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ヘルパー不足深刻 ネックは移動時間…拘束2時間、給料は1時間分 事業所相次ぎ閉鎖も

6/15(金) 7:30配信

西日本新聞

 急な坂道を5、6歩上っては立ち止まり一休み。「この頃は腰が痛いから。休み休み行かないと」。わが家までの帰り道、最後は階段を上りきり、鈴木美紀子さん(81)は息をつく。

⇒【地図】校区のほとんどが高齢化率が3割を超える福岡市早良区南部

 福岡市早良区南部の長峰地区。小高い丘陵地を削り、昭和40年代後半から開発分譲が進んだ住宅団地の一つだ。5年前に夫が亡くなり、2階建ての自宅に1人暮らし。子どもはいない。車も運転せず、通院や体操は歩いて通う。介護の必要度は最も軽い「要支援1」。腰をかがめる風呂やトイレ掃除は負担が大きく、週に1回1時間、訪問介護のヘルパーに来てもらう。

 ただ今春、ヘルパーが所属する事業所が閉鎖となった。担当のケアマネジャーが代わりの事業所を探してくれたが「どこもヘルパーが少なく、希望の時間や曜日は難しいかも」と聞いた。食事時の朝夕に希望が殺到しがちだという。無事に代わりは見つかったものの、時間帯は当初の朝から、昼前にずれ込んだ。

住み慣れたこの家でずっと暮らしていけるのか…

 近所は1人暮らしのお年寄りが少なくない。先日、親しい90歳近い女性から電話で「具合が悪いから来て」と頼まれた。急いで駆けつけ、背中をさすった。

 自分も、もっと体が弱くなったら…。鈴木さんは考える。今のヘルパーは60代のベテランさん。「心配いらんよ。私がずっとみてあげる」と頼もしい。でもその数が足りないなら。住み慣れたこの家でずっと暮らしていけるのか-。

「ヘルパーを募っても集まらなかった」

 脊振山系の麓、早良区南部は市中心部からバスで約1時間。広大な農林業地域でもあり、一帯の各校区のほとんどは高齢化率が3割を超える。ヘルパーの派遣依頼が多いにもかかわらず、訪問介護事業所は今年1~3月、計3カ所が相次いで閉鎖した。「ヘルパーを募っても集まらなかった」。関係者は口をそろえる。

 介護保険制度では、ヘルパーが事業所から利用者の自宅に行くまでの移動時間は、事業者に支払われる介護報酬の対象外。ヘルパーが1時間働いても自宅まで片道30分かかるとすれば、事業所に戻るまで計2時間拘束される半面、給料は1時間分しか支払われないケースがほとんどという。

 膨れ上がる社会保障費を背景に、訪問介護の介護報酬自体もおおむね減額の一途。「利用者の家が遠い地域での仕事はできない、と断るヘルパーが多かった」。ある事業所の運営会社代表取締役(46)は打ち明ける。

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最終更新:6/15(金) 7:30
西日本新聞