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レビュー:デノンのヘッドホンAH-D5200は高音質、高品質、お手頃価格の3拍子!

7/13(金) 17:01配信

Stereo Sound ONLINE

 幸運なことに、私は仕事柄数多くのオーディオ機器を試させてもらっている。その中で「おっ!」と思う製品に出会うことが少なくない。今回紹介するデノンの密閉型ヘッドホン「AH-D5200」も、そうやって思いがけず出会った1台。ポータブルオーディオ人気を追い風に、各社が続々と発売するヘッドホン。「どれを選んだらよいのか分からない」と悩んでいる方にぜひ聴いてもらいたい逸品だ。

【画像】RMEの「ADI-2 DAC」とPCを使って試聴

■機能編:AH-D5200は、惜しまれながら生産終了した名作ヘッドホンの後継モデル

 本機AH-D5200は2007年に発売され、惜しまれながらも2012年に生産終了していたヘッドホン「AH-D5000」の後継機となり、デノンではミドルクラスに当たる製品である。

 密閉型である本機は公式ページにも書かれている通り、デノンのフラッグシップヘッドホン「AH-D7200」に使われた技術が惜しげもなく投入された注目の製品だ。またデザイン的にもAH-D7200に似ており、木製ハウジングとダイキャスト製ハンガー(フレーム)を採用する。

 AH-D5200は、前述の通り密閉型。搭載するダイナミック型ドライバーは50mmで、振動板の素材こそ異なるものの上位機AH-D7200と同じ機構の「フリーエッジ・ドライバー」を採用する。

 一般的なスピーカーの様にエッジに丸みを持たせ(ロールエッジと呼ぶ)、振動板全域を均一にピストンモーションできるようにしたもの。ドライバーのスムーズな駆動と稼働領域を広げる効果がある。また、ロールエッジは、ドライバーの口径が小さいヘッドホンではあまり使われることがない。しかし、理屈上低音の再生能力が上がり、アンプから見れば負担低減にもなる。

 ハウジングはダークブラウンに染められたゼブラウッドを削り出して作られている。綺麗な縞模様がアクセントなっており、高級感と存在感はなかなかのもの。ゼブラウッドは硬度の高いのが特徴で、本機もハウジング部を指で軽く叩くと硬質な響きがしたのを紹介しておきたい。

 密閉型ヘッドホンにおいてハウジングは、見た目だけでなくサウンドキャラクターを決める重要なパーツと言える。店頭でヘッドホンを試聴する際は、実際にハウジングを叩いて響きを確認してみて欲しい。

 イヤーパッドは表面に人工皮革が、内部のクッションは形状記憶フォーム(素材はウレタン系と思われる)がそれぞれ採用されている。装着時は最初こそ固く感じられたが、数分で気にならなくなった。むしろ、側頭部への当たりが柔らかく、長時間のリスニングが苦にならないレベルだ。デノンが「試聴時のストレスの低減を目指した」というだけある。ただ人によって好みが分かれる質感なので、試聴時には少し時間を掛けて試してみるといいだろう。

 ケーブルは脱着可能な4N OFC。他にはドライバー前後の音圧バランスを調整する「サウンド・オプティマイザー」、反応性を高めた「CCAWボイスコイル」、軽量かつ頑丈な「アルミダイキャストハンガー」を採用する。デノンが言うとおり「AH-D7200のDNAを色濃く受け継ぐ」ヘッドホンである。


■試聴編:AH-D5200は、楽器の音色を埋もれさせずに描き分ける実力者

 試聴環境は前回紹介したRMEの「ADI-2 DAC」とPCを使って実施している。試聴曲には、ロリン・マゼール指揮/ベルリンフィルの『シェヘラザード』より2楽章「カランダール王子の物語」(44.1kHz/16bit WAV)と、ステレオサウンドストアから発売されているハイレゾ音源、ズービン・メータ指揮、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の『ホルスト:組曲「惑星」』から「水星」(11.2MHz DSD)を選択した。

 この『ホルスト:組曲「惑星」』は、オリジナルマスターテープからダイレクトにDSD変換された「フラットトランスファーシリーズ」で、最近好んで聴いている作品である。湧き水の様に吹き上がる演奏が圧巻な「木星」も素晴らしいが、筆者としては管楽器の響きが美しい「土星」をオススメしたい。

 デノンAH-D5200は、耳になじみ易いサウンドが印象的であった。これ見よがしに低音のアタックが強調されたりもせず、ボリュームを上げてもすぐそこで音が出ている感じが少ないのがいい。つまり長時間のリスニングに向いているヘッドホンと筆者は感じた。

 また密閉型は、ともすると詰まった音になりやすいが、AH-D5200は低音のレスポンスが良いのも好印象であった。『シェヘラザード』では、フィナーレのフォルティッシモでも音に埋もれない響きと余韻が美しい。『水星』は高音楽器と低音楽器の掛け合いの描き分けがしっかりされており、埋もれがちなファゴットの音色が聴き取れたのはAH-D5200の性能の証といえるだろう。

 気になったのは、脱着式ケーブルがミニプラグで、ちょっとした動きで抜けやすかったこと。これはデノンのヘッドホンに限ったわけではないのだが、筆者としてはもう少し抜けにくい方がいいと感じた。この点は感じ方に個人差があるので、店頭で実機を触って確認していただきたい。

 もし密閉型ヘッドホンを探しているのであれば、AH-D5200は自信を持ってオススメできる機種のひとつ。上位機種から受け継がれた機能は、そのサウンドに現れており、価格以上にハイクォリティなサウンドなのだ。もちろん、本体の質感も高く、所有する満足感も得られる。価格が比較的手に届きやすいのもいい。あらゆる角度から見ても、初めての高級ヘッドホンにもってこいの逸品なのだ。


【デノン AH-D5200】
オープン価格(想定市場価格6万5000円前後)

Stereo Sound ONLINE / 木村雅人

最終更新:7/13(金) 17:01
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