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だから、本田圭佑は「稀代のヒール」として叩かれる

6/21(木) 12:05配信

ITmedia ビジネスオンライン

 歴史を塗り替えた。サッカーのワールドカップ(W杯)・ロシア大会初戦で日本が大方の予想に反し、強豪コロンビアを撃破。W杯でアジア勢が中南米の代表チームを初めて下す快挙をやってのけた。日本国内ではまったく盛り上がらないだろうと危惧されていたサッカー日本代表への注目度が一転して大きく上がり、ネット上も大騒ぎだ。

一方で、大迫選手のTシャツが売れている!

 ところが賛辞を送られる代表メンバーの中で、まだ相変わらず逆風にさらされ続けている選手がいる。MF本田圭佑(パチューカ)だ。コロンビア戦では後半25分から途中出場し、その3分後に左CKでFW大迫勇也の劇的な決勝ヘッドをアシスト。にもかかわらず、ネット上ではバッシングの声がなぜかいまだに鳴り止まない。

 決勝ゴールのアシスト以外では不用意なバックパスを相手にカットされ、ピンチを招くシーンが見られるなど不満の残るプレーもいくつかあった。しかしセットプレーから本田が放った正確無比なキックがなければ、大迫のヘディング弾も生まれなかったのは紛れもない事実だ。

 本来ならば日本を歴史的勝利へ導いたヒーロー。ところが「今まで批判ばかりして申し訳なかった」などと謝罪の意を表明するユーザーはほんの一握りで、「失点につながりかねないパスミスが多過ぎ」「そんなに活躍できていない」というトーンでブッ叩くコメントが大勢を占めたばかりか、「次の試合での本田起用は自殺行為」とスーパーサブとしての出場にも難色を示す書き込みまで散見された。

 とにかく何をやっても今の本田は叩かれる。それこそ今大会でもゴールを量産して旋風を巻き起こしているポルトガル代表のFWクリスティアーノ・ロナウドに匹敵するぐらいの活躍でもしない限り、本田に対するバッシングは沈静化しないだろう。コロンビア戦で見せた1アシストぐらいでは手放しで賞賛することなどできず、逆に粗探しでくまなく目を配った末に“口撃材料”を新たに見つけてここぞとばかりに徹底糾弾している。アンチの人たちを中心としたユーザーの多くは、とにかくサムライブルーの背番号4に辛らつだ。時に病的な怖さを感じることすらある。

●世論は「本田よりも香川」の大合唱

 スポーツの世界においても風向きを180度変えることはやはり容易ではないと痛感した。ネット上で書かれている書き込みが世の中の本筋とは思わないにせよ、ある程度の指標となっていることはやはり否めない。

 そもそも本田はW杯メンバーの代表入りの過程において疑惑が取り沙汰された。NHKのドキュメンタリー番組でバヒド・ハリルホジッチ前監督の戦術を公然と批判。その番組収録後にハリル前監督の解任が発表されたことから「指揮官交代について本田は事前に知っていて、一枚かんでいたのではないか」とささやかれている。その真相はどうあれ、前監督時代にはお呼びがかからず干されていた本田は西野朗監督新体制になると一転して風向きが変わり、晴れてW杯メンバー入りを果たした。

 だが大口を叩いていながら大会直前の強化試合2戦ではトップ下で満足なパフォーマンスを見せられずに悪戦苦闘を強いられ、最後のテストマッチ・パラグアイ戦で活躍したMF香川真司(ドルトムント)にポジションを奪われてしまう。

 世論は「本田よりも香川」の大合唱で、特に“ハリル降ろし”にウラで絡んでいたと決め付けている人たちからは日本代表のガン細胞と言わんばかりのヒールに仕立て上げられ、さらにはネットニュースに題材として扱われるだけで炎上しやすい痛いキャラにまで成り下がっているのが現状のようである。

 やはりこの本田に向けられている猛烈なバッシングとヒール扱いは、あのNHKのドキュメンタリー番組で公然と口にしたハリル批判から端を発しているとみていい。

 もう全盛期を過ぎ、本田のパフォーマンスが低下していることは多くのサッカーファンも痛感している。無論、それは本人も自覚しているはずだ。それでも本田は一切、ネガティブなことは口にしない。昔からの代名詞であるビッグマウスを今も貫き続けているからだ。

●本田の表情はどこかぶぜんとしたまま

 あえて歯に衣着せぬ本音や大口を発し、それがたとえ自分を追い込む形になっても後悔しない。本田はそういうビッグマウスのスタイルで自分をがんじがらめにしながら妥協できないようにし、律することでここまで突っ走ってきた。

 だから時には、さまざまな誤解も生む。ハリル解任騒動の前に収録されたNHKのドキュメンタリー番組で「ハリルのやるサッカーに全てを服従して(代表に)選ばれていく。そのことのほうが僕は恥ずかしいと思ってるんで。自分を貫いたと自分に誇りは持ってます」などと強気に発言したことも、ウソ偽りのない本音だろう。

 この発言ばかりがメディアに多く取り上げられているが、実は同番組で「(代表選出は)微妙やと思うんで」と言い切っているように後の解任騒動ぼっ発について本当に何も知らず、落選を覚悟した上での純粋なビッグマウスだったことも当然否定し切れない。

 しかも歴史的勝利を上げたコロンビア戦後、インタビューに応じた本田は「結果だけ見れば勝ち点3を取れたので満足行く結果だったと思います。一方で内容はそこまでよかったとは感じていないですし、相手が10人の中でアドバンテージを生かし切れていなかったと思います」などとコメント。

 インタビューアから鮮やかなCKからのアシストだったと指摘されると素直に「ありがとうございます」と口にし「結果を出すということにこだわって今まで準備してきましたし、自分に与えられた時間はわずかでしたけど、まず1つ、しっかりと決勝点に絡む仕事ができて、そこに関しては非常に嬉しく思っています」と続けたが、表情はどこかぶぜんとしたままだった。

 そして「欲を言えば自分自身が決勝点を決められるような活躍ができればいいと思っていますが、チームが勝つことが一番なので非常に満足しています」と自分に言い聞かせるような言葉も述べた。

●大会終了後の本田は、どうなっているのか

 パスミスを犯した自分の低いパフォーマンスぶりや、そしてチーム全体の完成度に対する不満をいつもの本田節で赤裸々に明かしたのだろう。個人的には特段、間違ったことを口にしたとは思わない。しかしながらこれらの本田発言には案の定、ネット上で多くのユーザーたちがかみ付きまくって大炎上となった。

 「お前が言うな」「パスミスしたのは自分だろ」「走れない、守れない本田は日本代表にいらない」「もうお願いだから何もしないでくれ」――。

 本田が電光石火のCKで決勝ヘディング弾を生み出し、日本に歴史的勝利をもたらした上、W杯でアジア史上初となる3大会連続アシストの偉業も成し遂げたヒーローだということを批判した人たちは完全にスルーすると決め込んだようだ。

 ただ補足すれば、きっとひと昔前の本田が同じトーンのコメントを口にしていたら「この勝利だけで決勝トーナメントに行けるわけじゃない。よく言ってくれた」「さすが本田だ」などと逆に絶賛されていたと思う。

 日本の歴史的勝利の立役者になっても、風向きが変わらず蚊帳の外に置かれた感のある本田。それでも柳に風とばかりに気にすることなど一切なく持ち前のビッグマウスを崩さずに、黙々と自分を信じて突き進む腹積もりなのだろう。

 ネット上で今や「稀代のヒール」になっている男は自身にとって最後のW杯となるであろうロシア大会終了後、果たしてどういう立ち位置になっているのか。注目したい。

(臼北信行)

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