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対馬の向こうに「仮想敵国」 中村秀樹・元海自潜水艦長インタビュー

7/13(金) 7:55配信

産経新聞

 ■「半島全体が中国影響下に」

 米朝首脳会談から12日で1カ月。会談直後、韓国などは融和ムードに沸いたが、朝鮮半島の非核化に向けた具体的な動きは表だって見えない。元海上自衛隊潜水艦長の中村秀樹氏(67)=福岡県直方市=は産経新聞のインタビューに「韓国を含め半島全体が中国の影響下に入る可能性が大きくなった。対馬海峡の向こうに仮想敵国が誕生する」と指摘した。 (村上智博)

 日本の安全保障環境をみると、緊急度では北朝鮮が一番危険です。ただ、ミサイルを除けば、軍事能力は無視して構わない。緊急度も能力もある中国こそが、最大の脅威だといえます。

 最近の韓国をみていると、この先、南北が統一され、中国の影響下に入る可能性は無視できない。

 その場合、対馬海峡のすぐ向こうに、仮想敵国が誕生することになる。安全保障環境は大きく悪化する。韓国南部にある軍港の鎮海や済州(チェジュ)島に、中国が前線基地を置く可能性もある。

 ただ、物は考えようです。信用できない友人(韓国)よりは、はっきりと「敵」が出現する方が、軍事的には対処しやすい。

 今後、西日本の国境の守りを強化すべきです。例えば、長崎・対馬を要塞化する。山が多く守りやすい地形です。

 空港と港施設を重視します。陸上自衛隊の部隊を増強し、対艦ミサイルを配備する。島に駐在する隊員とその家族が増えることは、過疎対策にもなります。

 心配なのは、地元の人々の安全保障への感覚です。

 冷戦時代、日本の仮想敵国はソ連でした。国境の北海道の人々は、ソ連侵攻を現実の危機として、とらえていた。

 そうした危機感は、九州の人々にはないと感じます。「今、自分たちは何ができるのだろう」。そう考えるだけでも構いません。それが「備え」につながるのです。

 ■離島奪還は可能

 近い将来、日本は中国と直接、軍事的に対決する可能性がある。それはしっかりと認識すべきです。

 中国は今、海洋進出を強めている。

 ただ、現状をみる限り、中国は陸軍や空軍は強くても、海軍はそれほどでもないと分析しています。

 南シナ海では人工島の軍事拠点化を進めている。ですが、海上にある長い補給線は脆弱(ぜいじゃく)であり、攻撃対象となります。補給線を破壊すれば、基地は無力化できます。

 日本が特に備えるべきは、東シナ海における軍事対決です。尖閣諸島(沖縄県石垣市)を中国から守り抜くのは、容易ではないかもしれない。

 それでも、すぐに取り戻せる。

 軍事的に見れば、東シナ海の海上も空中も、自衛隊側が優位です。米国からは直接な軍事介入でなく、情報などの支援を受ければ、自衛隊で十分対処できるでしょう。

 日本としては、上陸した中国の部隊を、兵糧攻めにすればよいのです。周辺海域に機雷をまき、潜水艦や航空機からの攻撃で補給を断つ。地上戦をしなくても、侵略軍は白旗を上げる。中国の面目は丸つぶれです。

 特に重要な潜水艦でいえば、日本側が優勢です。

 中国は旧ソ連の技術を基に、潜水艦整備を進めました。潜水艦の技術は、冷戦時から、西側の方が上回っていました。その旧ソ連のコピーの潜水艦が、日米のものより優れているとは考えにくい。

 私自身の話をすれば、現役時代、海自の主な任務は、相手に悟られずにソ連潜水艦を追尾することでした。さまざまな手段で、相手の動きは把握できていた。

 冷戦時、西側諸国は軍事能力を控えめに公表し、東側は水増ししてみせる傾向がありました。

 ■訓練継続を

 ただ、警戒を怠ってはいけない。

 北朝鮮をめぐる一連の首脳会談で、半島は融和ムード一色になりました。日本国内でも、北のミサイル発射を想定した訓練をとりやめる動きもあります。

 ですが、北朝鮮はしたたかな国です。本来は、より実践的な形で訓練をしておくべきです。

 例えば、防災の日(9月1日)にあわせて、防災訓練とセットでミサイル想定の訓練をする自治体があってもよいと思います。

 有事では、ちょっとしたことが、生死を分ける。

 ミサイルの警報が出れば窓から離れ、屋外では頑丈なコンクリート壁などの陰に隠れる。毒ガスは低い所を流れるので高い場所に逃げる。化学兵器は水で流す。

 こうした基礎知識を、訓練を通じて国民が共有することが、命を守ることにつながります。

 平時に安全・安心を確保することは、有事の被害を抑えるのに有効です。隣近所のコミュニティーなど社会的秩序を取り戻すことも、安全保障上、有効だと考えます。

最終更新:7/13(金) 7:55
産経新聞