ここから本文です

今年後半、相場は荒れる

6/24(日) 19:20配信

ニュースソクラ

世界的金融緩和の終了が、市場混乱の根底に

 アルゼンチン、トルコでの為替市場の混乱、連立政権誕生後のイタリア債券市場の危機は、単なるノイズや偶然の一致ではないように思えてきた。

 最近の市場におけるこうしたボラティリティの高まりは、世界の市場で、今年後半以降に起きるかもしれない荒れた相場の前奏曲なのかもしれない。

 もちろん「不幸な家庭は皆それぞれに不幸である」というとおり、アルゼンチン、トルコ、イタリアなど市場混乱の事情は各々異なる。

 しかし、その根底にあるのは、世界の中央銀行の政策転換であり、世界的金融緩和が終わって「量的緩和(QE)」から「量的引き締め」へとシフトしていることの影響であろう。

 FRBは6月13日、2015年以来7回目となる利上げを実施した。ECBも6月14日の理事会で2.4兆ドルに及ぶ国債買入れを予定通り本年12月に終了することを決定した。

 一方で日本銀行は量的質的緩和(QEE)の継続方針を再確認した。

 来年以降も、FRBは19年中3回と目される利上げと、2017年9月に発表した量的緩和の縮小を淡々とこなしていくであろう。ECBもQEの終了に加えて、来秋にも利上げ局面に入ることを示唆している。

 QEが株式、債券市場の価格引き上げにつながったとの見方が大方であるのであれば、その反対の行動が、ある種の負のインパクトを持つのは当然のことである。

 ちなみにECBが本年末にQEを終了することになれば、(日銀のQQE継続によりある程度、相殺されるとはいえ)世界の流動性は減少することになり、それは2009年の金融危機後初めてのことだ。

 インド準備銀行の総裁が「今後は金利だけでなく、FRBの量的緩和縮小、つまりバランスシート縮小が新興国の資金流入に悪影響を及ぼすことを懸念する」という趣旨の講演をして話題を呼んだ。たしかに低いボラティリティと株式、債券の持続的で平穏な上昇相場はすでにわれわれの背後にある。

 むろん、世界の投資家はFRB、ECBの金融政策変更を前にして調整を重ねてきた。FRBの利上げまでの一週間で世界の債券市場全体で55億ドルを売り越した。新興国向け債券ファンドにいたっては8週連続の資金流出と2014年以降で最大の流出規模となった。

 元に戻るが、最近における全般的な市場の弱さや新興国の混乱は、中央銀行による債券買い入れ減少の直接的な結果であろう。やや理屈っぽく言えば、市場は現在の金融環境での公正価格、フェアバリューを探っているとも言える。

 筆者の見るところ、投資家はまだ楽観的であり、「コップに半分水が残っている」「ほかに投資対象もない」との理由でキャッシュ化(投資の引き上げ)に積極的ではない。しかし、新興国では、政情不安の続くところ、経常収支・財政収支の双子の赤字や高インフレに悩むところを中心に資金の流出が続くであろう。

 株式、債券と並ぶ信用市場(貸出)はどうであろうか。懸念される一つは新興国向けであり、もう一つは欧州である。

 欧州の銀行にとって調達コスト指標となる3か月物LIBOR(ロンドン銀行間市場金利)は2.3%に上昇している。これは需給関係から見てドル不足が起きていると言ってもよいからだ。

 トランプ米大統領の税制改革で米国多国籍企業の海外収益の本国送金需要が高まることにより、欧州の銀行からドル資金が引き上げられる一方で、欧州の銀行、機関投資家はECBによるマイナス金利政策の下で対米投資に傾斜せざるを得なかったため、短期のドル需給が引き締まっているためだ。

 欧州の銀行にとって、金利の上昇は、収益にとってポジティブに働くはずであるが、長年のQEの慣性でコストの上昇のわりに信用スプレッドは拡大していない。周知のように、欧州の大銀行の株価は弱含み続けている。市場関係者が、収益悪化に加えて、イタリアの金融危機など、信用市場における、より大きな金融ストレスの高まりを予見していることを示しているのかもしれない。

 欧州の銀行だけが問題含みと言っているわけではなく、米国やアジアの金融機関も信用の拡大がピークアウトした信用サイクルの最終局面にある。価格メカニズムの中でリスクを再発見して信用スプレッドを見直す動きがこれから強まってこよう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:6/24(日) 19:20
ニュースソクラ