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<北朝鮮内部>中国に気を使う金正恩政権 「中国人に失礼なことするな」と住民に異例の学習

7/2(月) 11:22配信

アジアプレス・ネットワーク

◆正恩氏の卓越した外交と礼賛

6月以降、一般住民と労働者を対象にした政治学習で、金正恩氏の一連の首脳外交を礼賛する一方、中国との関係改善を強調し、中国批判を戒め、中国人に対する態度まで指導する内容の政治学習が行われていることが分かった。咸鏡北道に住むアジアプレスの取材協力者が詳細を伝えてきた。(カン・ジウォン)

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「工場での朝礼と学習の時間に党の幹部が来て講演した。内容は、まず金正恩の外交能力を礼賛して、『金正恩元帥様の卓越した外交術で朝中関係が発展している』と、強調することから始まった」
労働党員である取材協力者は、このように報告を始めた。

指導者賛美が強調されるのは、政治学習において毎度のことある。だが、6月に入ってから、職場の学習で度々言及されるのは、中国との関係改善に関するもので、
「これまでのように中国に対して誹謗中傷をするな、中国人に対して失礼なふるまいをするなと、繰り返していた」という。

2017年、北朝鮮が核とミサイル実験を重ねたことで、中国は態度を硬化させ国連による制裁に強く加勢した。反発した金正恩政権は国営メディアを通じて、中国を「大国主義」「米国の追従勢力」と、罵りに近い異例の批判を繰り返した。

住民を対象とした政治学習でも、「日本は百年の敵だが、中国は千年の敵だ」、「足元を見て我々の天然資源を安く買い叩いている」など、中国に対する反発と警戒を繰り返し強調してきた。住民の間の反中感情も根深い。

それが一変したのは、3月と5月に金正恩氏が二度に渡って中国を訪問して、習近平主席と首脳会談に臨んでからのことだ。講演では、次のような興味深い説明もあったという。

◆中国人に失礼してはならない

「党幹部は講演で、『近年見られた、中国の投資者に対する外交儀礼に欠くような行為はしてはならないし、中国人に対して失礼不遜な態度をしてはならない』と強調していた。調べると、他の企業所でもまったく同じ内容の学習・宣伝をしている。また先日は、テレビで中国ドラマの『毛岸英』も放映した。それで一般住民は、中国との関係が良くなったので、近いうちに大きな投資をしてくれるだろうと、期待を口にするようになった」
※ドラマ「毛岸英」は、朝鮮戦争当時、中国義勇軍として参戦して死亡した毛沢東の息子・毛岸英を描いた作品。

講演では特定の人物や機関・企業の名は挙げなかったというが、ここ10数年、北朝鮮内に合弁企業を設立した中国投資家が詐欺にあったり、何らかの法律違反を口実に機械・設備が没収されるケースが度々発生し、酷い場合には、逮捕して巨額の罰金を課したあげく追放する事件まで起こり、中国当局が抗議する事例も珍しくなかった。

米国と非核化や平和体制構築についての対話が始まった今、中国の助力を切実に必要とする金正恩政権が、中国の気分を損ねないよう神経を使っていることが、講演の内容から窺える。

一方で、講演の最後には、「中国との関係が改善したからといって過度な幻想を持ってはならない。中国は、私たちの運命に責任を負うことはないのだから、自力更生だけが生きる道だ」
という言葉を付け加えるのを忘れなかったと、取材協力者は伝えている。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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