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LUCRA事業責任者に聞く、よりスケールの大きな“ものづくり”の魅力とは?

7/10(火) 7:00配信

@IT

 “ものづくり”に憧れてITのエンジニアを志す人は多い。しかし、ITにおける“ものづくり”とはソフトウェア開発だけを意味するものではない。より大きな視点で捉えれば、サービスそのものを作る、あるいは事業そのものを組み立てることだって“ものづくり”なのである。

【渡辺さんの写真】

 そしてソフトウェアと同様、作ったらそれでおしまいではなく、改善や修正を加えながら、より良いものにしていく――そんなより大きなスケールの“ものづくり”に目覚め、現在、活躍している人物がいる。

 「Gunosy」で女性向け情報サービス「LUCRA(ルクラ)」の事業責任者を務める渡辺謙太さんだ。

 渡辺さんがより大きな視点での“ものづくり”を志すようになった経緯や、仕事の魅力、そしてこれから同じ道を歩もうとしているエンジニアたちへのアドバイスを聞いた。

●「使う」から「作る」へ

 渡辺さんがIT分野に目覚めたのは中学生のころのことだ。

 「当時はまだフィーチャーフォン(ガラケー)全盛で、iモードアプリのゲームやケータイサイトに夢中になりました。そのうちに『自分でもアプリを作りたい』と思うようになりました」

 興味は「使う」から「作る」へ。JavaやC++を勉強し、趣味でプログラムを書いて動かしたりするようになった。このころは自らの手で作ることが、大きな楽しみだった。

 中学を卒業し、地元滋賀を離れ、三重県の工業高等専門学校(高専)の電子情報工学科に進んだのも自然な流れだったといえよう。高専では、それこそITに関するあらゆることを学んだ。そして高専の卒業が近づくころ、次の進路を決めなければならなかった。選択肢は、卒業して就職するか、大学に編入してさらに勉強を続けるか――渡辺さんは後者を選んだ。

 2014年、東京大学工学部システム創成学科に編入。同学科は「専門的というよりは、金融や経済など、社会科学的な幅広い視点も含めてシステムを考えていく(渡辺さん)」もので、渡辺さんは松尾豊准教授の研究室で、深層学習を利用した文書分類システムを研究した。

 「文章が新聞記事なのか学術文書なのかといったことを機械学習で判断し、分類していく、というようなテーマに取り組んでいました」

●「作る」から「作って大きくしていく」へ

 渡辺さんに転機が訪れたのは大学入学1年目のこと。Gunosyが開催するデータマイニング研究会に参加した時だった。同研究会は、Gunosyの共同創業者の一人である関喜史氏が手掛けるもので、関氏は渡辺さんと同じ松尾研究室の卒業生でもあった。ちなみに同社では、こうした研究会や勉強会を頻繁に開催しており、アカデミックなテーマも多い。

 「その研究会に参加したことで、大学の先輩が創業したGunosyという会社に興味が湧きました」

 関氏は自身の体験から、学生時代にインターンシップを経験しておくことの重要性を説いている。そこで渡辺さんは、研究会への参加をきっかけに、インターンとしてGunosyで就業体験を積むことにした。

 インターン時代は、主に社内ツールの開発を担当。同社で働くうちに、渡辺さんの興味は、新しいサービスを「作る」だけでなく、それをビジネスとして「大きくしていくこと」に次第に向くようになる。

 卒業後の進路は、大学院へ進むか、自身で起業するか、企業に就職するかで迷った。

 「1日も早くビジネスの経験を積みたかったので進学は候補から外れました。まだ自分でビジネスを起こす自信がなかったため、起業も候補から消えました。残るは就職でした。会社選びのポイントは、ビジネスが学べるところで、それほど多くの会社を検討したわけではありません」

 候補にはGunosyの他にもネットサービス系などの大手IT企業などがあったという。最終的にGunosyを選んだ理由は、インターンで社内の雰囲気がよく分かっていたこともあるが「少人数の組織であることから、ビジネスに触れるチャンスが大きい」と判断したことだった。

●思った以上に早くビジネスを学ぶチャンスが到来

 2016年4月に同社に入社した渡辺さんは、Web事業部に配属され、Web版の「gunosy.com」の企画、開発やWebメディアの立ち上げなどに携わる。10カ月ほど開発を続けた後、新たなプロジェクトとしてLUCRAの開発がスタートした。

 LUCRAは、ファッションやメイク、恋愛、子育て、料理レシピなど、さまざまジャンルの記事をまとめて読める幅広い年齢層の女性がターゲットの情報サービスだ。同社は既に、情報キュレーションサービス「グノシー」や「ニュースパス」を提供している。それらの運営で培った情報解析、配信技術を活用して、情報のジャンルが多岐にわたる女性ユーザーに特化したサービスを提供しようというものだ。

 単なる既存サービスの焼き直しではなく、女性向けメディアならではの課題や記事配信ロジックなど、新たなアプローチが求められた。渡辺さんはLUCRAプロジェクトに移り、サーバサイドの開発も担当する。

 「グノシーやニュースパスのユーザーは、記事をきっかけに商品やブランドを探すということは、あまりしません。一方LUCRAのユーザーは、記事を起点に気になる商品やブランドの情報を能動的に探していく傾向にあります。そうしたユーザーの動きを踏まえ、いかに配信ロジックを最適化し、実装していくかに苦心しました」

 そして2017年5月、LUCRAをリリース。

 「開発が忙しかったので、ローンチの瞬間はあまり印象に残っていません。うれしいというよりも、リリースした以上、これからはタイムラグなしにサービスをより良いものしていかねばならず、むしろ“追い詰められた”という焦りに近い感覚でした(笑)」

 その後の事業拡大フェーズにおける、さまざまな課題なども乗り越え、2017年夏に渡辺さんは、LUCRAの事業責任者になる。いち早くビジネスを学びたいと考えてはいたものの、これほど早い展開になるとは予想もしていなかった。少数精鋭のGunosyを選んだ渡辺さんの判断は正しかったといえる。

●事業を大きくして「できるだけ大きなインパクト」を

 LUCRA事業は好調で、2018年4月の時点でダウンロード数が200万を超え、現在も着実にユーザー数を伸ばし続けている。渡辺さんは、LUCRA事業全体を統括する立場として、プロモーションやマーケティングなどにも関わっている。

 女性向けのサービスを統括していく点で、苦心した部分はなかったのだろうか。

 「確かに、ユーザー目線といっても、実際に女性がどのようなことに感動したり、困ったりするのかは、感覚的には分かりません。むしろ、分からないことがあるからこそ面白いと感じています。女性心理については、機会あるごとに周囲の女性たちに聞き、またユーザーの動向を分析するなどして、手探りで進めています」

 そうした努力(?)が実り、渡辺さんは今では、女性向けファッションやブランドにも詳しくなったそうだ。

 「ファストファッションとかプチプラとか、いろいろと詳しくなりました(笑)」

 未知の領域で、新たな発見を繰り返しながらサービスの方向性や組織を作り上げていくことは、ソフトウェア開発でいえば、要件定義や基本設計に相当するのかもしれない。業務を通じて女性心理やファッションに詳しくなっていくのは、金融系システム開発を行う上級SEが与信業務のワークフローに詳しくなっていくのと同じだ。

 事業の成長に伴って、求められる能力は上がっていく。関わる人が増えていくに連れ、必要なコミュニケーションの質も量も増えていく。そのため渡辺さんは、自分とチームを意識的に変えていくことが重要と判断し、「事業の仕組み化」を図っている。現在は、自ら開発をすることはなくなったが「開発メンバーに、どう動いてもらうか」を考え、実践していくことが楽しいという。

 こうして話を聞くと、事業を運営する立場になっても“ものづくり”の本質的な面白さは変わらないのだということがよく分かる。一般に“ものづくり”というとプログラミングを想起する傾向が強いが、それはあくまで手段であり、体験価値を開発、提供することこそが、今求められているエンジニアの価値であるからだ。

 「もっと大きな事業、もっと大きなチームを育て、世の中にできるだけ大きなインパクトを与えていきたい」と今後の目標を語る渡辺さんに「学生時代にやっておくべきことは何か?」を聞いてみた。

 「サービスを提供するならば、人がどういうところに楽しさや感動を抱くのかを知っておくべきだと思います。具体的には、学生時代に遊び倒すことでしょうか(笑)。まとまった時間を使わないとできないようなことは、学生時代にやっておきたい。友人と旅行に行き感動を共有するといった体験などは、後々役に立ってくるでしょう」

 Gunosyでのインターンシップを通じて新たな目標を見つけ、LUCRAの開発に参加したことでビジネスを学ぶチャンスを手にした渡辺さんが、今後、LUCRAのサービスをどのように大きくしていくのか、とても楽しみである。

最終更新:7/10(火) 7:00
@IT

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