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<豪雨>結婚指輪渡す約束、果たせず 広島・裏山崩れて

7/9(月) 21:58配信

毎日新聞

 「何しとるんか。何でこんな所に」。広島県熊野町川角5の住宅街「大原ハイツ」で、会社員、角森(つのもり)康治さん(54)は妻奈々さん(44)の遺体が運ばれて来るとおえつを漏らした。裏山が崩れ、家が土砂にのみ込まれた。6月14日に結婚したばかり。結婚指輪を今月7日に渡す約束は、果たせないままになった。

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 仕事のため、島根県安来(やすぎ)市で家族と離れて暮らす。週末を一緒に過ごそうと、車で6日夕に広島へ出発した角森さんは、同日午後8時ごろ、奈々さんから「気をつけて」と無料通信アプリ「ライン」でメッセージを受けた。これが、最後の言葉になった。

 ラインでは「家の前の水路があふれている」とも伝えてきたが、ここまでの災害になると思わず、避難を促さなかったのは悔やんでも悔やみきれない。7日朝に熊野町に到着すると、「家が地面から無かった」。

 互いに再婚。熊野町の家には、奈々さんと一緒に長男美憲(みのり)さん(13)と次男健太ちゃん(2)、義母の青木裕子さん(71)もいたとみられ、安否不明のままだ。美憲さんはサッカー少年で、東広島市のチームに所属。「強豪高校に進学したい」と夢を膨らませていた。「おっちゃん」。そう呼んで懐いてくれていた健太ちゃんは「角森健太」と言えるようになったと聞き、自分の耳で聞きたいと楽しみにしていた。

 8日午後2時半ごろに奈々さんの遺体が見つかった後、土砂の下からアンパンマンのぬいぐるみが見つかった。子どものためにプレゼントしたもので、健太ちゃんはいつも抱いていた。ぬいぐるみのそばに健太ちゃんがいるような気がしてならない。

 確認した奈々さんの顔はいつも通り奇麗だった。最初はよく似ている義母と思ったが、耳にピアスの跡があり、服もよく着ていた赤白のボーダーだった。

 土砂の中から、アルバムも回収した。角森さんは声を振り絞るように言った。「僕の写真なんてほとんど無いんです。でも、息子2人の写真は持って帰りたいし、義母の写真は義兄に返したい」【柴山雄太】

最終更新:7/10(火) 2:40
毎日新聞

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