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日本海に流れ着く「謎の遺体」、火葬する自治体は悲鳴…官報掲載「行旅死亡人」の背景

6/24(日) 9:05配信

税理士ドットコム

約50年前に亡くなった女性の頭蓋骨が、鹿児島市内の高校の教室から見つかったことが先日話題になった。その発端となる情報を掲載したのは2018年6月5日付の官報だ。

官報によると、鹿児島県立鶴丸高校の生物講義室にある標本棚で、頭蓋骨だけが発見された。見分の結果、性別は女性で本籍などは不明。約50年前に亡くなったことが推定された。火葬し、すでに市営墓地に埋葬したが、鹿児島市は「心当たりのある方は申し出てください」(保護第一課)と引き続き呼びかけている。

このように、官報には毎日のように、全国各地で見つかった「行旅(こうりょ)死亡人」の情報が載っている。行旅死亡人とは、身元がわからず引き取り手もいない遺体のことで、自治体が火葬などを行う。「行旅病人及行旅死亡人取扱法」や各自治体が定める施行規則が根拠となっている。

●日本海沿岸に「異変」

行旅死亡人は必ずしも日本人とは限らない。ここのところ、日本海側では「異変」が起きているようだ。海上保安庁のまとめによると、2017年に確認された朝鮮半島から日本海沿岸などに漂流・漂着してきた木造船の件数は104件で、統計がある2013年以降で最多だった。

官報によると、秋田県では2017年12月、ハングル文字が印刷された紙片を持った年齢不詳の男性遺体(死後数カ月経過)やハングル文字があるベルト付きの迷彩柄ズボンを履いた30ー50歳代の男性遺体(死後1カ月)が、砂浜や海上で発見された。

漂着した木造船のなかで複数の身元不明遺体が見つかる例も相次いでおり、2018年1月には、身元不明の8遺体をのせた木造船が石川県金沢市内の砂浜に乗り上げていたことが確認されたという。秋田県や新潟県などでも似たようなケースが報告されている。

●「海の向こうから来る数は想定できない」

これまでにも同様のケースはあるが、海保のデータを踏まえれば自治体の懸念が強まっても無理はない。火葬などにかかる費用はおおむね20万円前後(自治体により差がある)とされるが、遺体の数が増えれば軽視できない金額になる。本来なら、相続人を特定して火葬などにかかった費用を請求したいが、それができないところがつらい。

実際、秋田県は2017年度当初予算で計上していた例年どおりの額(約75万円)では足らず、のちに約407万円の補正予算を組んで対応した。秋田県地域・家庭福祉課によると、当初は行旅死亡人を4人と見込んでいたが、結果的に2017年度は23人まで増えたという。

ある日本海側の自治体の担当者は「海の向こうから来る数は想定できない。全体の予算規模からすれば大したことはないかもしれないが、じわじわと予算が圧迫される」と話す。

●廃業した産婦人科で、胎児の遺体

また、官報には、想像するだけでもつらい行旅死亡人のケースも掲載されている。2018年1月以降の官報で2回、瓶に入れられホルマリン漬け状態の胎児が見つかったことが記されている(ともに火葬済み)。

鹿児島市では2017年11月、約20年前に廃業した産婦人科医院で、胎児の遺体がホルマリン漬け状態で15体見つかった。死亡時期や性別は不明で、推定妊娠週数は12週ー31週の間。「今のところ特に情報は入っていない」(鹿児島市保護第一課)という。

静岡県富士宮市では2018年2月、産婦人科医院の院長が生前住んでいた家の倉庫に、ホルマリン漬け状態の胎児の遺体が3体見つかった。性別は男で、1976年以前に亡くなったと推定されるという。推定妊娠週数は20週ー31週の間。富士宮市福祉総合相談課にも手がかりになるような情報は入っていないという。

弁護士ドットコムニュース編集部