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<大阪地震>災害時の差別デマを許してはならない理由 防災の重要な一部として議論を(加藤直樹)

6/26(火) 6:03配信

アジアプレス・ネットワーク

大阪北部地震が発生した6月18日、法務省人権擁護局のアカウントが「災害発生時には…差別や偏見をあおる意図で虚偽の情報が投稿されている可能性」があるとして注意を呼びかけるツイートを行った。NHKテレビでも同日、「在日外国人などへの差別をあおるような投稿」「うそ」への注意をうながす報道を行った。朝日新聞は21日、「ヘイトデマ 許さないを着実に」と題した社説を掲載し、行政やSNSの運営会社に差別デマへの対応を求めた。さらに23日には産経も社説で「外国人に対する偏見、差別」を煽るデマを非難した。これまでなかったことである。(加藤直樹)

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災害発生時には、外国人などのマイノリティーに対して犯罪者やテロリストのレッテルを貼る差別デマが必ず現れる。東日本大震災でのそうしたデマについては、荻上チキ氏の『東日本大震災の流言・デマ』(光文社新書)に詳しい。2014年の広島の土砂災害でも、15年の関東・東北豪雨でも、「外国人の空き巣」といったデマが流れた。16年の熊本地震のときも同様だ。古くは1995年の阪神淡路大震災のときも「外国人の放火」といったデマが流れた。

今後も災害のたびに、こうしたデマは現れるだろう。大事なのはそれを信じてデマを拡散するようなことのない社会をつくることであり、行政がそのために役割を果たすことだ。その意味で今回、法務省人権擁護局が素早く注意を呼びかけたことは、一歩前進だ。
なぜ災害時の差別デマをそれほどまでに警戒し、封じ込める必要があるのか。それは過去に、こうしたデマが実際の暴力につながったケースが少なくないからである。

■デマで人が殺された関東大震災

最悪の事例は、1923年(大正12年)の関東大震災時の朝鮮人虐殺だ。「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という流言が広がる中で、ごく普通の人々や軍の一部が数千人ともいわれる朝鮮人を殺害した。事態を悪化させたのは、内務省や警察が流言を拡散してしまったことだった。この事件については、内閣府中央防災会議の専門調査会がまとめた「1923関東大震災【第2編】」(http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1923_kanto_daishinsai_2/index.html)に詳しい。この報告は、虐殺事件から学ぶべき教訓として「過去の反省と民族差別の解消の努力」と並んで「流言の発生」への警戒を挙げている。

95年も前の話ではないかと思う方もいるかもしれない。だが、差別デマがマイノリティーへの暴力に至った事例は古今東西にある。近年では、2005年にアメリカ南部ニューオリンズを襲った水害の際、黒人たちが略奪や強盗を働いているというデマによって被災者の救援が遅れ、さらには白人の自警団が道をゆく黒人に無差別に発砲するといった事態が起きた。人数は分からないが、死者も出ている。

米国のデジタルメディア「VICE」がYou Tubeにアップしているドキュメント番組には、東日本大震災の際、中国人窃盗団が暗躍しているという流言を真に受け、鉄パイプなどで武装して石巻に入ったという右翼団体のリーダーの証言が出てくる。

差別デマから実際の暴力までの距離は、決して遠くないのだ。災害によって命を落としたり負傷したりするのではなく、その後の差別デマによって誰かが犠牲となるような事態が、実際に起きてからでは遅い。国や自治体の防災行政の中に差別デマへの対応をしっかりと位置付けるべきだし、そのための議論を始める必要があるだろう。

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