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AKB48総選挙総括。見どころはたくさんあった……でも「残酷ショー」はこのままでいいのか?

6/20(水) 2:16配信

M-ON!Press(エムオンプレス)

■“まさかの”SKEワンツーフィニッシュをどう受け止めるか

6月16日(土)にナゴヤドームにて開票イベントが行われた『第10回AKB48 世界選抜総選挙』(以下総選挙)。この日のクライマックスは、第3位の発表の瞬間に訪れました。

【画像】Twitterで話題となった“ぱるる”の愛あるツッコミ

この時点で残っていたのは、SKE48のエースとして悲願の1位を目指していた松井珠理奈、指原莉乃が3年続けて維持してきたセンターの座を引き続き博多に持ち帰ろうと意気込んでこの日に臨んだHKT48の宮脇咲良、総選挙で例年無類の強さを誇るSKE48の須田亜香里。

ここで須田が呼ばれて松井-宮脇の一騎打ちに…という大方の予想に反して、名前をコールされたのは宮脇。涙で肩を震わせる彼女を尻目に、喜びを爆発させて抱き合うSKE勢。想定外の展開のなかで描き出されるこのコントラストこそ、「残酷ショー」とも呼ばれる総選挙の世界です。

総選挙史上初の「同一地方グループのワンツーフィニッシュ」という快挙を成し遂げたSKE48のふたり。地元開催という地の利があったとはいえ、この展開は運営サイドも予想していなかったのではないでしょうか?

AKB楽曲の選抜常連でもある松井に対して、須田は総選挙に関連しない楽曲ではそこまで目立ったポジションに起用されない存在です(3位に終わった宮脇は、HKT48所属ですがAKB48の楽曲でセンター経験があります)。

「松井須田のSKEコンビが引っ張るメンバー構成でAKB48名義のシングルをリリースする」というやや歪な状況において、どんな楽曲が作られるのか非常に楽しみです。


■矢吹奈子と田中美久の「なこみく」が引っ張る次の時代

開票イベントの楽しみ方のひとつとして、「開票結果が発表されるときのグループ全体の雰囲気を見る」というものがあります。他のメンバーが喜んでいるのに我関せずという感じのグループ、皆で喜びを分かち合うグループなど様々なのですが、そういう意味でも前述した松井珠理奈のいるSKE48と宮脇咲良のいるHKT48は非常に目立っていました。

共にリーダーの自覚が芽生えたふたりは、他のメンバーが名前を呼ばれるたびに抱き合ったり声をかけたりと甲斐甲斐しく動き回り、まさに「グループとして勝ちに行くんだ」というような熱い空気を存分に漂わせていました。

そんな観点で見たときに、矢吹奈子と田中美久というグループ期待の若手ふたりを選抜に送り込んだHKT48は、宮脇が苦杯を舐めたとはいえこの日大きな果実を得ることになったとも言えると思います。

以前から「なこみく」の愛称で親しまれ、指原莉乃の寵愛を受けながらここまで成長してきたふたり。昨年の総選挙では矢吹が順位を落とすなど、ここまで必ずしも順風満帆というわけではありませんでした。

そんなふたりが9位と10位に並んでランクイン。かつての「まゆゆきりん(渡辺麻友と柏木由紀)」「さやみる(山本彩と渡辺美由紀)」のような、48グループの名コンビとして名を上げていくスタートラインに立ったと言えるのではないでしょうか。選抜メンバーのなかでもことさらフレッシュなふたりの活躍に期待です。

■向井地美音の衝撃宣言──「総監督」という新しい争点

今後の48グループを考えるうえで特に重要なスピーチだと思ったのが、昨年の17位から13位にランクアップして2年ぶりの選抜入りを果たした向井地美音の「いつの日かグループの総監督になりたい」という発言です。

高橋みなみが48グループ全体を束ねる総監督というポジションに任命されたのが2014年。彼女の卒業とともにその座は横山由衣に受け継がれ、それ以降の後任は特に決まっていません。

すでに各所でリーダーシップを発揮している岡田奈々や高橋朱里の名前が候補として挙がることもありますが、そんななかで先んじて「総監督になりたい」というメッセージを明確に発した向井地によって、グループ内には「次の総監督になるのは誰か?」という新しい争点が生まれることになりました。

これまでの総選挙でも、篠田麻里子の「潰しにきてください」(2012年)、宮脇咲良の「私のライバルはさっしーです」(2014年)など、その先のストーリーを呼び込むようなスピーチがいくつも発せられてきましたが、今回の向井地のスピーチもそんな系譜に連なるものです。

今年張られた伏線が、どのタイミングでどのように回収されるのか。こういった大河ドラマ的な楽しみ方ができるのも、48グループの魅力のひとつです。

■岡田奈々、大場美奈、渋谷凪咲、松岡はな、高倉萌香……マイ推しメンの結果

今年は5票投票しました。

5位 岡田奈々(AKB48)
目標の1位には届きませんでしたが、グループの中心としての存在感を存分に発揮するスピーチはさすがでした。

8位 大場美奈(SKE48)
SKE48の3番手として初の選抜入り。チーム4のキャプテン就任後早々の謹慎やAKB48からの移籍など、苦労人のイメージの強い彼女もやっと報われました。同期のぱるること島崎遥香もツイッターで手荒い祝福コメントを寄せていました。

57位 渋谷凪咲(NMB48)
「先祖代々、この順位を受け継いでいきたいなと思います」という彼女らしい独特なコメントで会場を沸かせました。個人的にはなかなか大幅浮上のきっかけを掴めないことにもやもやしますが……。

66位 松岡はな(HKT48)
速報圏外という苦境から無事にランクイン。いつもはスマイリーな彼女も、今回ばかりは涙を流していました。

67位 高倉萌香(NGT48)
おかっぱちゃんは残念ながら昨年からランクダウン。NGT48は旋風を巻き起こした昨年に引き続き、研究生の奈良未遥をアンダーガールズ圏内に送り込むなど話題を振り撒きました。

■「残酷ショー」をただ無邪気に楽しんでいるだけではダメなのかも

さて、ここまで無邪気に総選挙の結果にフォーカスして話を進めてきましたが、少し俯瞰をして考えると、こういう話自体が「時代遅れの空騒ぎに過ぎない」という評価もできなくはないと思っています。

まず、松井珠理奈が「私は本気でAKB48グループを1位にしないと気がすまない。みんなが信じ合えば、また48グループは、アイドル界のトップになれます」、須田亜香里が「世間の皆さんは、私たちが思っている以上に48グループに興味がない」と発言したように、現状の総選挙に前田敦子と大島優子がセンター争いを繰り広げた2011年時のようなかつての「国民的行事」感はありません。

7月に明治神宮野球場と秩父宮ラグビー場を同時に使う6万人規模のコンサートを3日間行う乃木坂46、一気に人気を伸ばしつつある欅坂46とけやき坂46など、「坂道シリーズ」のほうに注目が集まっているというのが実情です。

また、単に「他のアイドルグループに人気で抜かれた」というだけにとどまらない「社会とのずれ」が改めて顕在化しつつあるのも事実です。

これまでたびたび言われてきた「若い女性を搾取している」という論点も、いわゆるポリティカル・コレクトネスへの社会の向き合い方がダイナミックに変わりつつある昨今において改めて浮上してきている印象があります。

各メンバーがファンに投票を懇願する、つまりはお金を使うことを促すような構造自体に対する目はますます厳しくなってくるはずです。

そんななかで、48グループを取り巻くメディアは様々なスキャンダルを狙っています。昨年の須藤凜々花の結婚発言騒動引き続き、今年はNGT48の中井りかがスピーチで「木曜日の朝に4人の記者に囲まれて直撃取材を受けまして、いわゆる文春砲を一身に受け止めてしまいました」と吐露。

2012年の指原莉乃、2015年の柏木由紀など、「総選挙後にスキャンダル報道を出す」という週刊文春の手法も確立されてきました。

ただでさえ精神的な負荷がかかるイベントに参加している面々は、異なるプレッシャーとも戦わないといけない状況になっています(もちろん「文春に撮られるようなことをしなければいい」「そもそものプロ意識の問題」というのも正論ですが、明確な不法行為をしたわけではないメンバーが「投票=“課金”したファンがいるからこそ強く叩かれる」という構造にも目を向けたほうがいいのかなと)。

■改めてAKB48総選挙のあり方を捉え直すべき時期では?

AKB48の総選挙は、2010年代初頭から半ばにかけて、エンタメの形としては新しいものを提示したと思います。一方で、社会の流れを鑑みると、このフォーマットはいろいろな意味でそろそろ耐用期限を迎えつつあるようにも感じます。

「誰かを痛めつけることを楽しむエンタメ」というもののあり方をこの先どう更新していくか。そういった問いを、運営サイドはいよいよ真面目に考えるべきタイミングに来ているのかもしれません。もちろんこれは運営サイドの問題だけでなく、投票して楽しんでいる自分のような人たちにも突きつけられる投げかけではありますが。

グループ内におけるメンバーの立場を一発逆転させるようなドラマチックな部分を残しながら、今の時代にあったエンタメのあり方をどうやって形作るか? AKB48が「予定調和を嫌う」ことでここまでの存在になったのだとすれば、今考えるべきはそういったことではないかと思います。

この先AKB48が社会にとって求められる存在であり続けるためにも、再びあらたなエンタメの形を提示してくれることを願ってやみません。

TEXT BY レジー(音楽ブロガー/ライター)