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キユーピーのマヨネーズを出す「穴」 3年かけて3つに増やす深い訳

7/10(火) 7:02配信

ITmedia ビジネスオンライン

 キユーピーはマヨネーズの容器についているキャップの穴を1つから3つにする。350グラム入り商品のみで8月3日以降、全国で順次出荷する。従来の「1つ穴」に比べて今回の「3つ穴」はサイズも小さくなっており、より細いマヨネーズの“3本線”がサラダなどの上に描けるようになる。

普通のサラダもマヨネーズがおしゃれに演出

 味などの改良に比べて一見ささいな容器の変更。しかし同社はこの容器の改良に踏み切る前に約3年間、綿密な消費者調査を行っていた。キユーピーがここまで「穴」にこだわる理由とは?

●子どもに「マヨネーズをかける楽しさ」アピール

 同社がキャップの穴の変更に着手したのは2015年。調味料部でマヨネーズ・マヨ類チームのリーダーを務める谷川和正さんによると、実は現在のキャップの穴は容器に2種類付いている。赤いキャップに付いている「1つ穴」と、キャップを外すと使える星形の穴。「恐らく半数以上のユーザーが『1つ穴』を使っている」(谷川さん)。この穴を3つに増やそうと考えた。

 谷川さんによるとキャップの穴を増やす理由は2つ。「まず小さい子どもがマヨネーズを料理にかける際に楽しめるようになると考えた」(谷川さん)。オムライスにケチャップで字を書くように、子どもが白いマヨネーズで模様を料理の上に描いてもらうことでマヨネーズの味だけでなく「かける楽しさ」もアピールするという。

 2つ目は、比較的若い女性が料理に求める“おしゃれさ”の演出だ。最近は「インスタ映え」に代表されるように見栄えの良い料理を作ってSNSにアップする人が増えている。「普通のサラダにこのキャップでマヨネーズをかければ『カフェ飯』のようにおしゃれに見える」(谷川さん)。お好み焼きなどにかければ簡単に白い網目の模様ができるこのキャップで、インスタ映えも狙っていくという。

 15年春にまずは450グラム入り商品に「おまけ」として試作品の3つ穴キャップを付けた。以降、3年間にわたって一部商品をこのキャップに変えるなどの試行や消費者へのアンケートなどを繰り返し、市場調査に努めた。

●ブランドの“若返り”狙う

 同社には「お好み焼きにかけると子どもが喜ぶ」「洗ってずっとこのキャップを使い続けている」といった好評の声が寄せられた。「このキャップはきっといける」(谷川さん)。確信を得て、取りあえず主力商品の450グラムではなく350グラムで新型キャップの搭載を決めた。

 しかし、なぜキユーピーは味でなく「使う楽しさ」や「見栄え」といった要素に着目したのか。谷川さんは「キユーピーのマヨネーズは発売90年を越え、特に容器の見直しが必要だと思っていた。容器は中身と同じくらい大事な物」と打ち明ける。

 実は、同社のマヨネーズの主要ユーザーは60代。50代がそれに次ぐ。一方で若年層はかなり少ないという。「高校生くらいまでは自宅で母親の作った料理にマヨネーズをかけて食べている。しかしその子どもが大学生になって一人暮らしを始めると、料理をあまりしないので調味料を使わなくなる。しょうゆくらいは使うだろうが、マヨネーズは使ってもらえない」(谷川さん)。

 谷川さんは「中高年が主要ユーザーのマヨネーズは何とか手を打たないと縮んでいく市場。若者のマヨネーズ離れは特に課題」とみる。そこで今回、この若者が成長して家庭を持ち始める年代、30~40代を開拓するターゲットに据えた。「いったんマヨネーズから離れた若者がまた戻ってくるようにしたい」(谷川さん)。

 30~40代はちょうど小さい子どもを育てている年齢に当たる。Instagramにはまっている女性が多めなのもこの年齢層。キャップの穴を増やす上記の2つの理由は、ちょうどこの年代に向けた施策だといえる。

 キユーピーのマヨネーズのような、誰もが知る長寿ブランドだからこそ抱える「ユーザーの高齢化」という問題。少子高齢化が進む日本の市場では、メーカー側によるブランドの“若返り”が重要だ。見た目は小さくて浅い、でも深いキユーピーの「穴」に込めた取り組みがうまく“ハマる”か注目される。

 ちなみにキャップをよく見ると、横に並んだ3つの穴のうち外側の2つは少し大きく、真ん中だけは小さい。「小さい子どもでもマヨネーズを少ない力で出しやすい仕組みにした」(谷川さん)のだとか。