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鈴木愛の「仕方ない」は決してネガティブではない【辻にぃ見聞】

6/19(火) 7:44配信

ゴルフ情報ALBA.Net

初日からビッグスコアが連発した前週の「宮里藍 サントリーレディス」とはうって変わり、「ニチレイレディス」はカットラインが4オーバーとスコアが伸びない戦いに。最終的に昨年覇者テレサ・ルー(台湾)、大会3連覇の経験がある申ジエ(韓国)とのプレーオフを制した女王・鈴木愛に軍配が上がった。今季出場10試合中4勝と圧倒的なペースで勝ち続ける鈴木について、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が語る。

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■相性がはっきり出るコース 大事なのは「ショットの上手さ」より「ゴルフの上手さ」

今大会は2010年から袖ヶ浦カンツリークラブ新袖コースに会場が変更。それ以降、鈴木が優勝するまでの8年間で勝利を挙げた日本勢は吉田弓美子のみ。海外勢が驚異的な強さを示していたが、この傾向を辻村氏はこう見ている。

「新袖コースはとてもトリッキー。ドッグレッグのホールが多く、打ち上げ、打ち下ろしも多々あります。木を上手く使った景観を含めて、ティショットでアライメントが取りづらい。それなのにグリーンは小さいから、その中で確実にフェアウェイをキープしないといけない。飛距離はそこまで必要としませんが、ショットの精度を生かす“ゴルフの上手さ”が問われるコースです。得意な人は毎年良い成績を出すし、ダメな人は本当にダメ」。

今回プレーオフまで進んだ3人のスイングには、ある共通点が見られるという。「3人ともゆったり振って、効率良く最大限の飛距離を出すタイプ。決して力任せに振ることがありません。だから、どんなシチュエーションでもリズム、タイミングが変わりづらい。特に鈴木さんは昨年までドローとフェードを打ち分けていましたが、今年は基本的にドロー一辺倒。そのため、昨年以上に1つのタイミングで打ちやすそうに見えます。また、ゆったり振っているということは曲がり幅も小さいということ。多少ミスしてもフェアウェイに残せるから、大ケガにつながらない。テレサさんは去年勝っていますし、ジエさんは過去に3連覇している。3人の特徴はこのコースに合っているといえます」。

これまでの優勝者を見ても、今大会2日目を終えて首位に立っていた李知姫(韓国)や、最終日にホールインワンを達成した吉田弓美子といった“ゆったり振って飛ばす”タイプのショットメーカーが多い。

■負けず嫌いの女王が口にした「仕方ない」という余裕 通算29勝キャディが見た鈴木愛

そんな鈴木のバッグを担いでいたのは森本真祐キャディ。過去にはアン・ソンジュ(韓国)、上田といった実力者たちを何度も優勝に導いた名参謀であり、今季は鈴木と組んで2戦2勝。親交のある辻村氏は、森本キャディから鈴木についてこんなことを聞いたという。

「全米女子オープン以来10日間ほどクラブを握っておらず、今週の火曜日から練習を再開したこともあって、勝てなかったとしても“今週は仕方ないですね”と言っていたそうです。あれほど負けず嫌いで誰よりも悔しさを露わにする鈴木さんが、です。とはいえ、私が思うにこれは本心ではないと思います。ただ、焦らずゆっくり調整していこう、と自分をコントロールする余裕を作るために発した言葉だと思うのです。それを加味した上での“仕方ない”。だから変な焦りもないし、多少曲げても落ち着いていられる。このコースでは冷静でいることがとても大事。その余裕をベテランキャディさんも評価していましたし、私も鈴木さんがもう一段階強くなったように感じます」

■悪癖が改善されつつある松田鈴英は将来的に楽しみな選手

最後に今大会で躍動した選手として、4位に入った松田鈴英をピックアップした。昨年のプロテストでは勝みなみ、新垣比菜といった“黄金世代”を抑えてトップ合格。その将来性をまじまじと感じたという。

「ボールに対してのコンタクトが5月ごろよりも分厚くなっています。ほけんの窓口レディースで見たときは、打ち急いで体が突っ込んでいた印象がありましたが、今週見る限り少なくなっていましたね。まだまだ荒削りなところはありますが、飛距離も出せる大型プレーヤー。将来的に楽しみですね」

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、比嘉真美子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

(撮影:村上航)<ゴルフ情報ALBA.Net>