ここから本文です

<北朝鮮内部>対話進展の影で飢える金正恩氏の軍隊と農民(写真2枚)

6/25(月) 5:10配信

アジアプレス・ネットワーク

◆飢える兵士が強盗

6月初め、北部両江道(リャンガンド)で、部隊を脱走した兵士二人が深夜に協同農場幹部の家に押し入ってこん棒で殴り、コメ30キロを奪って逃げる事件が発生した。

【関連写真を見る】不憫な女性兵士たちの姿 生理止まる栄養不良 性被害も多発 (写真10枚)

両江道に住む取材協力者が伝えてきたところによれば、事件があったのは雲興(ウンフン)郡。憲兵が動員され、「病治療」名目で帰家している兵士と脱走兵を対象に捜査が行われたという。

最近、この「病治療」名目で実家に戻される兵士が増えている。「病治療」とは名ばかりで、実際は部隊の食料が不足して深刻な栄養失調になった兵士を、実家に戻して栄養補給させることを言う。

「近所に咸興(ハムフン)の部隊に入隊して、『病治療』で家に戻された18歳の青年がいるので話を聞きくと、『自分の部隊は60%以上が栄養失調状態。強度の高い訓練はとてもできず、大部分は部隊の畑の仕事をしている。脱走して窃盗や強盗をする者もいる』と言っていた」(両江道の別の協力者)

朝鮮人民軍兵士の栄養状態が悪いのは、1990年代以来ずっと続いている現象だが、今年は深刻だと各地の取材協力者は口を揃える。昨年は春から初夏にかけて全国的に干ばつに見舞われてコメとトウモコロシが不作、軍隊への供給量が減ったためだと思われる。

◆生産者の農民が飢える

協同農場員の暮らしも深刻だ。9月のトウモロコシの収穫までの端境期のことを北朝鮮では「ポリコゲ」(=麦の峠の意、春窮期)という。この4月以降、家にまったく食べ物がない「絶糧世帯」が増えているという報告が各地から届いている。

「農民の暮らしは無残。調査した〇〇農場では4軒に1軒が『絶糧世帯』で、繁忙期なのに農場に出勤できない有様だということだった。それで農場に割り当てられた肥料を市場に売ってトウモロコシを買い、『絶糧世帯』に分け与えていた」

農場に出向いて調査した両江道の協力者はこう伝える。飢える農民の食い扶持を市場で調達するという本末転倒が起こっているわけだ。咸鏡北道の会寧(フェリン)市の農場での調査でも、ほぼ同様の内容を伝えてきている。

生産者である農民が食べ物に事欠くのはなぜか? 北朝鮮は今も集団農業を続けているが、耕作地ごとに国家や軍隊に納める「計画量」が課される。それを上回る生産分は、農民が自由に処分できるのだが、「『計画量』の設定が高過ぎるうえ、昨年の干ばつの影響で、どの農場も生産不振だった」と、取材協力者は伝える。

にもかかわらず、農場の幹部たちは、上層部から強い「計画量」達成の圧力にさられる。農民たちは、一年働いて得られる分配では食べていけず、トウモロコシの収穫が始まる8月末まで、「絶糧状態」になる世帯が続出することになるのだ。(カン・ジウォン)