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島民のため船で水くみ、監督不在 断水にめげず球児奮戦

7/14(土) 16:45配信

朝日新聞デジタル

(14日、高校野球愛媛大会 宇和島南8―2弓削商船高専)

 弓削商船高専のベンチには、本来いるはずの森瑛太郎監督の姿がなかった。緊急で監督代行を務めた福田英次部長が明かす。「広島まで、船で水をくみにいきました」

【写真】緊急で監督代行を務めた福田英次部長(右)=坊っちゃん

 学校のある弓削島は、豪雨災害の影響で今も断水が続く。島民の飲料水確保のため、森監督は貯水タンクを備えた学校の練習船「弓削丸」を操って瀬戸内海を渡り、広島商船高専に向かったという。「監督が行かなければ、多くの島民が困ってしまうんです」

 この日、選手たちが抱えていたハンディは「監督不在」だけではない。断水の影響で寮が閉鎖され、選手たちは実家や親類宅に散り散りに。12日の開会式は欠席。集合したのも、野球をやるのも約1週間ぶりだった。

 それでも、菅沢瑛二主将は「楽しんでやろう、がテーマ」と笑顔だ。三回に2点を先行。「野球ができることに感謝して、思い切りいこう」という福田部長の声を背に、七回2死三塁、八回2死三塁のコールド負けのピンチをしのいで、九回まで戦い抜いてみせた。

 「悔いはありません」と菅沢主将。豪雨を敗戦の理由にはしない。「3年間積み上げたものは出し切りました」。監督には、そう報告するつもりだ。

 森監督は、飲料水約15トンを弓削島へと運んだ。教え子たちの試合はテレビ中継されていたので、途中までは見ることができたという。「先制点を取って、そのまま行ってくれればと思ったが。コールド負けしなくてよかった」

 インターネットで菅沢主将が「楽しんでやろう」などと話す記事を見た。「苦労をかけたが、その言葉を見てほっとしている。今度会ったらよくがんばったと伝えたい」と話した。=坊っちゃん(吉永岳央)

朝日新聞社