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疑問広がる「特定枠」=与党、成立急ぐ-野党、衆院でも徹底抗戦〔深層探訪〕

7/14(土) 8:28配信

時事通信

 参院選挙制度改革をめぐり、定数を6増やす自民党提出の公職選挙法改正案が参院を通過し、今国会成立のめどが立った。同党内の事情を色濃く反映した比例代表の「特定枠」について野党から疑問が相次ぐ中、採決を強行。野党は衆院段階でも徹底抗戦する構えだ。

 ◇拘束名簿式を一部復活
 自民党の吉田博美参院幹事長は11日、参院本会議に先立つ党会合で「2年間、合区解消に取り組んできた。これが精いっぱいだ」と、自民案の正当性を強調した。

 自民党はこの日、日本維新の会が提出した石井浩郎特別委員長(自民)問責決議案の本会議上程に反対。主要野党が提出した石井氏への不信任動議も直ちに否決した上で自民案を可決した。今国会での成立にこだわるのは、来年夏の参院選までに複雑な新制度の周知期間を1年程度置くためだ。

 参院選比例は現在、得票の多い候補者から順に当選となる「非拘束名簿式」を採用している。自民案の特定枠は、比例名簿の登載順位によって当選者が決まる仕組み。「拘束名簿式」を事実上、一部復活させるもので、特定枠はゼロから最大で全候補者より1少ない数まで政党が自由に決められる。合区となった「鳥取・島根」「徳島・高知」選挙区で、立候補を断念させた県の候補者を比例に回し、確実に当選させる狙いがある。

 ◇大量得票でも落選? 
 11日の参院特別委員会での質疑では、野党から特定枠への批判が続出した。国民民主党の足立信也氏は「(特定枠に入らなければ)10万票集めても通らないかもしれない」と述べ、有権者の投票価値に不平等が生じかねないとの懸念を示した。無所属の小西洋之氏は「都道府県選挙区と比例の二元代表制が崩れる」と問題視した。

 これに対し、自民党の磯崎仁彦氏は、特定枠候補者への投票は所属政党の得票に算入されて獲得議席数に影響すると説明、「不平等という意味合いは出てこない」と反論した。同党の石井正弘氏は、小西氏に「条件不利地域の声を国政に届け、多様な民意の反映に資する」と理解を求めた。

 そもそも非拘束式が導入された契機は、拘束名簿の上位登載を狙う自民党候補が多額の党費を企業に肩代わりさせ、「ヤミ献金ではないか」と批判を受けたことだ。参院会派「沖縄の風」の伊波洋一氏は「候補者選定について政党の説明責任はより重くなる」と語った。

 9日の特別委では、政界を引退した脇雅史元自民党参院幹事長が参考人として陳述。自民案では「民意によらない結果が出る」と述べ、得票が当選に直結しないことを危惧した。

 ◇自民案に理解も
 「民主主義の土俵である選挙制度を力づくでやってくる。おごった自民党の国会運営、ここに極まれりだ」。立憲民主党の福山哲郎幹事長は11日の党会合で、自民党を厳しく批判。野党は衆院でも「党利党略だ」として対決姿勢を強める方針だ。

 ただ、特定枠は産別労組などの組織内候補を抱える野党側にも利点がある。表向きの批判とは裏腹に、野党幹部は「事前にある程度、当選者を決められるのは大きい」と認める。

 公明党は独自案の提出後、自民案の修正案を作成して自民に提示。修正は見送られたが、最終的に自民案に賛成した。定数増への世論の反発は懸念材料だが、埼玉選挙区の定数増で当選圏に入りやすくなるため「悪くない案だ」との本音が漏れる。

 選挙制度改革は各党の利害がぶつかるため、自民党の強硬姿勢は野党も織り込み済み。今回は6党が五つの公選法改正案を提出したが、幅広い合意を目指して努力した政党はなかった。自民党の閣僚経験者は「どこの政党も責任を果たしていないのは同じだ」と語った。

最終更新:7/14(土) 18:00
時事通信