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豊島八段、勝てば群雄割拠時代に 8つのタイトルを8人で分け合う ヒューリック杯棋聖戦

7/9(月) 16:56配信

夕刊フジ

 【勝負師たちの系譜】

 羽生善治竜王・棋聖が名人戦で敗退したため、現在豊島将之八段との間で戦われているヒューリック杯棋聖戦五番勝負が、大きな意味を持ってきた。

 羽生が勝てば100期目のタイトルは知られてきたが、豊島が勝つと初タイトルと同時に、8つのタイトルを8人で分け合うという、前代未聞の群雄割拠の時代となるのだ。

 将棋界ではいつの時代も絶対的な覇者がタイトルの半分以上を持ち、タイトル戦は覇者に挑戦者が挑むという図式がほとんどだった。しかしこれからは、どちらが格上かわからないタイトル戦が増えてくると思う。

 1勝1敗後の第3戦は、静岡県沼津市の『沼津倶楽部』で行われた。千本松原を望む元ミツワ石鹸のオーナーの別荘に、素晴らしい宿泊施設を作った、全国でも屈指の対局場である。今回私は、正立会人として同行した。

 前夜祭は着席で360人という、大結婚式のようだった。北海道から沖縄までの参加者があったのを見ても、棋士個人や観るだけの将棋ファンが、増えてきたのを実感できる。

 将棋は後手の羽生の4手目、△7二飛ですでに前例のない将棋。中堅以上になると、若い棋士相手には経験がある得意な形で戦おうという人が多い中で、羽生は幾つになっても将棋の中に、まだ自分の知らない世界があるのではないかという、探求心があるのが凄い。

 もっとも羽生の新構想は成功したとは言えず、作戦負けから不利となってしまった。

 ところが優勢になってからの豊島の指し手はぎこちなく、安全勝ちを目指したつもりが、徐々に形勢は怪しくなっていった。若い頃の羽生なら、一瞬のスキを捉えて逆転に持って行ったと思う。

 しかし今回の羽生は、そのチャンスを生かせなかった。このあたりが最近の2人の、好不調の差となっているのかも知れない。

 豊島はこの接戦に競り勝ち、初タイトルに1勝まで迫った。しかし幾多の棋士が、後1勝の壁の前で、涙を呑んだことか。次の勝利は、豊島の人生を変える1勝となるはずである。

 第4戦は10日に行われる。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

最終更新:7/9(月) 16:56
夕刊フジ

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