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芥川賞候補作「美しい顔」、ノンフィクションとの類似表現が独自検証で10か所超 それでも“著作権侵害“を問うのが難しい理由

7/3(火) 14:30配信

AbemaTIMES

 今月18日に発表される第159回芥川賞の候補作に選ばれた北条裕子氏の小説『美しい顔』に疑惑が浮上している。東日本大震災から半年後の2011年11月に出版されたノンフィクション作家・石井光太氏の『遺体 震災、津波の果てに』に似た部分が複数あるというのだ。

 山梨県出身の北条氏は『美しい顔』がデビュー作で、文学界の新たな才能として注目。『美しい顔』の主人公は東日本大震災で母親が行方不明になった女子高生。弟との避難所生活の中で揺れ動く心を迫真の筆致で描き、今年5月、講談社が主催する群像新人文学賞で今年の受賞作にも輝いている。受賞にあたって北条氏は「小説を書くことは罪深いことだと思っています。この小説はそのことを特に意識した作品になりました。それは、被災者ではない私が震災を題材にし、それも一人称で書いたからです」とコメント、さらに「私は被災地に行ったことは一度もありません」と意外な事実も明かしている。

 被災地に足を踏み入れることなく想像力で紡いだ、この“震災文学“を審査員は高く評価。高橋源一郎氏は「作者は、それがどんなに過酷な体験であったかまるでドキュメンタリーのように詳細に描いていく」と講評した。

 AbemaPrimeが独自に調べたところ、『美しい顔』の本文中、遺体安置所の場面で10カ所の表現、遺体の確認方法など7つの設定が『遺体』に類似していた。例えば『美しい顔』には、主人公が母親を探しに訪れた遺体安置所で、壁に貼られていた「遺体リスト」を見る場面がある。

『それぞれのリストには番号がつけられていて、その横に名前、身長、体重、所持品、手術跡といったことが書いてある。今現在でわかっている限りの情報だという。
「今日までに見つかっている遺体はこれがすべてです。お母さんと思われる特徴の番号があれば、みんなここに」
 彼は小さな紙切れと鉛筆を手渡した。
「あとで実際に目で見て確認していただきますから」
 壁の遺体リストに記載されている特徴にはかなりの違いがあった。すでに身元が特定され住所や勤め先の会社名まで記してある番号もあれば、<性別不明><所持品、衣服なし>としか情報が載っていないものもある。<年齢三十歳~六十歳>とものすごい幅のあるものもある。』(『美しい顔』群像39ページ下段より)

 ここが、『遺体』の以下の部分と類似している。

『壁にはここに集められた死亡者のリストが貼ってある。紙にそれぞれの遺体につけられた番号が記されており、その横に名前、 性別、身長、体重、所持品、手術痕などわかっている限りの情報が書かれているのだ。警察官が安置所に運び込まれた遺体 を一体ずつ丁寧に調べて明らかにした情報だった。「今日までに見つかっている遺体はこれがすべてです。ご家族と思われる 特徴のある方がいれば何体でもいいので番号を控えて教えてください。実際に目で見て確認していただきます」家族たちが食い 入るように見つめる。死亡者リストに記載されている特徴にはかなり違いがあった。すでに名前や住所まで明らかになっているも のもあれば、波の勢いにもまれて傷んでしまっているために「年齢二十歳~四十歳」「性別不明」「衣服なし」としか情報が載っ ていなものもある。』(『遺体』単行本41ページ16行目より)
 
 石井氏は「東日本大震災が起きた直後から現地に入り、遺体安置所を中心として多くの被災者の話を聞き、それぞれの方の許諾をいただいた上でまとめたのが『遺体 震災、津波の果てに』です。北条裕子氏、講談社には、当時取材をさせていただいた被災者の方々も含め、誠意ある対応を望んでいます」とのコメントを発表。出版した新潮社も「『遺体』と複数の類似箇所が生じていることについては、単に参考文献として記載して解決する問題ではないと考えています。北条氏、講談社には、類似箇所の修正含め引き続き誠意ある対応を求めています」としている。

 現時点で北条氏はコメントを出していないが、講談社は今週発売の『群像』(8月号)で作品の類似と一連の経緯についてお詫び文を掲載することを発表。『美しい顔』執筆にあたって使用された参考文献として、『遺体』の他、4作品が挙げられるという。

 このうち、『3.11 慟哭の記録 71人が体感した大津波・原発・巨大地震』(金菱清編/東北学院大学 震災の記録プロジェクト)の出版元・新曜社は「類似表現が十数か所に上った」とし、「想像力だけでリアリティに迫れるのか、被災当事者の方々はどう受け止めるか開かれた議論が求められているように思う」とコメント。編者の東北学院大学教授も「編者の求めに応じ、容易に表現できない極限の震災経験を被災者が考え抜き、逡巡しながら綴った“書けない人々が書いた記録“。単なる参考文献の明示や表現の類似の問題に矮小化されない対応を作家と出版社に望みたい」としている。

 一方、『ふたたび、ここから 東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(池上正樹著)の出版元・ポプラ社は「『ふたたび、ここから』との関係に限って言えば、権利の侵害に該当する記述があるように思えなかった。著者の池上氏は全文を精読しきれていないが、“今のところネガティヴな印象はありません“としており、今後は池上氏の意向を最大限に尊重する」との立場を示している。

 ノンフィクション作品を下地に小説を書くことがどこまで許されるのか。2日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、法的な課題も含めて検証した。

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最終更新:7/10(火) 14:53
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