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斎藤工“イケメン俳優”から脱皮 映画監督も高評価!監督役の「半分、青い。」実体験から白髪の役作り

7/13(金) 10:31配信

スポニチアネックス

 俳優の斎藤工(36)がNHK連続テレビ小説「半分、青い。」(月~土曜前8・00)の「人生・怒涛編」にレギュラー出演。映画監督役に扮しているが、自身も2012年に監督デビューし、昨年は初挑戦した長編が高評価された。映画監督の苦労を表現しようと、実体験から白髪の役作り。劇中映画の撮影にも実際に携わり、キャラクター像を追求している。お笑い芸人・サンシャイン池崎(36)の絶叫ネタ完コピが反響を呼ぶなど、近年はイメージが崩れることもいとわないモノづくりへの姿勢を披露。映画監督の顔も定着し“イケメン俳優”の枠から脱皮した。今後のさらなる活躍が期待される。(木俣 冬)

 ヒロイン・鈴愛(永野芽郁)は漫画家を目指して東京で奮闘するも、夢破れて100円ショップでアルバイトを開始。そこで出会った新たな人物の1人が斎藤演じる映画監督・元住吉(もとすみよし)祥平だ。

 「脚本の北川悦吏子さんが、ある映画祭に自分の作品を持っていった僕が“監督”として写っている写真をイメージして描いてくださった役です。僕の表層的じゃないエモーショナルな部分を軸に役を膨らませてくださいました」

 斎藤の表層的なイメージといえば“イケメン”。朝ドラ「ゲゲゲの女房」(10年)の時は風変わりな漫画家の役も演じた斎藤だが、いつの間にか“イケメン俳優”として広く知られるようになった。大ブレイクしたのは、フジテレビ「昼顔~午後三時の恋人たち~」(15年)。北川氏が書いたNHK「運命に、似た恋」(16年)でもヒロイン(原田知世)の胸を焦がす役に臨んだ。

 だが、斎藤にはもう1つの顔がある。“映画監督”という一面だ。

 斎藤は映像業界にいた父の影響で映画に興味を持ち、俳優活動の傍ら12年に監督デビュー。仲間と映像作品をコツコツ作り、14年に「半分ノ世界」でセルビア日本交換映画祭アイデンティティ賞を受賞。昨年は「blank13」(ロングラン公開中)で初の長編映画監督デビューし、国内外14カ国18映画祭に出品。上海国際映画祭アジア新人賞部門最優秀新人監督賞に輝いた。その活動を通して斎藤は一見派手に見える映画監督の苦労を痛感していた。

 「海外の映画祭に行って感じるのは、諸外国と比べると、日本の映画製作環境があまり恵まれていないということです。映画を作っているだけでは生活が不安定になるので、学校の講師をしながら稼いでいるような方もいらっしゃいます。そういう映画監督という職業の悲哀みたいな部分が『半分、青い。』で切り取られているようで、北川さんの脚本に迫り来るリアリティーを感じました」

 元住吉は海外で賞を獲ったものの、その後なかなか映画が撮れず、アパートを自宅兼事務所にしているという設定。創作と生活の間で揺れる映画監督の悲哀を演じるにあたり、斎藤が出したアイデアは“白髪”だった。

 「俳優の時はないのですが、映画監督として製作に入ると、部分ハゲや白髪が出るということを体験したり、実体験として聞いたことがあったんです。ストレスなのか何なのか分からないですが、見えないところに現象として表れる。元住吉にも何かそういう特徴的なものを取り入れようと思ってスタッフの方々とも相談した上、白髪を選択しました。これだったら、取材でグラビア撮影する時はヘアメイクさんにおしゃれにスタイリングしていただけますし」

 苦労白髪も斎藤にかかればメッシュのように見えて様になるところが、さすがモデルもやっているだけある。

 さらに斎藤は劇中登場する、元住吉の代表作「追憶のかたつむり」を自分で撮影したいと申し出た。

 「台本を読んで思い浮かんだプロットを、北川さんとNHKのプロデューサーさんに僭越ながら提出してみたら、『撮ってみますか』と言っていただいて。その言葉を待っていたんですけど(笑)。NHKさんには機材も豊富にあるし編集室もあるし、スタッフの方にも手伝っていただいて1日かけて撮影しました。皆さん、ほかのお仕事がある中で協力してくださって感謝しています」

 斎藤は映画のことになると言葉数が多くなった。とりわけ「追憶のかたつむり」の“カタツムリ”にクリエーター心が刺激されたようで「『昼顔』で生物に執着を持った教師を演じて以来、生物に魅せられるところがあって。両性具有のところだとか、生物の進化の果てにあるものが昆虫だと思っているんです」などという持論や「朝に見るものなので、生き物があまり生々しくならないように気を使いました」などと製作秘話を語る時は実に楽しそう。かつて“イケメン俳優”として取材をたくさん受けている時よりも、心なしか声も明るいような気さえした。

 「この映画は、元住吉の後輩・森山涼次(間宮祥太朗)がそれを見て元住吉に弟子入りするきっかけとなる“何か”を持っています。その“何か”が結構、大事で。それを僕が作ることが必ずしも正解だったか分からないですが、それを僕自身が作ることで僕の成分が踏襲されたものになっていれば、涼次ともまた何かひとつ太い関係性になれるかなと思っていました。涼次役の間宮君とは何度もご一緒していて、彼も僕が映画好きなことを知っているし、作品も見てもらっているので、その関係性が今回の役にも生かせないかなと」撮影に立ち会ったディレクターも「『追憶のかたつむり』の撮影中、斎藤さんは元住吉に魂を入れているように見えました」と証言している。

 日本の映画監督の経済事情を憂いていた斎藤に「今回特別に撮った作品のギャラは?」と冗談で聞くと「これは元住吉祥平として作っているので“出演料”というくくりで構いません」とユーモアで返した。いい作品を作るため役に全力を注ぐ時には見返りは求めない。そんな誠意を感じるではないか。だからこそイケメン役を求められたら徹底的にやるし、サンシャイン池崎の絶叫ネタを完コピしたり(16年大みそかの日本テレビ「絶対に笑ってはいけない科学博士24時」)、お笑いコンビ「野性爆弾」くっきー(42)プロデュースで仮面芸人(ずっとマスクをかぶっていて誰だか分からない)をやり切ったり(今年1月期のテレビ東京の深夜ドラマ「MASKMEN」)、斎藤工はジャンルを問わずモノづくりの道を着実に歩んでいる。

 「僕自身というよりは、今まで自分が見てきた90年代から現在に至るまでの日本の映画監督たちの思いみたいなものが元住吉祥平役に託されている、そんな責務みたいなものを感じています」と“俳優”としての意気込みを語る一方で「できたら『追憶のかたつむり』を独立した作品として、いろいろな映画祭に出したいという野望はあります」と“監督”の顔になる。

 監督作「半分ノ世界」、出演作「半分、青い。」と「半分」という言葉に縁のある斎藤。「半分」という言葉をどう思うかと聞かれると、鏡をのぞいた時、「半分」という言葉を浮かべることがあると明かした。

 「今、ここにいる自分と、鏡に映っている自分。それは職業的な意味合いではなく、人間は誰しも半分くらい足りなくて、そこに何を補っていくか考えながら生きているんじゃないかと思うんです」

 今や斎藤工のことは俳優の顔だけで語ることはできず、監督の顔も重要なのだ。

 ◆木俣 冬(きまた・ふゆ)レビューサイト「エキレビ!」にNHK連続テレビ小説(朝ドラ)評を執筆。2015年前期の「まれ」からは毎日レビューを連載。著書「みんなの朝ドラ」(講談社現代新書)は画期的な朝ドラ本と好評を博している。16年5月に亡くなった世界的演出家・蜷川幸雄さんが生前に残した「身体」「物語」についての考察を書籍化した近著「身体的物語論」(徳間書店)を企画・構成。