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花咲徳栄を本気で倒しに 準備重ねた選手15人の公立校

7/12(木) 14:27配信

朝日新聞デジタル

 高校野球北埼玉大会2回戦で昨年の全国王者、花咲徳栄と戦ったのは選手15人の桶川西。結果は1―10の七回コールド負けだったが、この公立校の戦いには、点差や記録には表れない魅力が詰まっていた。

【写真】先発した桶川西の左腕並木

 桶川西ベンチにはこの春入った1年生が5人。それでようやく15人だ。花咲徳栄との体格差は歴然だったが、鈴木良監督は試合前、「まずはひるまず、そして勝てるように」と平然と言った。その言葉通りのプレーを、選手たちが一回に体現した。

 1番の小山龍依(3年)が右前安打で出塁すると、2死二塁から4番松岡洸希(3年)が左前へ先制適時打を放った。松岡はこの打席を含めて3打数3安打。「対戦が決まってから『やってやるぞ』と、マシンの球速を145キロにして練習していた。だから、速く感じませんでした」

 先発の左腕並木隆幸(3年)も負けていない。「緊張はしなかった」と、どんどんストライクを投げ込む。昨年から4番に座る野村佑希(3年)には、徹底して内角高めへ。「プラン通り。理想的な打ち取り方だった」と最初の打席は捕邪飛に打ち取った。

 「各打者の特徴を調べ、全打者に対しての配球表を作っていた」という並木は最速130キロ超。先制適時打を放った松岡は2番手でマウンドに上がり、140キロ近い直球を投げ込んだ。

 2人は地元の桶川中出身で、「一緒に野球をやろう」と桶川西に来た。ともに中学時代は内野手で、投手を始めたのは高校から。松岡は高校で身長が25センチ伸び、身長178センチに。トレーニングの成果も加わり、冬場に球速が一気に伸びたのだという。

 そんな2人を中心に、秋は選手10人と助っ人1人の計11人で県の北部地区予選を勝ち上がり、30年ぶりに県大会出場。この夏の対戦が決まってからは、本気で「トクハル食い」を狙ってモチベーションを高めてきた。

 地力の差はたしかにあった。二回に逆転を許すと、じわじわと点差を広げられた。「二回の逆転打は0―2と追い込んでからだった。もったいなかった」と鈴木監督。そんな「敗因分析」が口をつくのも、本気だったからだ。

 全国から有力選手が集まる花咲徳栄に対し、地域の生徒が入学する桶川西。「我々は地域を背負って戦っているし、徳栄さんも色んなものを背負って戦っている。体力差や集中力の差はあった。でも、選手たちはいいものを見せてくれた。選手は少なくてもやっていける。来年、再来年へつないでいかなければ」。鈴木監督は、目を潤ませながら言った。(山口史朗)

朝日新聞社