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私は「女尊男卑」の考え、「女性活躍」なんて当たり前です

6/24(日) 15:04配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 林野宏クレディセゾン社長(3)

 ――「人と同じことをするのは嫌だ」という考え方は、生まれつきの天然のものですか。

 天然のものでもあるけれど、(旧西武流通グループ総帥の)堤清二さんによって、さらに強められたのでしょうね。あの人はユニークで、元共産党員ですからね。

 堤さんは学生時代に入党して、除名されています。当たり前ですよね。後に父親の堤康次郎衆議院議長の秘書をやっているのだから、本来、共産党員であるわけがないじゃないですか。

 だけど本人は、そう思っていたんですよね。当時、同じ東京大学では、渡辺恒雄さん(現読売新聞グループ本社代表取締役主筆)や氏家斉一郎さん(故人、日本テレビ放送網代表取締役会長)も共産党に入っていました。皆さん、さっさと転向したけど、堤さんだけ残って除名です。

 ――林野さんは西武百貨店に入社して、その堤社長の薫陶を受けたのですね。

 そうです。入ったら、とんでもない人がいるわけです。すごい人だなと思いましたよ。

 この人と競争して勝たないといけないのか、社長になるのは大変だなとね。そのうち堤さんの苦手なものが見えてきます。近くにいたので、わかるじゃないですか。

 おカネに関しては弱いぞ、システムにも弱いと、わかりました。クレジット業は、おカネとシステムをどう扱うかが鍵ですからね。

 堤さんは苦手なものだと、やりたいようにやらせてくれました。不得手なことには文句を言わないので、こちらとしてはやりやすい。

 ――林野さんは、もと緑屋だった西武クレジット(現クレディセゾン)に転じて、斬新なアイデアで引っ張ってきました。それが会社にはDNAとして刻み込まれているのでしょうか。

 この会社は、ある意味で失敗の連続だったんですよ。緑屋は経営不振で銀行管理になりましたが、銀行の手に負えなくなって、商社が川下作戦の一環として立て直そうとしました。しかしうまく行かず、三度目に西武百貨店がマーチャンダイジング力で再生しようとしましたが、あの店では無理でした。

 丸井は駅前に店を出して「クレジット」と言っているのに、緑屋は少し外れで「月賦」でしょう。「ラムネ」と言われていたのですよ。「ゲップ」が出るからと。

 だから3度、失敗して、昇給どころか減給で人材が抜けて、ノウハウもカネも無い。しかし何も無いのが、成功の要因なんですよ。私は、成功体験は経営上邪魔で、危機感が大事だと言うのですがね。

 ――林野さんは、社名変更して2年目の西武クレジットに、39歳でクレジット本部営業企画部長として西武百貨店から転籍して、クレジットカード事業を一気に軌道に乗せましたが、当時、社内は危機感に満ちていたのですか。

 危機感というか、みんな下を向いていました。だって散々失敗しているので、私に対してもお手並み拝見ですよ。「何、カード会社をつくる?やってみろよ」という雰囲気でした。

 だから逆にファイトがわくじゃないですか。今に見てろ、成功させてみせるからと。うまく行きそうになれば、今度はあの船に乗らないと大変だとなって、勢いがつくんです。

 この会社を実際に育ててくれたのは女子社員です。カウンターでカード会員集めに頑張ってくれたのは、ほとんどが中途入社の女性たちです。

 あのころ女性は、一流企業では27、8歳になると、居づらくなって辞めざるを得ませんでした。募集したら、そういう優秀な人たちが来てくれたのです。

 私の考えは「男尊女卑」の反対の「女尊男卑」でね、新入社員研修で「同じ能力なら女性を登用する」と言っています。女性は育児などで大変ですからね。「女性活躍」なんて当たり前です。国に決めてもらうことではないですよ。

 ――クレディセゾンはクレジットカードをベースに様々な事業を展開していますが、何会社と言ったらいいのですか。

 当社のコンセプトは「サービス先端企業」です。

 ――わかったようで、わからないですね。

 わかったようで、わからないようにしたのです。私が社長になった時に。要するに、先端サービスを提供する会社です。

 クレジットカードは会社が違っても、機能は等質化するだろう。ならば先端サービスを絶えず生みだして、差別化のための武器を持とうというわけです。

 例えば、セゾンカードの会員ならば、各種チケットが取りやすいですよと、出井伸之ソニー社長(当時)と話して「イープラス」というチケット会社をソニーグループと50対50の合弁で作りました。

 また女性カード会員に、1口2万円で馬主になれますよと、「サラブレッドクラブセゾン」を作り、「ドリーム何々」という名前の馬を走らせました。特にOLがダービー馬主になれるという触れ込みでやってみたのですが、金融庁の理解が得られず売ってしまいましたけどね。

 さらに米国の投信会社バンガードの投信を売れるセゾン投信を作りました。カードで買い物をしてたまるポイントによる資産運用もやっています。会員は約15万人になります。上場会社株を1株から買えるサービスも始めました。個人株主づくりという点で面白いと思います。

 ――これからも新しいサービスをどんどんつくり出すわけですね。

 そうなんですが、私が一番おかしいと思うのは、いまだに1次、2次、3次産業と分類していることです。それを経済産業省に何度も言っているんですがね。我々と銀行や飲食業がみな3次産業なのはおかしいでしょう。

 だから我々は、私の産業分類で言うと「サービス先端産業」なんですよ。

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:6/24(日) 15:04
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