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足に障害、児童養護施設で育った球児「野球やりきった」

7/14(土) 8:55配信

朝日新聞デジタル

 13日、高校野球石川大会の1回戦に臨み、2―5で金沢二水に敗れた宝達。3点を追う九回の攻撃で、三塁コーチの神野和真(3年)はただただ、味方の反撃を祈っていた。「自分が打ちたいとか、そういうのはまったく」。最後の打者が凡退すると、黙々とベンチに走った。中学から始めた野球は、ついに公式戦の打席には一度も立たないまま、終わった。

 幼少時、髄液が頭部に過剰にたまる水頭症の手術を受け、今も頭内にパイプが入っている。その影響で左足に障害がある。部員不足に苦しむ宝達に入学後、誘われるままに入部。「頭にボールが直撃するのは危ない」と恐怖感を抱えながら続けてきた。他の部員がサボりがちになった冬場は主将の黒川裕允(ひろよし)と2人きりで練習に励んだことも。

 小学1年から児童養護施設で育つ。野球部の練習が休みの日は施設で素振りを繰り返した。まっすぐな男は勉強もコツコツと積み上げるタイプで、成績は学年上位だ。

 この日朝、「応援にいくぞ」と施設の職員に送り出された。「1打席、立てたらな」と淡い期待はあったが、試合が始まればチームの勝利だけを願った。敗戦後の整列では仲間にいじられながら過ごした2年半を思い出した。監督の西川祐喜(44)は「打席に立たせてやりたかったけど、その場面をつくれなかった」と渋い表情。卒業後は就職する予定という神野は「野球はやりきりました」。

 六回、黒川の放ったファウルボールが、三塁コーチスボックスにいた神野の背中を直撃した。2安打の黒川は「ずっと練習につきあってくれた神野に感謝は尽きない。恩返しの“一撃”ですかね」といたずらっぽく笑った。神野は「ゴメンという声が聞こえた。一生懸命やった結果だから、気にしていない」と生真面目に話した。(塩谷耕吾)

朝日新聞社