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「北で冬もう越させない」 拉致40年の重み感じて 親世代は最後の好機

6/15(金) 7:55配信

産経新聞

 ■解決への道筋冷静に

 北朝鮮による拉致被害者家族13人が14日、安倍晋三首相と面会した。米朝首脳会談でトランプ大統領が金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に拉致問題の解決を提起し、日本政府は被害者の帰国へ北朝鮮との直接交渉を目指している。安倍首相から今後の展望を聞いた家族らは、迫り来る老いへの焦りや交渉局面への期待など、それぞれの思いを語った。

 「40年をかけて、ようやくここまで来た。生きて抱き合える最後のチャンスだと思っている」

 面会後、記者会見に臨んだ横田めぐみさん(53)=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(82)は期待をにじませつつこう語った。

 早紀江さんは入院中の夫、滋さん(85)も念頭に「多くの方が倒れ、亡くなった。私たちにも時間がありません。私たちは親の子で、子の親でもあります。金正恩氏も同じ。それに思いを致し被害者全員を帰してほしい」と述べた。

 平成9年3月に結成された家族会。救出に奔走してきた親世代は相次いで亡くなり、今は横田さん夫妻と有本恵子さん(58)=同(23)=の両親、明弘さん(89)、嘉代子さん(92)の4人しかいない。

 「トランプ大統領が拉致を解決する交渉の場を引き寄せた。後は安倍首相の仕事。時間がかかってもやり遂げてほしい」。明弘さんはきっぱりと語る一方で、「見ての通り、自分らもいよいよ倒れかかってる。早くやってほしいという本音もある」とつぶやいた。

 拉致問題が膠着(こうちゃく)する中で“節目”を迎えてしまう事件もある。田口八重子さん(62)=同(22)=は今月、拉致から40年となる。家族会代表で兄の飯塚繁雄さん(80)は「40年間、監禁を強いられている。本当にあり得ないことだ」と怒りを込める。

 飯塚さんは「私たちに節目などない。毎日が節目だ」と語る。「八重子が帰ってきても60歳を過ぎている。『ごめんなさい』という言葉しか思い浮かばない。時の重みを感じていただきたい」と呼びかけた。

 8月には鹿児島県で拉致された市川修一さん(63)=同(23)=と増元るみ子さん(64)=同(24)=の事件も発生から40年となる。るみ子さんの母、信子さんは昨年、90歳で死去。父、正一さんは14年に亡くなっており、両親ともに再会を果たせなかった。

 「今の情勢を見ると、母はもう少し生きていてほしかった」。弟、照明さん(62)は無念をにじませながら「今の首相を信じるしかない。姉に北朝鮮の厳しい冬をもう一度、越えさせたくはない。それを考えると、今年中に絶対解決してほしい」と訴えた。

 「道筋は見えてきている。あそこまで安倍首相がやってくれているのだから、分かる」。松木薫さん(65)=同(26)=の姉、斉藤文代さん(72)は面会での印象をこう語った。

 肉親の帰国を待ちわびる家族が政府に求める結果は「再会」。ただ、それが果たせない状況ではせめて、あとどれぐらい、どんな道を行けばいいのかを知りたい。道筋を描くことは、希望をつなぐことだった。

 めぐみさんの弟、拓也さん(49)も政府に道筋を求めてきた。だがこの日、拓也さんは安倍首相に「解決の道筋が見えるまでは、簡単に動いてほしくない」と要請したという。

 面会で具体的な情報がもたらされたわけではない。ただ家族が一定の安心感を示したのは、政府の姿勢にブレがないことを確認したからだという。家族の思いは道筋を求めることから、冷静に事態を見極め、確実な結果の追求に変化している。

最終更新:6/15(金) 10:59
産経新聞