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米欧同盟にすきま風=トランプ氏、国防で圧力-通商交渉へ布石か〔深層探訪〕

7/14(土) 8:33配信

時事通信

 欧州歴訪中のトランプ米大統領は11、12の両日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で加盟国の国防支出不足や貿易不均衡を糾弾した。加盟国による早期の国防支出増加という成果を最終的に引き出したものの、自国の利益だけを重視し、同盟関係を軽視する姿勢は明らか。就任1年半を迎える今、高圧的姿勢を強めるトランプ政権と同盟国の間にはすきま風が吹いている。

 ◇異例の緊急会合
 「NATOは米国の安全保障にも重要だ」。ストルテンベルグNATO事務総長は11日、トランプ大統領との会談でこう強調。加盟国の負担不足を批判し、米国のNATOへの関与縮小をほのめかす大統領の説得を試みた。

 だが、その努力はいとも簡単に失敗した。トランプ氏は、ドイツの貢献不足をやり玉に挙げた上、天然ガス輸入でロシアに多額の金を払っていると批判。「ロシアの捕虜だ」とまで言い切った。

 初日の会議終了後に共同宣言が発表され、加盟国首脳が国防支出の目標達成に向けた「揺るぎない意思」を表明した後も、トランプ氏は圧力を緩めなかった。2日目の首脳会議では、外交儀礼を逸脱してメルケル独首相を「アンゲラ」と呼び捨て、「何とかしろ」と迫ったとされる。

 ロイター通信が関係者の話として報じたところによると、トランプ氏は「2019年1月までに国防支出を拡大しなければ、米国は単独で行く」とも発言。ただならぬ雰囲気を察したストルテンベルグ氏は非加盟国ジョージア(グルジア)などの首脳に退席を求め、非公開緊急会合を開いた。

 ◇利害だけの関係
 トランプ氏の主張にも一理はある。NATO加盟国は14年、ロシアによる脅威の高まりを受け、国防費を国内総生産(GDP)比2%以上に引き上げる目標を設定した。だが、18年で目標を達成できるのは加盟29カ国のうち米英など8カ国。期限の24年までに達成できる見通しが立っているのも15カ国にとどまる。一方、米国はNATO国防支出の7割弱を負担している。

 ストルテンベルグ氏は首脳会議終了後、トランプ氏の明確なメッセージが加盟国の結束につながったと称賛。トランプ氏も緊急記者会見を開き、「外交的勝利」を誇示した。

 米シンクタンク「大西洋評議会」のマーク・シマコフスキー上級研究員は「トランプ政権は貿易交渉における中国の次の標的は欧州だと考えている」と指摘。「国防支出などでNATO加盟国に圧力をかけ続けた背景には、今後の欧州連合(EU)との貿易交渉で優位に立とうという思惑がある」と分析する。

 だが、外交・通商問題で成果を得るために、同盟国首脳を侮辱することも辞さないトランプ氏の手法には疑問の声が上がる。ブレア元英首相は米紙ワシントン・ポストに対し、「欧州の人々は、トランプ政権が共通の価値観ではなく、利害だけで同盟関係を判断しているのかと疑っている」と指摘した。トランプ氏の高圧的言動が同盟国に疑心を生み、亀裂を拡大させている可能性は否定できない。(ロンドン時事)

最終更新:7/16(月) 14:18
時事通信

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