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ある日、イオンが消える……「残された」住民の思いを聞いてみた 業界の競争に揺れる「地方のインフラ」

6/26(火) 7:00配信

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 ある日、イオンが消えてしまったら……。もはや生活の一部になっている大型ショッピングセンターの代名詞「イオン」の閉店を突きつけられた町が佐賀県にある。「イオンがあるから転居してきた」。そのイオンがなくなる。住民たちの思いと、他県での事例を追った。(朝日新聞鳥栖支局長・大野博)

【写真】今はもう見られない、あのピンクの看板…… 覚えてる?各地にあった「サティ」たち

「イオンがあるから転居」

 栄枯盛衰がつきものの小売業界。中でも九州は「安売り競争が特に激しく、生き残りはたいへん」(関係者)という。

 そんな中、佐賀県上峰町にある大型商業施設「イオン上峰店」が来年2月末に閉店することが決まった。 

 閉店決定を受けて記者会見した武広勇平町長の「イオンがあるから、と、この町に転居してきた人も多い」という発言に象徴される通り、閉店が正式に決定したことによるショックは大きい。

「心配ないと思って越してきたのに」

 「このあたりでは、久留米の街中にでも住まない限り、年をとって車を手放したら生活が成り立たなくなる。銀行のATMから飲食店まで何でもそろうサティが隣にあれば心配ない、と思って越してきたのに」

 年金暮らしの高木楠子さん(70)が福岡県小郡市から、イオン上峰店に隣接する上峰町内の「中の尾団地」に転居してきたのは10年前。1996年から2010年まで、前身の「上峰サティ」にテナントとして入っていたシネコンに映画を見に来たこともあり、もともとなじみがあったという。

 「いろんなテナントが引き払ってしまい、店内はだいぶさびしくなったけれど、広島に住む娘のところに行くときに佐賀土産のお菓子をぱっと買えるのは便利だった。閉店後はどこで買えばいいのか、見当もつきません」

スカスカだった団地、一気に完売

 戸建て住宅が整然と並ぶ中の尾団地は1970年代に開発された。汚水の集合処理により水洗トイレを完備するなど当時の佐賀県としては先進的な団地だったが、郡部という立地のせいか、発売当初は不人気だったという。

 「私が土地を買った1988年には210区画のうち40区画しか売れておらず、スカスカでした」と元自治会長の城野武敏さん(77)は振り返る。

 それを一転させたのは上峰サティの進出だった。出店前後から人気が沸騰。あっという間に完売したという。

 「当時のサティの商圏は福岡県久留米市や佐賀市にまで広がっていた。いろいろな所から人が集まる魅力的な街として一躍、好印象になったのでしょう」

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最終更新:7/10(火) 17:21
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