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「常時同時配信」NHK先行 肥大化が懸念 利便性向上、民放との協力が焦点

7/13(金) 21:07配信

産経新聞

 テレビと同じ番組をインターネットで流す「常時同時配信」の実現で、NHKは公共放送からネットを活用した「公共メディア」への進化を目指す。同時配信により、視聴者はスマートフォンやタブレット端末で場所を選ばずにテレビと同じ番組を見られるメリットがある。NHKの肥大化を懸念する声が根強い中、同時配信をめぐる議論では、視聴者の利便性向上に向けた放送業界全体の今後の取り組みが注目される。

 テレビは基本的に自宅で視聴するメディアだが、ライフスタイルの変容とスマホなどの普及でメディア環境は激変している。同時配信の実現により、外出中でもスマホなどによる視聴が可能になれば利便性は格段に向上する。

 大災害や有事の際には、同時配信が情報伝達の面から大きな威力を発揮することも期待される。しかし、アクセスが集中した場合はつながりにくくなる可能性もあり、技術の進展でこうした課題が克服されるまでは地上波の補完的役割を果たすことになる。

 同時配信に必要となる基盤(プラットフォーム)の費用についてNHKは「初期投資で数十億円程度、ランニングコストで年間数十億~100億円を下回る規模」と試算する。平成32年度に7108億円の受信料収入を見込むNHKには賄える金額でも、民放1社にとっては大きな負担だ。

 政府の規制改革推進会議は6月にまとめた答申で、同時配信の推進とともに、NHKと民放が配信に必要な共通の基盤を整備するよう求めた。ネット配信としては、同時配信以外にも、過去の番組を視聴できる見逃し配信などがある。NHKや民放では現在、有料の動画配信を個別に展開しているが、同時配信で基盤の共通化が図られれば、民放側の負担は抑制される。

 「自宅でテレビを見なくても、スマホなどで同時配信を見てくれる視聴者が増えれば、取りこぼし獲得にもなる。コスト面からもNHKと一緒にプラットフォームを整備する意義は大きい」と話すキー局の幹部もおり、同時配信の導入に慎重な民放側にも歩み寄りの姿勢は芽生え始めている。

 一方、受信料という安定収入に加え、NHKでは12月1日に衛星で超高精細映像の4K・8K放送が始まる予定で、国内のテレビ・ラジオのチャンネル数は9つとなる。将来的にはネットのみの世帯に対する受信料新設を視野に入れる同時配信とも相まって、肥大化を懸念する声は依然ある。

 日本の放送文化はこれまで、NHKと民放との二元体制で発展してきた。放送と通信の融合が進む変革期の中、国民から広く集める受信料で運営されているNHKが同時配信で先行すれば、民業圧迫により両者のバランスが崩れることにもなりかねない。

 同時配信の実現に当たってNHKは今後、受信料の値下げをはじめとした視聴者への還元を含む具体的な構想を示し、民放とともに視聴者にとって真に有益な放送業界の未来像を描いていくことが求められる。(大塚創造)



 ■NHKのコメント

 「『常時同時配信』について、『一定の合理性、妥当性がある』とされたことを重く受け止め、引き続き、国民・視聴者の理解を得ながら準備を進めていく。放送と通信の融合時代においても、信頼される『情報の社会的基盤』としての役割をしっかりと果たすべく、取り組みを進める」

最終更新:7/13(金) 21:07
産経新聞

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