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駅改札でテレビニュースを放映 NHKと契約、東日本大震災を機に拡大

6/20(水) 16:10配信

乗りものニュース

普段は運行情報などを表示しているが…

 駅の改札付近に設置された大型ディスプレイでNHKのニュースが放送されているのを見かけたことはあるでしょうか。普段は列車の運行情報や各社のお知らせを放映しているこの画面は、大きな災害が発生した際にはさながら街頭テレビのようにニュースを報じています。2018年6月18日(月)の朝に発生した大阪北部地震のニュースを駅で目にした人もいると思います。

【写真】2006年から放送契約を締結しているJR東日本

 NHKが災害時に放映する緊急のニュースを「非常災害時緊急放送」といいます。JR東日本、JR西日本、東京メトロ、都営地下鉄、京成電鉄、小田急電鉄などの鉄道事業者では、自社の案内用ディスプレイでこの放送を放映できる契約を締結しており、これに基づいて放映しています。

 こうした取り組みは、実は10年以上前から始まっており、たとえばJR東日本は2006(平成18)年から主要駅の改札付近に運行情報案内用の大型ディスプレイを設置開始するにあたって、NHKと大規模災害発生時の報道番組放送契約を締結しています。ただこのころ実際に緊急放送が放映された事例はほとんどなく、本格的に活用されるようになったのは2011(平成23)年3月の東日本大震災以降のことです。

 東日本大震災にあたっては首都圏でも鉄道が長時間にわたって運転を見合わせ、多くの帰宅難民が発生しました。駅で足止めされた利用者は、家族の安否を心配して、断続的に発生する余震や各地の被害状況などの情報を確認しようと、携帯電話やスマートフォンのバッテリー残量を気にしながらニュースサイトやSNSをチェックしていました。

 このような情報が不足した状況では利用者に落ち着いた行動を促すことは難しく、また無用の混乱を生じさせかねません。そこで東日本大震災の教訓のひとつとして、NHKの非常災害時緊急放送を放映して、災害に関する情報を迅速に伝えることになりました。

他社局でも進む放映体制づくり

 都営地下鉄は2005(平成17)年、東京メトロは2008(平成20)年から改札付近に運行情報提供用のディスプレイの設置を進めていましたが、JR東日本とは異なりNHKと非常災害時緊急放送の契約をしていなかったので、震災後に改めて契約を締結し、2013(平成25)年2月から放映体制を構築しています。

 大手私鉄でもこのころからディスプレイ導入の動きが始まり、小田急電鉄では2013(平成25)年3月から、京成グループでは2014(平成26)年3月からディスプレイを順次設置開始すると同時に、NHKとの非常災害時緊急放送放映契約を締結しています。近年では鉄道事業者が設置したものだけでなく、駅前広場や自由通路に自治体などが設置したディスプレイでも緊急放送の放映体制が構築されています。

 近畿圏でもJR西日本が南海トラフ地震など大規模災害に備えて、2015(平成27)年3月にNHK大阪放送局と非常災害時緊急放送の放映契約を締結し、主要70駅で放映環境の整備を進めています。今回の大阪北部地震はその矢先の出来事でした。

 非常災害時緊急放送は震度5弱以上の地震や甚大な影響を及ぼす台風、大雨が発生した場合に行われますが、鉄道事業者が緊急放送を放映するか否かの基準は各社によって異なります。NHKの放送開始とともに自動的に切り替わるわけではなく、駅ごとに必要性を判断して画面を切り替えている社局が多いようです。

 本来は災害などで列車の運転が停止し、駅の改札口付近に多数の乗客が滞留した場合の情報提供を想定したものですが、昨今はかなり柔軟な運用がされているようです。大型台風が接近中で今後運行に影響が見込まれそうな場合に放映するケースや、今回の大阪北部地震でも被災地ではない首都圏の駅で緊急放送を放映するケースもあります。

 多くの人が行き交う駅の特性を活かしたメディアですが、画面に見入って立ち止まってしまうと人が滞留して危険な場所もあります。周りの状況を見ながら活用するようにしましょう。

枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

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