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「全面禁煙に踏み切る店にこそ補助金を」 たばこが原因の病気に苦しむ患者を診てきた医師の言葉

7/12(木) 17:43配信

BuzzFeed Japan

喫煙は肺がんや呼吸器疾患など様々な病気の原因になり、他人が吐き出したたばこの煙も人を病気にする。

そんな病気を診てきた呼吸器科医で、約2万8000人の学生や教職員を抱える東北大学の統括産業医として全キャンパスの敷地内全面禁煙に力を尽くした黒澤一さん。

長年の喫煙が原因になり、桂歌丸さんが病んでいたことでも有名なCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断と治療のためのガイドライン2018(日本呼吸器学会)の作成委員会委員長でもある。

現在審議中の健康増進法改正案をどう見ているのか。お話を伺った。
【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】

国民の健康を犠牲にして、一部の人の利益を優先していいのか

(東北大学の全面禁煙を実現したお立場からすると、国の今の受動喫煙対策の議論はどう見えるのでしょう)

たばこは、予防可能でしかも現在わかっている中で最大の疾患リスクです。

また、受動喫煙が、健康に影響があることは科学的に明らかな事実です。

米国のモンタナ州ヘレナ市で、レストランや酒場を全面禁煙にしたら、心筋梗塞の発生が激減したという研究があります。この研究で興味深いのは、また喫煙できるようにしたら、心筋梗塞が増えてしまったということです。

私が専門とするCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は、たばこの有害物質が原因で肺に炎症を起こし、呼吸がしにくくなる病気で、ほとんどが長年の喫煙が原因です。

進行すると、息切れが強まり、生活の質が低下します。さらに重症化した場合には酸素ボンベを手放せなくなったり、人工呼吸器が必要になったりします。

私が診てきた肺がんやCOPDの患者さんは、必ずみんな「こんな病気になるとわかっていたら、絶対俺はたばこを吸わなかった」と言います。「好きなたばこを吸ってきたのだからしょうがない」という人は一人もいなかったと思います。

寿命を縮め、「知っていたら吸わなかったのに」と全員が後悔を口にし続けます。

そんなたばこを放置していいことは一つもありません。国はたばこ産業や飲食店経営者など税収や商業のことに配慮すると言っていますが、医師の立場からすると、国民の健康を犠牲にしてそちらを優先することはありえません。

ですから、どのような状況でも、全面禁煙が必要であると私は一貫して述べてきたわけです。

(世の中には様々な価値観がありますが、健康の方が経済よりも優先されると考えるのはどうしてですか?)

私は医師ですので、他の価値のために健康を損なっていいという論理を受け入れるわけにはいきません。喫煙者の自己責任という考えもありますが、それは正常な判断ができるときのことです。

ニコチン依存症では、たばこに関して正常な判断ができなくなっています。医師の倫理に鑑みて、ニコチン依存症に対する治療的スタンスをとることが正しいと考えています。

別の視点では、国全体の経済の面でもたばこは大きな損失と考えられています。

たばこ関連の税収で2兆円だとか、たばこ屋さんなどの経済波及効果で2兆5000億円だとか言われ、たばこによる経済効果は多くともたかだか3兆円と見積もられているようです。

しかし、医療経済研究機構などによると、たばこによって、肺がんになったり心筋梗塞になったり、うつ病になったりする医療費、たばこの火の不始末で火災になったり、喫煙者が早死にしたりします。その分、仕事で有能な働き手がいなくなる損失なども加えて推計すると、7兆か8兆円になるそうです。年間、それぐらい日本はたばこでマイナスを被っているのです。

長期的にも短期的にも、人の健康を考えてみても、たばこは国にマイナスをもたらすのに、ごく一部の利害関係者のプラスに配慮して国民全体に損をさせているのは理解できません。

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最終更新:7/12(木) 18:09
BuzzFeed Japan