける視点を持ちたいと。「万引き家族」のポイントが実にここなのだ。犯罪は、なぜ引き起こされるのか。

 マスコミが被害者のことを最優先に報道するのは当然だ。ただ、映画は虚構であるから、事件の背後関係や人間ドラマに立ち入って話を作ることができる。「万引き家族」は別段犯罪の背後関係を追っているわけではないが、万引などの犯罪行為が実に淡々とさりげなく描かれているのが特徴である。もっとも、被害を受けた者からすれば、その犯罪が淡々と行われたらたまったものではないが、映画はその部分には踏み込まない。本作で描かれる家族は実体のあるリアルな集合体ではなく、是枝監督が虚構の中で構築した疑似家族であるといっていいように感じた。

 実際、捨て子を預かり、虐待を回避したりするなど、一家は「万引き家族」どころか「救済家族」的な側面も強くもつ。しかも映画は、救済された子どもたちをこの疑似家族から解き放つ。家族とは何か。希望はどこにあるのか。「万引き家族」は日本の家族の将来を信じ、その希望を必死になって見いだそうとした苦闘の作品だ。
(大高宏雄/映画ジャーナリスト)