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<西日本豪雨>感染症を防ぐ“復旧作業三つの鉄則”

7/14(土) 9:30配信

毎日新聞

 “平成最悪”と言われる甚大な被害をもたらした西日本豪雨。復旧作業が始まったばかりの被災地は連日真夏日を記録し、衛生状態の悪化や感染症の発生も心配されている。14日からの3連休は、被災地でボランティア活動をする人も多いだろう。国立感染症研究所(感染研)などの情報をもとに、感染症を防ぐ「三つの鉄則」をまとめた。【毎日新聞医療プレミア・鈴木敬子】

 ◇<鉄則1>防じんマスクで細菌感染を防ぐ

 感染研や日本環境感染学会は10日、ウェブサイトに感染予防対策を掲載した。感染研は被災地で注意すべき感染症として、レジオネラ症▽レプトスピラ症▽破傷風▽急性胃腸炎・急性下痢▽急性呼吸器感染症--を挙げた。また、麻疹(はしか)についても、感染力が強いため被災地周辺地域での発生状況に注意が必要としている。

 感染研などによると、レジオネラ症は泥に含まれるレジオネラ属菌を粉じんと一緒に吸い込むことで、肺炎(レジオネラ肺炎)を起こすか、一過性の発熱を起こす。レジオネラ肺炎は2~10日の潜伏期間の後、全身の倦怠(けんたい)感、頭痛などの症状に始まり、せき、たん、38度以上の高熱、呼吸困難が見られるようになる。

 当面、豪雨による河川氾濫で堆積(たいせき)した大量の土砂撤去が復旧作業の柱の一つとなるが、土砂が乾くと大量の土ぼこりが舞い上がり、吸い込む恐れがある。作業時は防じんマスクを着用したい。

 レプトスピラ症は、ネズミなど動物の尿で汚染された水や土壌に触れるか、汚染された水や食べ物を飲食することで感染する。発症すると発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、眼球結膜の充血が表れる。約9割は軽症で大事に至らないが、一部の人は重症化し、黄疸(おうだん)、出血、腎障害が起こることがある。適切な治療が受けられなければ死に至る病だ。

 破傷風は、傷口から感染すると非常に強い毒素が体内で産生され、口が開けにくくなるなどの初期症状の後、全身に激しいけいれんを起こす。重症化すると、呼吸にかかわる筋肉がまひし、窒息死することがある。くぎが刺さった場合は刺さった方向をよく見てまっすぐに抜き、必ず医師の診察を受けるようにする。受診の際には抜いたものを持って行く。

 ◇<鉄則2>手洗いとアルコール消毒で食中毒を防ぐ

 これらの感染症は原則として人から人にうつることはない。予防のためには、不潔な水や土には不用意に触れない▽けがを防ぐために厚手のゴム手袋、ゴム長靴、あればゴーグルもつける▽ほこりを吸い込まないように防じんマスクをつける▽手洗いを励行する--ことを心がける。

 急性胃腸炎や急性下痢など「食中毒」の予防には、水につかった食品や、停電で保存温度が保てなかった要冷蔵・冷凍食品は廃棄する▽食事の前にはせっけんと流水で手を洗う▽生食は避ける▽提供された食品は早めに食べる--を徹底する。おにぎりは素手ではなくラップで包んで作ることも、効果の高い予防法だ。

 風邪、肺炎などの急性呼吸器感染症は避難所で流行しやすい。せっけんと流水での手洗いが効果的だが、できない場合はウエットティッシュや手指用のアルコール消毒剤を使う。日本環境感染学会が示す手指消毒の手順によれば、手のひらに取った消毒剤はまず両手の指先にすり込むのがポイントで、次に手のひら、手の甲、指の間、親指、手首の順に乾燥するまでしっかりすりこむ。

 ◇<鉄則3>ボランティア従事者は感染症の予防接種を

 感染症の中にはワクチンで予防できるものもある。感染研は、ボランティアでこれから被災地や避難所に向かう人たちに向け、母子健康手帳などで自分のワクチン接種歴を確認し、未接種の場合は可能な限り出発前に接種するよう勧めている。

 なかでも麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)は最も優先度が高い。これまでにかかったことがなく、2回の接種が終了していない人には接種を推奨している。1989年度以前に生まれた人(おおむね29歳以上)は、ワクチン接種が1回か、あるいはまったく受けていない可能性がある。

 傷を負う可能性がある作業を行う場合は、破傷風トキソイドワクチンの接種も強く推奨している。小児期に3種混合ワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)、2種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)を接種していても、ワクチンの効果はおよそ10年で切れるため、過去10年以内に接種を受けていない人には1回の追加接種を推奨する、としている。接種歴のない人は医師に相談してほしい。

 飲食物、とくに海産魚介類から感染するケースの多いA型肝炎にもワクチンが有効だ。特に60歳未満では免疫を持つ人が少ないため、接種を推奨。水痘(水ぼうそう)、おたふくかぜワクチンについては、これまでにかかったことがなく、ワクチンも受けていない人は、接種を検討するよう示している。

 ◇西日本ではマダニが媒介する感染症にも注意

 西日本では日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などマダニに刺されて起こる感染症への注意が必要だ。予防にはなるべく肌を露出しない服装をし、虫よけ剤は成分にディートやイカリジンを含んだものを使う。もし刺されてしまった場合、無理に取ろうとすると口が皮膚に残ることがあるので、医療機関を受診する。

 ◇体調が悪いと感じたら無理をしないで休憩を

 気象庁によると、特に被害の大きかった広島、岡山、愛媛の各県では14日からの3連休は連日最高気温が35度前後の猛暑となる見込み。感染研は、ボランティアに向かう人に対し、感染症予防・拡大防止のためマスクや手指用のアルコール消毒剤、アルコール綿の小パッケージなどの持参を促している。

 また、熱中症にも十分注意し、体調が悪い時は、ボランティアセンターやチームリーダーなどに伝え、第一線を離れるよう勧めている。もし出発前に発熱やせき、発疹、下痢など感染症が疑われる症状があったら、きちんと体調を整えてから向かうようにする。本人だけでなく、被災者に感染を拡大させないためだ。

最終更新:7/14(土) 9:30
毎日新聞

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