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日本eスポーツに不可欠な「国の支援」 専門家ら訴え

7/14(土) 7:00配信

オリコン

 今年2月「日本eスポーツ連合(JeSU)」が発足し、一気に日本のeスポーツ界が騒がしくなってきている。ここ数ヶ月は従来のプレイヤーに加え、芸能界やメディアからの参入表明も後を絶たない。しかし、選手への賞金の問題や、日本オリンピック委員会(JOC)がJeSUの加盟に慎重な姿勢を示すなど、スポーツ産業・興行として成り立つにはまだいくつものハードルを越えなければならないのが現状だ。13日、立命館大学の東京キャンパスで『2018 日本eスポーツ元年 -日本国内でeスポーツを加速させるためには-』と題したプレスセミナーが開催された。同大学の映像学部・中村彰憲教授らが各国におけるeスポーツの取り組みを改めて解説し、日本のeスポーツの未来には国・行政の支援が不可欠と訴えた。

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●アメリカ、中国、韓国のeスポーツ 興業化されるまでのあゆみ

 昨年、eスポーツ全体の市場規模は約6億5500万(US)ドル(出典:Newzoo 2018)。ゴールドマンサックスからは、2022年には29億600万ドルまで規模が拡大するとの予測も出ており、巨大産業としての成長が見込まれる。また、賞金獲得金額も昨年、中国が1位で1610万ドル(以下、出典:esports earning.com)、2位アメリカが1501万ドル、3位の韓国が1206万ドルと巨額の報酬が支払われている点も大きな魅力だ。

 一方、日本における年間の賞金獲得金額は昨年74万2000ドル。賞金の獲得者数も、国の人口が圧倒的に多い中国やアメリカとは単純に比較できないが、3位の韓国が923人いるのに対し日本は223人と大きく水をあけられている。

 中村教授は、eスポーツという言葉が誕生する前、1970年代から90年代にかけても日本国内や海外で数々のゲーム大会、チャンピオンシップが行われてきた事例を紹介。任天堂やコナミ、ハドソン、アメリカではアタリ(Atari)といったゲーム会社や、アミューズメント施設など、企業主導のイベントが主だった。

 こうしたeスポーツ以前のエコシステム(収益構造)について中村教授は「プレイヤーとゲームパブリッシャーが双方にいて、その中心を『アミューズメント』にしたいという狙いがあった。そうするとそこにプレイヤーが留まり、もっとお金を出してくれるし、リピートしてくれる。つまり、こういった(アミューズメント)施設やソフトからの“収益の最大化”が最終目的だった」と説明する。興行としての成熟より、ゲーム関連企業の収益が最優先される構造をとっていた。

 その後、“ゲーム大会”から組織的なeスポーツという一大産業へ成長を遂げた国として、アメリカと中国の成功例が紹介された。一言でいえばアメリカは民間からのボトムアップ、中国は国家のトップダウンであり、過程は対照的だ。

 アメリカでは、90年代後半からコンピューターカルチャーの興隆でPCが家庭から学校まで普及。「知の共有、知の民主化」が進んだ。また、「テーブルトークRPG」(ユーザー参加型、世界観構築系)の文化が若者たちの間に浸透。さらに、ネットワークでつながっていくのが前提という発想の社会。これら3つがそろって、「PCネットワークゲーム・カルチャー」が発達したという。オンラインでつながったプレイヤーたちは「オフ会」のノリで、リアルの場で対戦を開催するようになり、95年には「EVO」の前身となるユーザー主導の格闘ゲーム大会も初開催された。

 「ここでの目的は先ほどのような『収益の最大化』ではなく、イベント(興行)を重視する方へと引き継がれていきました」。そうしたユーザーのムーブメントを広げるために「CPL」「MLG」といったeスポーツの興行団体も形成され、多額の賞金がプールされる仕組みも整っていった。

 一方の中国では2002年、日本の総務省にあたる信息産業省が中国電子競技大会(China Internet Gaming)を開催。翌03年には、中国国家体育総局がデジタルゲームを「体育種目」として認定している。「行政がかなりバックアップする形で、時には外資系の企業などからお金をもらいながらやっていく。結果、メーカーもリーグもトーナメントも会場も全て構築され、アメリカを超える賞金を抱えるほどの規模になって回りだしてるわけです」。また、韓国においても同様で、2000年には省庁管轄で「Korea e-Sports Association」が組織化。早々にルール策定を推進するなど、国のサポートは手厚い。

●山積する課題に「そろそろ国の出番」

 日本のプレイヤー数は、近年eスポーツに力を入れだしたASEAN諸国などと比較すると一番多いが、獲得している金額はそれらの国と比べても決して多くない水準という。こうした賞金の問題や、放映などに付随する著作権の問題、さらに社会的認知・イメージの問題など、日本のeスポーツ界が抱える課題は民間だけでクリアするには心もとない案件が山積している。

 中村教授は「日本のプレイヤーはパッションだけで続けているような状況。それでもできるのは、ゲームにたいする純粋な愛があるから。でも、志や思いだけで動くというのはスポーツではやはり限界がある」と指摘。「中国も韓国の例もそうですが、そろそろ国というものがしっかり(eスポーツを)認知させていかないといけないと思っています」と今後は行政の支援が不可欠だと訴える。

 「例えばフィリピンならアスリートライセンスを提供することでビザを発行しやすくしたり、ドイツでも2018年からeスポーツが正式なスポーツとして認められることになった。こういった、国がバックアップしていかなきゃいけない時期というのを考えると正直(日本は)遅い。2010年ごろにやるべきだったと思います。この頃、各国で多額の賞金がプールされるようになっていったなかで、日本は『うーん、これやったら子供に悪影響だろう』みたいなことが先になって、全然動かなかった」。

 国の支援・理解が十分得られぬまま、今年2月、ついに民間が動き出し初の国内統合団体「日本eスポーツ連合(JeSU)」が発足した。「業界が一生懸命動いて複数あったeスポーツ団体を一つにした。そろそろ国の出番ですよね。認知が高まって、社会が動き出して、社会がそれを再認識して初めて、これがスポーツになるのか、単なる好きもので終わるのか、これから変わってくると思います」。

最終更新:7/16(月) 14:55
オリコン

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