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「稼ぎ頭」なき東芝 成長戦略はどこに

6/22(金) 12:05配信

ニュースソクラ

取引金融機関待望の、東芝メモリ売却

 東芝は6月1日に半導体事業「東芝メモリ」を米ベインキャピタルなど日米韓連合へ売却した。

 売却額は2兆円で、東芝はメモリ事業の資産価値と売却総額の差額である約9700億円の売却益を手にした。財務内容も飛躍的に改善し、今年度末の自己資本比率は40%を超える水準まで回復する。

 しかし、全体収益の9割、年5000億円近い営業利益を稼いでいたメモリ事業を失った穴は大きい。売却後も東芝は「東芝メモリ」に4割出資し、その分の持ち分利益は計上できるものの、メモリ事業に代わる新たな稼ぎ頭をどう生み出すか、新たな課題に向きあわなければならない。

 なぜ東芝は「東芝メモリ」の売却を急いだのか。「昨年末に6000億円の増資を成功させており、無理に売却する必要性は低かった」(市場関係者)という声は根強い。

 実際、増資に応じた香港の投資ファンドは、「東芝メモリの売却により、東芝は過剰資本状態にある。1兆円を超す自己株式買い戻しを行うべきだ」と、6月27日の株主総会に向けて要望を強めている。

 東芝メモリの売却に圧力をかけたのは経産省と取引金融機関である。「今の東芝では年間数千億円が必要なメモリ事業に係る設備投資を続ける余力は乏しい。また、半導体事業は収益のブレが大きく、東芝はリスクを負えない」(メガバンク幹部)というのが理由だ。

 しかし、同時に金融機関側にも、どうしても東芝メモリを売ってもらわなければならない事情があった。「東芝メモリの売却により、融資する金融機関は東芝の債務者区分を要注意先債権から正常先債権に格上げできた。これにより引当負担は大きく軽減された」(関係者)というのだ。

 特に東芝に融資する地域銀行は、収益減に喘いでおり、東芝向け引当負担は重荷だった。取引金融機関にとって東芝メモリ売却は不可欠だった。

 東芝からスピンオフされた東芝メモリの主導権は、日米韓連合の中核である米ベインキャピタルが担うことになる。新東芝メモリの取締役5人のうち3人をベインが出す。6月4日の事業戦略説明会でベインの杉本勇次日本代表は「ベイン主導で迅速な意思決定を実現する」と強調している。そのベインは、東芝メモリの企業価値を高めた上で、3年後をめどに東証へ上場させるシナリオを描く。

 一方、残された東芝はどう成長を担保するのか。ドル箱の東芝メモリを売却した東芝の今期の業績予想は売上高3兆6000億円に対し、営業利益は700億円まで低下する。東芝メモリに代わる収益源が求められるが、5月15日の決算会見で車谷暢昭会長は、「AI(人工知能)やIoTを使ったリカーリングビジネスを強化したい」と強調した。

 「リカーリングビジネス」とは、製品を売って終わりではなく、売った後もサービス等を利用してもらうことで、継続的に収益を上げるビジネスモデル。この点、思い出されるのは、車谷氏が三井住友銀行副頭取時代に筆者に語っていたことである。

 当時、大手自動車メーカーとAIやIoTに関する特命プロジェクトを所管していた車谷氏は、米国の有力ベンチャーとの資本提携を水面下で進めるため、よく渡米していた。この時の人脈が、東芝の成長戦略に活かされるのではないかと見ている。車谷氏は東芝メモリ売却で得た資金で、そうした海外の有力ベンチャー買収に乗り出す可能性もあろう。

■森岡 英樹(経済ジャーナリスト)
1957年生まれ、 早稲田大学卒業後、 経済記者となる。
1997年米国 コンサルタント会社「グリニッチ・ アソシエイト」のシニア・リサーチ ・アソシエイト。並びに「パラゲイト ・コンサルタンツ」シニア・アドバイザーを兼任。2004年 4月 ジャーナリストとして独立。一方で、「財団法人 埼玉県芸術 文化振興財団」(埼玉県100%出資)の常務理事として財団改革に取り組み、新芸術監督として蜷川幸雄氏を招聘した。

最終更新:6/22(金) 12:05
ニュースソクラ

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