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なぜ心臓に「がん」はできにくいの?

6/21(木) 17:45配信

All About

◆心臓にがん・悪性腫瘍が発生しにくい科学的理由は?

「心臓はがんにならないのですか?」……この質問は患者さんからもよくいただきます。胃がん、大腸がん、肺がん、すい臓がんなど、その他の臓器のがんはよく起こるのに、確かに「心臓がん」という言葉を聞いたことがある方はあまりいないのではないでしょうか。まずはがん発生の基本を簡単に解説した上で、心臓にがんが発生しにくい理由をご説明したいと思います。

◆そもそもがんとは何か・がん発生のメカニズム

がんというのは、体の「表面」の細胞が悪性化してできるものです。この場合の「表面」というのは、目に見える皮膚だけを指すものではありません。体の中にある管(くだ)、例えば胃腸や肺などもそれぞれ管によって外界と繋がっているため体の「表面」と考えます。そしてこれらの臓器には、しばしばがんが発生します。

要は、体の「表面」にあるために他の刺激を受けやすく、擦れて表面が剥がれたり傷ついたりしやすいのです。そのため、どんどん新たな細胞を作って補っていく必要があります。細胞を新しく補う過程は、既存の細胞をコピーして増やしていくとイメージしてください。その際、時々「コピーミス」が起こり、正常ではない変な細胞ができてしまうことがあります。これらのうまく複製できなかった細胞の中にあるのが「がん細胞」です。

一方、体の表面ではなく奥のほうにある細胞が悪性化してできる腫瘍を「肉腫」と呼びます。大きくなって周囲を圧迫したり転移して体のあちこちを壊したりする点では、肉腫もがんと同じです。一般の方々には肉腫もがんのうちという認識の方が多いように思いますが、いずれも命を脅かす悪性のものに変わりありませんから、学術的な違いはあれど、イメージとしては同じ扱いで良いと思います。

◆心臓がん・心臓悪性腫瘍が少ない4つの理由

それでは前述の基本知識に沿って、心臓にがんが発生しにくい理由を考えてみましょう。

1. 心臓は身体の表面にはないため
まず第一に、心臓が身体の表面にはないということが挙げられます。心臓には、胃腸における消化管のように中が空の管は通っていませんし、肺のように外界と接する表面もありません。がんが極めて少ないのは、まずこのためです。

その代わりに奥のほうにある細胞からできる「肉腫」は、心臓においてもわずかながら発生することがあります。しかしがんと肉腫をあわせても、心臓から発生する悪性腫瘍は極めて少ないのです。その原因として次のことが考えられます。

2. 心筋はあまり増えずコピー回数が少ないため
心臓の細胞のうち、「心筋」と呼ばれる筋肉はあまり増えません。増えないものはコピー回数も少なく済むため、コピーミスの可能性も少なく、結果として悪性化しにくくなるのです。そうは言っても、少数ながら心筋細胞をコピーして造る機能はあるため、悪性化する可能性がゼロではありません。

3. 心臓の温度が高いため
心臓は体の奥に位置しており、保温性の良い環境にあります。熱を発生する肝臓のすぐ隣にあることからも温度が高い臓器です。普通私たちの体温は腋窩つまり脇の下で測定しますが、心臓の温度はそれより1度前後高いのです。悪性の細胞は高温に弱いため、心臓には悪性細胞が一層生まれにくく、また悪性の細胞が血流に乗って他臓器から流れて来ても、心臓に定着、つまり転移することが少ないと考えられます。

4. 心臓が作るAPPなどのホルモンの作用のため
心臓はANP(心房性ナトリウム利尿ホルモン)などのホルモンを作っており、これが悪性細胞を抑える作用を持つため、悪性細胞ができにくく、また転移もしにくいと考えられています。

こうした心臓独自の特徴のおかげで、心臓には悪性腫瘍が少ないものと考えられています。

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最終更新:6/21(木) 17:45
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