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【平成家族】「不妊原因は自分」知る恐怖 「妊娠力」検査、身近になったけど…… ためらう男性、妻の思いは

6/29(金) 14:01配信

朝日新聞デジタル

 技術の進歩や不妊治療への意識の高まりで、「妊活」という言葉が当たり前になった平成時代。スマートフォンで精子の活動を見られるツールや、結婚前後のカップルが妊娠に必要な検査をする「ブライダルチェック」など、「妊娠力」を調べられる方法がより身近になってきています。一方で不妊の原因が自分にあると特定されれば「家族崩壊につながる」と恐怖を感じ、ためらう男性もいます。その思いを明かされた妻の気持ちとは。妊娠に向き合う家族の今を追いました。(山本恭介、福地慶太郎、見市紀世子)

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「元気な精子」のはずが……

 スマートフォンの画面に映し出される映像を、埼玉県志木市の永井太郎さん(38)はドキドキしながら、じっと見つめました。

 「あれ、おかしい……」

 映像は、オタマジャクシの形をした無数の精子が元気に泳いでいる、はずでした。実際は動いている精子はほとんどおらず、数も少ないように見えました。

 永井さんが使ったのは、自身が働く性具メーカー「TENGA」が2016年に開発した精子検査キット「TENGAメンズルーペ」。

 スマートフォンのカメラに特殊な拡大鏡をセットし、プレートに垂らした精液をかざすことで自身の精子の状態を簡単に観察できる商品です。精子の動きを目視し、サイトの計算式に当てはめると、世界保健機関(WHO)の基準と比べることができます。

「漠然とした恐怖心」なかなか動けず

 精子を見た永井さんの頭には、妻(37)の言葉が浮かびました。

 「子どもがなかなかできないけど、あなたは何か行動している?」

 共働きで、仕事優先の生活をしてきた永井さん夫婦。互いに30代も半ばにさしかかった頃、子どもを作ることを決意しました。ですが、それから2年ほど、子どもはできませんでした。

 夫婦は互いに思うことがありましたが、言えませんでした。それは「私が(自分が)不妊の原因かも」というもの。
 
 永井さんが言えず、自分から調べることをためらったのには、漠然とした恐怖心がありました。自身の精子が不妊の原因だと分かったら、家庭が壊れるのではないか――。その不安から逃げ、このままでも何とかなるだろうと考えて日々を過ごしていました。

 夫婦の妊活への意識の差は広がっていきました。

 妻は生理の日から、妊娠しやすいタイミングを計算していましたが、永井さんは「仕事で疲れた」と断ることも。妊娠のために努力する妻と、関心の薄い夫。妻は、永井さんが傷つかないような言い方で検査を促しましたが、永井さんは動きませんでした。妻は、そんな永井さんへの信頼感が薄れていきました。

 そんな頃に社内で使用を勧められたのが、精子検査キットでした。妻からは何もしないと思われていた永井さん。心の中では何かしないといけないと思っていたため、調べることを決意しました。

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