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世界有数の死刑執行国、ベトナムの死刑囚アート 親たちの希望

6/25(月) 11:00配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【6月25日 AFP】グエン・チュオン・チン(Nguyen Truong Chinh)さんは、精巧に作られた動物、花、ハートをかたどった工芸品を誇らしげにかかげている。プラスチック袋から作られた、ベトナムの死刑囚監房にいる息子からの秘密の贈り物だ。

 贈り物は、不当に有罪判決を受けたと主張する子どもたちを自由にするため、必死で闘っている親たちの心の支えでもある。

 息子のグエン・バン・チュオン(Nguyen Van Chuong)死刑囚(35)は、10年前に警察官を殺害した罪で有罪判決を受けた。公式には死刑囚監房での手工芸品制作は禁じられているが、チュオンさんはこのような作品を生み出す数少ない囚人の一人だ。

 家族たちは死刑囚たちが、他の囚人が捨てようとしていたプラスチック袋を譲ってもらい、引き裂いて、編んで、小さな置物を作っていると推測している。

 作品は刑期を終えた受刑者がこっそりと持ち出していた。だが、親族は数年前から作品を受け取っていない。刑務所内で手工芸品の制作が禁止されているため、チンさんや他の死刑囚の親たちは、看守が取り締まりを厳しくしたのではと懸念している。

 息子は有罪判決を受けた事件の現場に近づいたこともないと主張し、10年にわたって息子の釈放を訴えてきたチンさんは、これらの作品は今でも自分の活動の原動力となっていると言う。

 事件の関係書類が詰まったバッグを抱えて座ったチンさんは「この動物たちを見ていると、息子はまだこのようなものを作れるぐらい安定していて、精神的にも強いのだと分かる」と話した。「これらは、正義を求める私たちの闘いのモチベーションになる」

■世界有数の死刑執行国

 ベトナムの刑務所についてはあまり知られていない。だが、公安省は昨年、珍しく報告書を公表した。これによると、2013年8月~16年6月に刑を執行された死刑囚は429人だった。年平均では147人の死刑が執行されていることになり、ベトナムが中国やイランと並び世界有数の死刑執行国であることがわかる。

 刑務所の状態についての詳しい情報は乏しく、メディアのアクセスは厳しく制限されている。だが、法律では死刑囚は独房に収容し、24時間体制で監視することが定められている。受刑者は「危険」と見なされ、1日のほとんどの時間を片足に足かせをはめられた状態で過ごす。足かせが外されるのは独房内で入浴する15分間だけだ。食事も排せつも独房で行う。

 国際人権連盟(FIDH)のアンドレア・ジョルゲッタ(Andrea Giorgetta)氏は「治療の拒否に加え拷問も行われていて、刑務所内で死に至る場合が多い。だが、当局が調査をすることはほとんどない」とAFPに語った。

 公安省の報告書では、2011~16年に刑務所内で死亡した死刑囚は36人とされているが、死因は示されていない。

 チュオン死刑囚は家族への手紙で、逆さまにつるされたり、裸にされ汚い靴下を口に詰め込まれたり、取り調べ中に殴られたりするなど拘束中に拷問を受けていると書いている。さらに警察は性器に電気ショックを与え、強要に応じて自白するまで針で刺し続けたという。

 ベトナム外務省はAFPの取材に対し、拷問が行われているという主張は「誤った情報」だとして否定。また受刑者の「名誉と尊厳」を傷つけるようなことは何もしてないと主張した。

■闘う決意

 親族たちは、死刑囚による工芸品は絶え間なく続く死刑執行の恐怖から気をそらしてくれると話す。

 グエン・ティ・ロアン(Nguyen Thi Loan)さんは政府に対し、息子のホー・ズイ・ハイ(Ho Duy Hai)さん(32)の無罪を主張する手紙を1500通以上送っている。息子の釈放を求める闘いのため、土地、家、行商人の仕事を諦めた。息子は2008年、女性2人を殺害した罪で投獄された。

 死刑執行予定だった2014年、直前になって大統領により死刑が中止されたため、再審への期待が高まった。

 刑務所に入ってから最初の数年、ハイ死刑囚はエビ、魚、馬などの作品を弁護士、恩師や親族に贈り物として送っていた。だが、ロアンさんはここ何年も一つの作品も受け取っておらず、看守が制作を禁じたのではないかと恐れている。「このような贈り物の制作は誰も傷つけない。なぜ息子に作らせてくれないのか?」と、ロアンさんは涙を流しながらAFPに語った。

 支援者らは、作品を通してハイさんの件に関心が高まることを期待している。ハイさんの作品はチュオンさんの作品とともに今年、アーティストのティン・グエン(Thinh Nguyen)さんによるアンダーグラウンドの展示会で並べられた。

 ティン・グエンさんは、官庁の外で息子らの釈放を呼び掛けていた家族たちと知り合い、数年前から家族たちを通じて死刑囚の作品を集め始めた。「これらの動物を展示することで彼らの物語が知られるようになる。作品を見ていると希望が見えてくる」と、ティン・グエンさんは語った。

 映像は3、4月撮影。(c)AFPBB News

最終更新:6/25(月) 16:35
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