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阿炎、涙の恩返し!付け人務めた鶴竜を撃破/名古屋場所

7/13(金) 7:00配信

サンケイスポーツ

 大相撲名古屋場所5日目(12日、ドルフィンズアリーナ、観衆=7629)東前頭3枚目の阿炎(あび、24)が、横綱白鵬(33)の休場で一人横綱となった鶴竜(32)を突き出し。2勝目を挙げた。阿炎は2場所連続2個目の金星獲得。鶴竜は2連敗で3勝2敗となった。新大関栃ノ心(30)は平幕琴奨菊(34)を寄り切って5連勝とした。関脇御嶽海(25)も小結松鳳山(34)を押し出して5戦全勝。勝ちっ放しは栃ノ心、御嶽海の2人だけ。

 もう我慢できなかった。観客の視線から姿が消える花道の奥。阿炎の目から涙がこぼれ落ちた。「土俵では我慢したけど、花道をすぎたら泣いちゃった…」。

 幕下へ転落した約1年間、鶴竜の付け人を務めていた阿炎が、その横綱を持ち味の激しい突っ張りで追い込み、突き出した。5月の夏場所では白鵬を破って初金星を挙げ、2場所連続の金星獲得。先場所は「相撲人生で一番」と表現したが、鶴竜から奪ったこの金星を「いままでで一番うれしい」と上方修正した。

 大相撲では世話になったり、稽古で胸を借りた者に勝ったりすることを「恩返し」という。阿炎にとって、夢だった恩返しに「それしかない」。支度部屋では鶴竜への尊敬を身をもって示し「正座します」。あぐらでの会話を中断。自ら正座した。

 平成27年九州場所で十両から幕下へ転落した阿炎を、師匠の錣山(しころやま)親方(元関脇寺尾)は実兄の井筒親方(元関脇逆鉾)へ預け、鶴竜の付け人になった。平成28年名古屋場所、西幕下4枚目で6番相撲まで6連敗。「オレはもう終わった。もう駄目だ」とまげを切る気持ちになったという。

 そんな姿を見て取った鶴竜は「1日300回、腕立て伏せをやれ」。その言葉を守った阿炎は次の場所から3、4、5勝と1つずつ白星を上積み。そして7戦全勝で幕下優勝。再浮上のきっかけをつかむ。「(鶴竜は)負けても勝ってもかわらない。横綱というのは心の強い人がなるんだ、と思った」。

 先場所、鶴竜に初挑戦したが、敗れた。だが、この日も激しい突っ張りに徹し、横綱の悪癖の引き技を誘った。「負けることは想像していなかった。(付け人として)ずっと後ろからみていたので」。この“残像”があって恩返しが完結した。