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アップル、ソニーの良いとこどりした完全ワイヤレスイヤフォン「Jabra ELITE 65t」

7/14(土) 12:00配信

アスキー

高音は自然でアップルのAirPodsに近い印象を持ち、外音の取り込みはソニー「WF-1000X」のよう。それぞれの良いところを押さえつつ、装着感で1歩抜き出た良さを持つトゥルーワイヤレスイヤフォンが、Jabraの「ELITE 65t」だ。

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 「あ、これいいじゃん」というのが、着けてすぐの印象だ。手にした質感、耳に入れた際の感触、結果得られる遮音性。どれも文句ない。そしてトゥルーワイヤレスイヤフォンに付き物の、左右の音切れやフェージングも、確かにぜんぜん起こらない。
 
 Jabra(ジャブラ)の「ELITE 65t」は、左右イヤフォン間の接続に、NFMI(近距離磁気誘導=Near Field Magnetic Induction)を採用したトゥルーワイヤレスイヤフォン。NFMIは左右ユニットを遅延なく接続し、音切れを解消するためのテクノロジーだ。
 
 JabraはヘッドセットやBluetoothイヤフォンで知られるメーカーだが、元をたどれば世界最古の通信会社。トゥルーワイヤレスの鬼門である通信精度をきっちり上げてきたのは、ブランドイメージ的にも納得感がある。
 
 公式通販での価格は2万3130円。他メーカーの競合製品は、いずれも2万円台後半。もしかして、これはお買い得なのではないか。
 
NFMIの時代に入ったトゥルーワイヤレス
 この先、NFMI採用のトゥルーワイヤレスが主流になりそうな勢いだが、従来、あるいは大半の現行製品は何がいけなかったのか。それは左右のユニット間も2.4GHz帯のBluetoothでつないでいること。人体はほとんどが水でできているために、この電波を通さない。
 
 イヤフォンを着けた左耳と右耳の間を真っすぐ飛べない電波は、頭部の周囲を反射しながら迂回することになる。その途中で電波がノイズの影響を受ける。これで音が切れたり、遅延が起きてフェージングの原因になったりするわけである。
 
 ところが電磁誘導のNFMIは、左耳と右耳の間をそのまま直進できる。だから耐ノイズ性に優れ、遅延も少ない。
 
 実際、EARINの「M-2」や、アップルの「AirPods」など、NFMI採用と言われる製品でフェージングは経験したことがないし、左右の音切れも皆無とまでは言わないが、実用上気にならない。
 
 たった一週間程度の試用期間だが、ELITE 65tでもそうした現象は一度も起こっていない。有線接続並みに安定しているこれを経験すると、ほかは使う気になれない。それくらい、従来は音切れで悩まされることが多いのだ。
 
 ただ、誤解のないように言っておくと、NFMIはあくまで左右イヤフォン間だけ。再生装置からイヤフォンまでは相変わらずのBluetooth接続だから、ここはノイズの影響を受ける。音切れするときは左右同時にパサっと切れる。でも、左右のコネクションはバッチリなので、ネックストラップタイプのBluetoothイヤフォンくらいのつもりで使っていい。
 
 使い勝手にしても、老舗だけあってよく考えられている。
 
スムースな装着性に感動
 イヤフォン本体は右が6.5g、左が5.8g。EARIN M-2の3.6gには負けるが、BOSE「SoundSport Free」の右9.1g、左8.8g(実測値)より圧倒的に軽い。その上、耳にぴったり収まり、着けてみるとさらに軽く感じられる。
 
 装着がスムースなのは、この機種の白眉だ。マイクの突起部を下に向け、イヤーピースの先端を耳の穴に当てながら、30度ほど上に回転させるだけでいい。まるでボトルにスクリューキャップをはめるような感じで、耳の穴へイヤフォンが収まっていく。耳とは面で当たるから、結果として遮音性も高い。このデザインはさすがJabraめ、と思う。
 
 イヤーピースは本体装着分を含めて3サイズが付属。イヤーピースに頼った装着スタイルではないので、フィッティングも楽に決まるはず。
 
もうひと工夫してほしかったケース
 イヤフォンの充電時間は、ケースに収めて2時間。フル充電からの持続時間は最長5時間。ネックストラップタイプなら7~8時間は持つのが普通だが、トゥルーワイヤレスは短いものだと3時間持たないものもあるから、これは妥当なところ。
 
 充電ケース内蔵のバッテリーは、microUSB経由で充電。イヤフォンを収納して2回充電できる容量がある。イヤフォンも15分の充電で最高1.5時間動作するという省電力仕様なので、継ぎ足し充電でもそれほど待たずに使える。
 
 困ったところは、充電ケースのフタをロックするツメが硬く、開いた反動でイヤフォンが落ちそうになること。マグネットでケースとイヤフォンを吸着させるような仕組みもない。ケースを手のひらに乗せて取り出す習慣を付ければ問題ないが、ここにもうひと工夫あればさらに良かった。
 
Alexaの呼び出しにも対応
 イヤフォンは側面の丸いボタンで操作する。2つの突起がある左側はシーソー式のダブルスイッチ、突起のない右側はシングルスイッチ。どちらも浅く軽いストロークで確実な操作感があって好ましい。個人的には目視できない部分に、タッチセンサーや加速度感応スイッチがあるのはどうにも不確実で使いにくく、ナンセンスだと思っている。個人的にはこちらの方が好みだ。
 
 イヤフォンのボタンは、再生や着信操作のほか、SiriやGoogle Nowのような音声アシスタントの呼び出しにも対応する。驚いたのはAlexaアプリがインストールされていれば、たとえiPhoneであってもAlexaの呼び出しさえできることだ。もうスマートスピーカーはしまったほうがいいかもしれない。
 
 接続状況やバッテリーの残量などをアナウンスする音声ガイドには日本語も選べる。しっかりした発音の女声で、こういうところも手抜かりなし。音楽再生中に片方のイヤフォンを外すと、勝手に再生が止まる機能まで付いている。まるでアップル製品のようだ。
 
 防塵耐水性能はIP55。粉塵が侵入しても問題なく動作し、かつ、あらゆる方向から流水を受けても大丈夫。つまり、水没でもさせなければ平気だ。この防塵耐水性能の保証は1年間だが、スマートフォン用アプリ「Jabra Sound+」でユーザー登録すると2年間に延長される。
 
付けっぱなしで使える「Hearthrough」機能
 Jabraらしいところは、通話の音声品質の高さ。内蔵マイクは左右合計4つあり、これで環境ノイズや風切り音を排除し、話者の声を引き上げる。この性能は、音声アシスタントへのコマンドを確実にするだけでなく、外音取り込み機能「Hearthrough」の音質も向上させる。
 
 機能そのものは特に珍しいものでもないが、取り込まれる音の良さで言えば、この機種が一番だ。多少風に吹かれても風切り音がしないし、外音の特性に大きな癖や遅延もない。屋内、屋外問わずイヤフォンを付けている気がしないくらい自然。
 
 Hearthrough機能はイヤフォンのボタンでオンオフできるが、アプリを使うと、外音をミックスする音量や再生音のミュートなどの設定もできる。加えて、そうした設定とイコライザーを組み合わせたプリセットが用意され、状況に応じてまとめて切り替えられる。これもまるでソニー製品(WF-1000X)のようだ。
 
オープンエア型の感覚、若干気になる動画の音ズレ
 数少ないウイークポイントは、動画を再生すると音声の遅延が微妙にあること。映画なら口の動きと言葉が浮いてしまうし、ミュージックビデオならプレイヤーの動きとテンポが微妙に合わなくて、ムズムズする。本当に数十ミリ秒程度のものなのだが、AirPodsもEARIN M-2も、ここをきっちり詰めてきているから、比べないわけにもいかない。
 
 音のバランスは高いところにある。高域がすっきりしない、低域こもりがちのEARIN M-2に比べると、圧倒的にクリアで抜けがいい。上の帯域が自然で、Hearthrough機能できれいに外音が入ってくるところは、オープンエア型のAirPodsに近い。
 
 しかし、こちらは密閉カナル型なので、低域のボリューム感は最初から十分。そこをDSPで盛らざるを得なかった、AirPodsのようなわざとらしさはない。
 
 ただ、盛ろうが何をしようがもっとディープな低音が欲しいと言う人もいるだろう。ならばBOSEのSoundSport Free一択だ。ELITE 65tに搭載されている6.0mmのマイクロドライバーはよく頑張っていると思うが、最近のイヤフォン傾向からいえば、やや細めだ。
 
 ELITE 65tの良さは、まずNFMIによる確実な接続。装着感の良さ。高い遮音性を持ちながら、オープンエア型に近い抜けのいい音が楽しめること。おまけにHearthrough機能で、オープンエア型に近い感覚で使えること。これでコンペチターより6000円は安いのだから、やっぱりお買い得だ。
 
 
四本 淑三(よつもと としみ)
 
北海道の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。
 
文● 四本淑三

最終更新:7/14(土) 12:00
アスキー