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商売は攻撃的でないと駄目

7/1(日) 15:05配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 林野宏クレディセゾン社長(4)

 ――今や製造業もサービス化して、業種、業界が流動化していますね。

 工場を持たない製造業とか、そういう動きが実際にあります。我々は独自に「サービス先端企業」を標榜しているわけですが、一方で「ネオ・ファイナンス・カンパニー・イン・エイジア(Neo Finance Company in Asia)」という経営ビジョンを掲げています。

 アジアを重点にサービス先端金融を展開するぞという意味です。こういうキャッチフレーズでやれば、あそこと組むと、うまく行くのではないかと、東南アジアの人たちは思いますよ。

 クレディセゾン(Credit Saison)はフランス語で、珍しいんです。格好いいでしょう。ベトナムに行ったら得をしましたよ。昔、フランス領だったでしょ。ベトナムに進出したとき、向こうの人たちはフランス語名の会社ならいいじゃないかって。誰もフランス語を話せないんですけどね。(笑)

 ――いろいろやっていますが、百発百中とはいかないでしょう。

 もちろん。調べたら、米国スタンフォード大学出のアントレプレナーの成功率は7%で、93%は失敗です。

 うちはセゾン・ベンチャーズというベンチャー企業に投資する会社を作っています。10に3つも当たれば大成功と思ってやればいいんです。

 大企業がやっても駄目ですよ。デューデリジェンス(資産査定)だとか、中期経営計画が無いとか、くだらないことを言ってね。中計なんか作るようなのはアントレプレナーと言いません。やってみなければ、わからないのだから。

 ――ソニーの創業者、井深大さんは計画嫌いだったそうです。

 ベンチャー企業の本質はリスクテイクですよ。これは面白いけど市場に受け入れられるか、わからない。だけど可能性はあるよなと判断するのは、感性です。

 そうした感性は、就職試験を受けに来る学生に「どこを受けていますか」と聞けば、おおよそわかります。今繁栄している会社が、5年先、10年先も栄えている可能性は低いですよ。

 会社の寿命は昔の半分の15年になっていますからね。会社に45年勤めるとすると、会社の寿命は15年だから、会社を3回かわらなければならない。

 そういう社会が来るので、1つの会社に勤め続けようと思わない方がいい。銀行は安定しているなんて考え方は駄目ですよ。

 ――自社の社員が転職してもいいのですか。

 愛想をつかして、どこかへ行ってもいいじゃないですか。会社と馬が合わないということもあるでしょう。

 会社に個性があれば、人によって合うか合わないかがあります。今までは没個性の会社が多かったが、これからは個性が無いのはいけません。

 会社の個性に合う人たちが来ます。出ていっても、こちらの方がやはりよかったと思ったら、戻ってくればいい。出入り自由です。

 結構、戻ってくる人もいます。他がいいと思って行ったら、がんじがらめだったのでとかね。

 ――社員が安住して危機感を持たなくなるのは、危険だという考え方ですね。

 それは口で言っても駄目です。何か新しいことを始めさせるのがいいですね。

 例えば一番いいのは、東南アジアで仕事をしてもらうことではないですか。「はい、あなたベトナムです」と言ったら、びっくりするでしょう。言葉ができない。知っている人もいない。否応なしに危機感がわいて、やるしかないと奮い立つのでは。

 ――実際に、そうしているのですか。

 希望は聞いていますけどね。希望者と、壁を破ってほしい人を選びます。守りに入る人は会えばわかります。

 商売は攻撃的でないと駄目なのです。これは止めて、こういう新しいサービスを作った方がいいと、昨日と違うことを毎日考えるのが、ビジネスパーソンの仕事です。

 うちでは、上司の許可無しで個人個人が自分の進路希望を言えるジョブ・コンペティションをやっています。何をやりたいのか、どこの部署で働きたいのか、毎年、出てきた希望を私は全部読みます。

 ジョブ・コンペと言っているのは、ある職を複数の希望者に競い合ってもらう狙いがあるからです。

 ――林野さんは社長になられて何年ですか。

 18年です。2000年に社長になったので計算し易いんです。

 ――いつまで続けられますか。

 もう辞めましょうね(笑)。そろそろ。くたびれちゃうものね。西武百貨店、クレディセゾン、3つ目に新しいことをやらないとね。自分で面白そうな会社をやりますか。白紙から会社を作るのは面白いじゃない。

 三島由紀夫の『潮騒』に匹敵する青春小説を書こうかなとも思っているんです。林真理子さんより面白いものが書けるのではないかな。(笑)

 ――でも後継者はどうするのですか。

 難しいのは後継者ですよね。私は運がよくてね、チャンスをたまたま与えられて、(社長になった)稀な例です。運は大事だと思っていまして『運とツキの法則』という本を書きました。

 ――『BQ』も面白い本ですね。

 IQ(知性)、EQ(理性・人間性)、SQ(感性)を掛け合わせれば、あなたのBQ(ビジネス感度、Business Quotient)がわかります。中でもSQの低い人は、これから通用しませんという本です。

 ――後継者はBQの高い人ですか。

 まあね。社員が納得する人でないと駄目でしょうね。納得性が重要です。

 そうだ、全社員に「次期社長」という名刺を持たせたらいいな。マグネットを入れて、こっちの「磁気」だなんてね(笑)。今度、行動指針の「ヒューマニズムの風土創り」の最後に「あなたは次期社長です」と書いておこうかな。(笑)

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:7/1(日) 15:05
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