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「全面禁煙に踏み切る店にこそ補助金を」 たばこが原因の病気に苦しむ患者を診てきた医師の言葉

2018/7/12(木) 17:43配信

BuzzFeed Japan

「喫煙所の設置ではなく、完全禁煙にインセンティブを」

(今回の法案では、喫煙所の設置に補助金をつけると盛り込まれています。これに反対されていますね)

労働安全衛生法の改正があった時も、職場に喫煙所を作ったら半額補助するという条項があって、私は反対していました。むしろ、完全禁煙に踏み切る方にインセンティブをつけないと、日本の禁煙政策は進んでいきません。

たばこを吸っている人がいくらやめようと思っても、吸う場所が用意されている限り、やめる機会を失ってしまいます。

国は、喫煙率を12%まで下げるという目標設定をしていながら、それに逆行する政策を作ることになります。喫煙所をなくすと、数%でも喫煙率が減るというエビデンスもあります。

喫煙者はニコチン依存症という病気です。アルコール依存症であっても、「アルコール依存症の人が周りに迷惑かけないように、ちょっとお酒を飲ませるところを作りましょう」とは言わないでしょう? 喫煙所を作るということは、それと同じ発想です。

(喫煙所を作る分煙は、受動喫煙対策から言っても不十分とされていますね)

そうです。受動喫煙を完全に防ぐ設備はできっこないですし、中に入って吸い殻などの掃除をする人や、喫煙ルームのホテルの部屋でリネンを替える人もそうですが、受動喫煙の被害は確実です。

JRの東北新幹線は最初から全面禁煙でしたが、東海道新幹線は喫煙室が残っていますね。東北新幹線がなぜ全面禁煙にしたかというと、車掌や車内販売の売り子さんの受動喫煙の防止のためだったと上層部が判断したと聞いています。

加熱式たばこ、紙巻たばこと別扱いするなら安全性を審査せよ

(加熱式たばこの取り扱いについても、専用の喫煙室を設けたら吸えるようにするという特別扱いの経過措置が取られています。紙巻たばこと同様に扱わなくていいのでしょうか?)

加熱式たばこにもニコチンなどの有害成分は含まれていますし、紙巻たばこと同じように取り扱うべきです。人体に対する有害性がわかっていないと言われていますが、基本に立ち返ると、紙巻きたばこと同様、「たばこ事業法」の下で売られているのです。なぜ同じように扱わないのでしょう。

つまり、食品のように食品安全衛生委員会で審査された商品でも、体に作用する医薬品に近いものとして、PMDA(医薬品医療機器総合機構)で審査された器具でもない。

もし、従来の紙巻たばこと別の扱いをすると言うならば、こうした国の指定する然るべき機関で安全性を確かめ、安全性を担保してから売るべきです。

そもそも誰が安全だと認めて、誰が売るのを許可したのでしょう。有害な成分が色々含まれていることは研究されて出されています。でも、本来、それを僕たちが一生懸命調べるのはおかしい。20年後、30年後にこういう病気が出たとなった時に、誰の責任なんだと言うことです。

たばこ税を取っていても、安全性をちゃんと見ていないのが普通の紙巻たばこです。加熱式であってもたばことしてたばこ事業法の管轄下で売られているのだから、たばこと同じで構わないですし、特別扱いするならきちんと安全性を確かめてもらいたい。

喫煙の制限について大目にみるならそれでも構いませんが、何を根拠に大目にみるのかを示すべきだと思います。

【黒澤一(くろさわ・はじめ)】東北大学環境・安全推進センター教授(統括産業医)、東北大学大学院産業医学分野教授
1988年、東北大学医学部卒。福島労災病院第二呼吸器科部長、東北大リハビリテーション科講師などを経て、2010年4月より現職。専門は呼吸器と産業医学で、日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018」の作成委員会委員長も務めた。

岩永直子

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最終更新:2018/7/12(木) 18:09
BuzzFeed Japan

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